せりあっくびょう

セリアック病

最終更新日:
2024年03月19日
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2024/03/19
更新しました
2017/04/25
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概要

セリアック病は自己免疫疾患の1つで、小麦などに含まれる“グルテン”と呼ばれる物質によって十二指腸や空腸(小腸の一部)に慢性的な炎症が起こり、腹痛や下痢などさまざまな症状が引き起こされます。

自己免疫疾患とは、従来異物などから自身の体を守るためにはたらく“免疫系”がうまく機能しなくなることによって自身の体を攻撃してしまう病気です。原因は不明ですが、主なものにバセドウ病関節リウマチなどがあり、セリアック病もその1つです。

セリアック病は、子どもでは離乳期から2歳くらいまでの間に発見されることが一般的です。成人では、40歳くらいまでに診断されることが一般的ですが、時に高齢になってから見つかる方もいます。

セリアック病では、1型糖尿病甲状腺疾患など何らかの自己免疫疾患や、小腸や食道、咽頭(いんとう)などの悪性腫瘍(あくせいしゅよう)を合併する場合があります。

原因

セリアック病の発症には、遺伝的要因と環境的要因が影響していると考えられています。

遺伝的要因

遺伝的要因としては、HLA遺伝子のHLA-DQ2HLA-DQ8などの変異が挙げられます。セリアック病の遺伝的要因のおよそ40%はHLA遺伝子の変異であると考えられていますが、近年はそれ以外の遺伝的要因も少しずつ分かってきています。

また、血のつながりのある両親など一親等の親族にセリアック病の患者がいる人では、有病率はおよそ10%といわれています。

環境的要因

環境的要因としては、小麦の摂取量が多い国でセリアック病の患者が多いことが知られています。日本でも、食の欧米化により小麦の摂取量が増えているため、今後セリアック病の有病率が高まる可能性があります。

症状

セリアック病では主に小腸の炎症が慢性的に起こることによって、消化器系の症状をはじめとするさまざまな症状が現れます。ただし、腸に炎症が生じていても自覚する症状はないことも場合があります。また、まれな疾患であることから、過敏性腸症候群IBS)として診断されているケースもあります。

消化器系の症状

下痢や腹痛、食欲の低下、お腹の張り、嘔吐などを自覚することがあります。また、食欲不振や、食べても下したり戻したりしてしまうことなどにより、体重が減ってしまうこともあります。

そのほかの症状

そのほかの症状として、貧血骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、疲れやすさ、関節痛、抑うつなど、さまざまな症状がみられます。

子どものうちに発症すると、食事から栄養がうまく吸収できないことなどにより、低身長などの成長障害が起こることもあります。成人の場合では不妊なども見受けられます。

検査・診断

セリアック病には統一された診断基準がありません。内視鏡検査、十二指腸の組織を採取して行う生検組織検査、血液検査、グルテン除去食による食事療法で症状が改善するかなどを総合的に判断して、セリアック病と診断されます。

見分ける必要がある病気として、過敏性腸症候群炎症性腸疾患(IBD)、食物アレルギー、感染性腸炎などがあります。

内視鏡検査と生検組織検査

内視鏡(いわゆる胃カメラ)を挿入し、食道、胃、十二指腸を観察します。十二指腸では、粘膜の粗造*や、絨毛(じゅうもう)**の萎縮が観察されます。また、十二指腸の粘膜を採取し、顕微鏡で小腸粘膜組織の異常を調べる生検組織検査も併せて行われます。生検組織検査はセリアック病の診断において重要な検査の1つであり、病気のタイプを詳しく分類することにも役立ちます。

*粘膜の粗造:胃の粘膜にはアレアと呼ばれる一定の模様があり、炎症やなんらかの異常が起こっている場合にアレアが不規則となっている状態。

**絨毛:十二指腸を含む小腸の内面にあるひだや突起のこと。栄養素の吸収力を高める働きを持つ。

血液検査

セリアック病患者はグルテンを取ると体内に特定の抗体が生産されます。血液検査ではその抗体の有無を確認するため、抗グリアジン抗体(AGA)、抗組織トランスグルタミナーゼIgA抗体(tTG抗体)、抗筋内膜抗体(EMA抗体)などを調べます。

ただし、日本ではいずれの検査も保険診療では測定ができません。

グルテン除去の食事療法による診断

グルテン除去の食事療法を行うことで、セリアック病患者の9割で症状の改善が得られます。そのため、グルテン除去で症状がよくなるかを確認することは、セリアック病の診断方法の1つです。

治療

セリアック病の治療方法としては、グルテンを取らないようにする“グルテン除去食(Gluten Free Diet:GFD)”が挙げられます。そのほかの治療法も開発されていますが、臨床試験中のものも多く、普及している治療方法はまだありません。

グルテン除去食(GFD)

小麦やライ麦、大麦などの食品を取らないよう、厳密な管理が必要となります。通常、グルテン除去食を1〜2週間続けることで、多くのセリアック病の症状は改善あるいは消失します。

消化器系以外の症状に対する治療

セリアック病では、栄養障害や骨粗鬆症が起こりやすいことが分かっています。そのため状況に応じて、栄養を補う治療や骨粗鬆症に対する治療も組み合わせて行います。

グルテン除去食の摂取だけでは改善しない場合

ときにグルテン除去食の摂取だけでは症状がよくならない場合や再発する場合などがあります。セリアック病の一部のタイプでは、ステロイドなどの免疫抑制薬やチオプリン製剤、インフリキシマブなどの生物学的製剤による薬物療法も検討されることがあります。

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