じこめんえきせいようけつせいひんけつ

自己免疫性溶血性貧血

概要

自己免疫性溶血性貧血(AIHA)とは、誤った免疫反応により自分自身の血液(特に赤血球)が攻撃され(自己免疫性)、赤血球が溶けて(溶血性)貧血になる病気です。

赤血球は全身に酸素を運ぶ役割をしているため、不足する(貧血になる)と酸素が不足して心臓に負担がかかり、最終的に心不全を引き起こすことがあります。また、特発性血小板減少性紫斑病(しはんびょう)と呼ばれる血小板が減る病気を併発することがあります。

難病に指定されており、重症の場合や長期間治療が必要になった場合には、医療費の補助を受けられる可能性があります。都道府県ごとに認定が必要であるため、詳しくはかかりつけの病院にご相談ください。

原因

自己免疫性溶血性貧血は、免疫反応の異常により発症します。

赤血球は骨の中の骨髄(こつずい)で正常に作られますが、体の中の免疫反応が過剰になり、自分の赤血球を外敵であると勘違いして攻撃することで赤血球が減少します。女性に多く、成人でも小児でも発症することがあります。

肺炎などの感染症や、免疫反応の異常により自分で自分を攻撃してしまう膠原病(こうげんびょう)をきっかけに発症することがあります。免疫反応が過剰になる原因は、わかっていません。

症状

赤血球には体中に酸素を運ぶはたらきがあるため、赤血球が不足すると貧血がおき、心臓や脳がうまくはたらかなくなることがあります。心臓がうまくはたらかないと息切れが起き、足のむくみや全身のだるさを感じます。脳がうまくはたらかないとめまいが起き、進行すると意識を失うことがあります。

これらは赤血球が不足するために起こる症状であり、治療によって赤血球が補われると症状が改善します。また、胃の後ろにある脾臓(ひぞう)が大きくなることで胃が圧迫され、少ししか食事をしていないのにすぐに満腹になることがあります。

検査・診断

血液検査や骨髄検査、超音波検査が行われます。

血液検査

血液に含まれる細胞の数や形などを調べます。自分の赤血球を攻撃するような免疫物質(自己抗体)の有無を調べます。「網状(もうじょう)赤血球」と呼ばれる幼若な赤血球がきちんと増えているかどうかも併せて調べます。

骨髄検査

局所麻酔で腰の骨に針をさし、血液を作る工場である骨髄をほんの一部とります。その後、顕微鏡で観察することで、骨髄の中できちんと赤血球が作られているかをチェックします。また、赤血球が減るような他の血液の病気がないかどうかも調べます。

超音波検査

お腹の中にある脾臓や肝臓が大きくなっていないかどうかを調べます。また、貧血を起こす他の病気(お腹の中の出血など)の有無も調べることができます。体にかかる負担の小さい検査です。

治療

基本的には外来で以下のような治療を行います。心不全を合併するなど重症の場合は入院して治療を行うこともあります。

免疫抑制療法

ステロイドや免疫抑制薬などで過剰になっている免疫反応を抑えます。飲み薬がほとんどです。

感染症に弱くなるため、発熱や咳などの症状が出た場合は、早めに病院を受診することがすすめられます。数か月~数年といった長期間ステロイドを内服する場合は、高血圧糖尿病、不眠、顔のむくみ、などの副作用が出ることがあります。

脾摘療法

過剰な免疫による攻撃を受けた赤血球は、胃の後ろ側にある脾臓で壊されます。そのため、手術で脾臓を取り除くことで、赤血球が壊されるのを防ぎます。内服薬でコントロールが難しい場合はこちらの治療が検討されます。

基礎疾患に対する治療

何らかの病気(基礎疾患)が原因になっている場合、基礎疾患の治療を行うことで貧血も改善することが期待されます。感染症が原因の場合、抗生物質や抗真菌薬、抗ウイルス薬で治療を行います。白血病やリンパ腫などのがんであれば抗がん剤やステロイドなど、膠原病などの自己免疫疾患の場合はステロイドなどで治療を行います。

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