治療
腫瘍の治療は一般的には、手術療法、化学療法、放射線療法などがありますが、眼窩腫瘍では手術療法が適応となります。摘出方法は腫瘍の場所によって異なります。比較的、眼窩の前のほうに位置する腫瘍の場合は、眼の周り(眉毛の下や、下まぶたの縁など)の皮膚を切って前方から摘出します。しかしながら、眼窩の奥のほうに位置する場合には、脳外科で開頭しなければ腫瘍を摘出できないことがあります。
腫瘍の種類が判明する確定診断には、腫瘍の一部を切除する生検や、腫瘍を全部取りきる全摘出などの手術療法を行い、摘出した組織を用いての病理組織学的検査が必要で、その結果次第では追加治療を行うことがあります。腺様嚢胞癌などの非常に悪性度の高い腫瘍では、腫瘍のみの摘出にとどまらず、眼窩内の組織をすべて除去(眼窩内容除去)しなければならない症例や、重粒子線治療という特殊な放射線治療を行う症例もあります。
頭痛や頭部外傷で頭部CTを取った際に偶然、眼窩腫瘍が見つかることがあります。視機能障害(視力低下や複視、眼球突出など)や日常生活への影響がなく、良性腫瘍の可能性が高い場合、定期的な画像検査を行いながら経過観察を行います(海綿状血管腫など)。
手術療法以外が治療の中心となる眼窩腫瘍もあります。悪性リンパ腫が疑われる場合には、腫瘍の一部を切除(生検)して、一般的な病理組織学的検査のみでなく、フローサイトメトリーなどの特殊な検査も行います。悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球が腫瘍化した病気であるため、治療は血液内科での化学療法や放射線療法が中心になります。
IgG4関連疾患を疑う場合も一部組織を生検して、病理組織学的検査で特殊な染色を行います。治療はステロイド剤の全身投与が著効しますが、再発することも珍しくなく、長期に及ぶステロイド治療が必要となることがあります。
乳児血管腫は、8歳ごろまでに少しずつ自然退縮しますが、急速に大きくなるものや、整容的な問題を生じる可能性があるものには、β遮断薬であるプロプラノロール内服療法が有効です。しかし、副作用として除脈や呼吸器症状を来す可能性があるため、眼科と小児科とが連携して治療する必要があります。
眼窩には多種多様な腫瘍が発生し、種類によっては手術療法以外の治療が中心となるため、適切な検査、治療計画が必要となります。
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