治療
初発の眼内悪性リンパ腫に対する治療法には、目に対する局所治療であるメトトレキサート(MTX)硝子体注射や、眼放射線治療があります。また、目の局所治療と化学放射線治療を組み合わせた集学的治療もあり良好な成績という報告もありますが、いまだ標準治療は確立されていません。
MTX硝子体注射
MTX硝子体注射は、メトトレキサートと呼ばれる抗がん薬を目の中の硝子体に注射する治療法です。MTX硝子体注射は眼内悪性リンパ腫に対して高い有効性が認められていますが、この治療のみでは中枢神経や全身への再発を抑制することが難しいのが現状です。日本では、眼内悪性リンパ腫に対するMTX硝子体注射が広く行われている一方で、保険適用されていないため、現在多くの施設で倫理委員会の承認を得たうえで行われています。
眼局所放射線治療
眼局所放射線治療は、放射線を眼球および視神経管に照射する治療法です。欧米で広く行われており、日本でも眼局所治療として行われてきました。高い寛解率が得られることが分かっていますが、原則として1回しか実施できない治療である点が特徴です。また、治療後に白内障のリスクがあることや、比較的早期に再発しやすいという特徴があります。近年では、放射線治療の副作用を避ける傾向があり、何らかの理由でMTX硝子体注射が難しい患者さんを対象に行われることが多いです。
集学的治療
MTX硝子体注射と全身化学療法、さらに低線量の全脳放射線照射を組み合わせた集学的な治療を行うことで中枢再発の抑制が報告されています。MTX硝子体注射に加えて、R-MPV化学療法、23.4Gyの低線量全脳予防照射およびHD-AraCによる化学放射線療法の集学的治療によって眼内悪性リンパ腫の4年無病再発生存率が72.7%、中枢再発が10%と、予後が大きく改善したという報告もあります。近年発表されたイギリスおよびフランスにおける中枢神経リンパ腫の治療ガイドラインでは、原発性悪性リンパ腫の治療として全身状態が許せば積極的な全身化学療法を推奨しています。
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