概要
肺ヘモジデローシスは、吸い込んだ空気を入れる肺の肺胞腔という部分に出血が生じて、ヘモジデリンというヘモグロビンの代謝物が肺に沈着する病気の総称で、さまざまな病気に合併します。“特発性”とは、原因が特定できないという意味で、肺ヘモジデローシスの原因が特定できない場合に、特発性肺ヘモジデローシスと診断されます。どの年代にもみられますが、患者のほとんどが小児期に診断され、2歳をピークとして5歳以下が多数を占めます。
特発性肺ヘモジデローシスは、出血が生じることによって血痰や喀血の症状が現れ、そのほか、息切れや咳、低体重、鉄欠乏性貧血などの症状がみられることもあります。
治療では主にステロイド薬を使用しますが、再発を繰り返す可能性やステロイドの副作用リスクを考慮して、免疫抑制薬が検討されることもあります。出血を繰り返すことで呼吸機能が徐々に低下することもあるため、慎重に経過をみていくことが重要です。
原因
肺ヘモジデローシスはセリアック病や自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、ダウン症候群との合併が確認されていますが、まれに原因が特定できず、特発性肺ヘモジデローシスに分類されることがあります。しかし、ステロイド薬などによる免疫抑制療法が有効な例もあることから、免疫システムが関与していると考えられています。
症状
特発性肺ヘモジデローシスの主な症状には、血痰や喀血が挙げられます。血痰とは痰の中に血が混ざったもので、喀血とは咳とともに血を吐く状態です。
そのほか、咳や呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューと音が鳴る喘鳴、呼吸困難などの呼吸器症状のほか、貧血、疲れやすさ、体重が増えないなどの症状が現れる場合もあります。
検査・診断
症状や胸部X線検査、CT検査の画像所見から肺胞出血が疑われる場合、特発性肺ヘモジデローシスの可能性が考えられます。
確定診断には、胸部造影CT検査、心臓超音波検査などの画像検査や、血液検査、尿検査などを行ってほかの病気ではないことを証明します。また、患者の痰や胃液を採取した検体や気管支内視鏡検査で、ヘモジデリンを貪食*した細胞(肺胞マクロファージ)の有無を確認します。
*貪食:病原体や寿命を迎えた不要な物質を飲み込むこと。好中球や好酸球、マクロファージなどに備わった機能。
治療
特発性肺ヘモジデローシスに対する標準的な治療方法はまだ定まっていませんが、まずはステロイド薬などを使用した薬物療法が検討され、必要に応じて対症療法として呼吸管理や輸血が行われます。
薬物療法
ステロイド薬を、患者の状態をみて増減させながら数か月間以上投与することが一般的です。症状が落ち着いてきたら薬を減量しますが、減量中に再発することもあります。何らかの理由でステロイド薬を使用できない場合や、ステロイド薬では効果が不十分な場合などには、アザチオプリンなどの免疫抑制薬を検討することもあります。
呼吸管理
呼吸困難などの症状が現れている患者には、酸素投与、人工呼吸などの処置が検討されます。
輸血
命に関わるような出血や貧血がみられる場合には、輸血を行うこともあります。
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