耳下腺腫瘍は非常に種類が多いことが知られています。診断のために行なわれるさまざまな検査の実際、そして診断に基づく治療方針の決定について、頭頸部外科の第一人者である埼玉県立がんセンター頭頸部外科部長の別府武先生にお話をうかがいました。
痛み・癒着(ゆちゃく)・顔面神経麻痺は悪性(がん)を疑う三兆候と呼ばれています。
このほか、腫瘍が急速に増大する場合は悪性を考えます。良性の腫瘍を長年持っていた場合でも、のちに悪性に転化する場合があります。急に大きくなってきたということがあれば注意が必要です。
超音波検査(エコー)は多くの施設で普及しており、短時間で簡便に行える検査です。患者さんの負担も少なく、悪性腫瘍(がん)であるか良性腫瘍であるかを診るためのファーストステップとして有用です。よりくわしく調べるためにはMRI(Magnetic Resonance Image:核磁気共鳴画像)を用います。腫瘍内部の性状や周囲に被膜があるかどうか、浸潤(周囲へ拡がっていること)の範囲などが把握できます。
CT(Computed Tomography:コンピューター断層撮影)検査は頸部リンパ節への転移、周囲の骨への浸潤を調べる際にも有用です。一方、シンチグラム(Tc唾液腺シンチ)はごく限られた場合にしか行いません。
採血用と同じ針を刺して腫瘍細胞を採取するもので、外来でも可能な検査です。術前に腫瘍が悪性か良性か、悪性ならその組織型は何なのかを診断する標準的な方法ですが、良性腫瘍ではその組織型を80%以上診断することが可能であるものの、悪性腫瘍の組織型診断は難しく、30〜50%程度となります。
術前に腫瘍の組織を切り取って顕微鏡で観察する組織診、いわゆる生検は播種(はしゅ・がん細胞が周囲にばら撒かれること)の危険があります。例えば、術前に組織診を得ようとするがためにできるだけ小さく皮膚を切開して、そこから深いところにある腫瘍の組織を採取するということは、顔面神経を傷つけるリスクが伴います。また、小さなT1程度のがんから検査のためだけに組織を一部採取し、組織診断がついたのちにもう一度残りのわずかながん組織をわざわざ切除しにいくということも現実的とはいえません。したがって行なうとすれば、すでに皮膚を突き破って表面に腫瘍が露出しているような場合に限られると考えてよいでしょう。
手術中に腫瘍の組織の一部を提出し、顕微鏡で観察して診断するものです。腫瘍が悪性かどうかを見分ける悪性診断率は良好との報告があり、有効な方法であると考えられます。ただし、組織型を正しく診断する組織診断においては、良性腫瘍の場合は良好であるものの、悪性腫瘍については摘出した後に注意深く診断する必要があり確定診断としてはやはり十分とは言えません。また、腫瘍を摘出する前に手術野において腫瘍の一部を切り取ることは、やはり播種の危険が完全にはぬぐえませんので注意が必要です。
耳下腺腫瘍の病理組織型を本当に正しく診断するには、摘出後に腫瘍を全割し、くまなく検鏡したうえでの病理組織検査が必要です。つまり手術してみないと完全には言い切れないのです。術前や術中の細胞診や組織診については、それぞれに意義はあるものの、いずれも100%の正診率(正しく診断すること)を得られるものではありません。
臨床的に癌であることを予測するのは、前項でのべたような診察時の悪性を疑う所見、境界が不明瞭で浸潤傾向を示す画像所見からがんであることがおよそ予測できます。病理組織学的な詳細まではわからなくても、術前から明らかに悪性(がん)と予測できるような場合は、まず高悪性度がんであることがほとんどで、病理組織型ごとに手術術式が大きく変わるわけではありませんので、画像診断からがんが浸潤している範囲を正確に把握することで術式の計画を立て、それに伴う合併症や、後遺症、術後機能や生活の状態、追加治療の可能性などを患者さんに対して説明することができます。
埼玉県立がんセンター 頭頸部外科 科長兼部長
関連の医療相談が10件あります
耳下腺癌の治療について
3年前から耳の下に腫瘍(良性腫瘍)ができ、通院及び検査をしていましたが、最近悪性の耳下腺癌と診断され、より大きな病院である奈良医大の医師を紹介され、7月に手術すると言われました。 腫瘍は、4~5cmの塊で、大きいため放射線治療も効果が期待出来ないと言われました。(細かい癌にしか効かないとの事でした) 最新治療の重粒子線治療も出来ないか医師に尋ねましたが、癌細胞と顔面神経が癒着するので、その後手の施しようが無くなるので、お勧め出来ないとの事でした。 手術すると、顔面神経切断する可能性が高いと言われました。 神経再建手術も同時にするとの話でしたが、足の筋肉と神経を移植するので、目がうまく閉じられないなど不自由な状態は解消されないとの説明でした。(元通りには回復しないし、ただ眼病予防のためにする形を整えるための手術との事) それなら手術はせずに、抗癌剤で治療を希望しましたが、医師から即却下され、手術の予約をするよう言われました。 本当に顔面神経切断する可能性が高い手術しか方法がないのでしょうか?
睡眠不足解消
睡眠について教えて下さい。夕飯はいつも晩酌しながら18:00~19:00頃になります寝床に入るのが21:00過ぎになります 時には寝床で少しテレビを見たりもします。寝つきはあまり心配しないのですが、夜中に目がさめて以後朝まで眠れない時があります。 以前、睡眠のサプリを飲んでみたのですがあまり改善しませんでした、どんな対応をすれば快適な睡眠ができるか教えて下さい。
左喉の痛み
喉の左だけ痛くて唾液を飲み込むのも痛いです。 また、喉仏付近の左側を押さえるとゴリっとなります。 発熱や咳など風邪のような症状はありません。 このような症状の場合、病院を受診した方がいいのでしょうか?
10歳男児 膝頭の皮下出血
10歳の男の子です。 一回目は3月13日軽いランニング後ひざに、二回目は本日スイミング教室後に、膝と足の甲側面に、直径5mmの皮下出血が膝頭部分に複数集合した状態で見られました。一回目の時も二日後ぐらいには何もなかったかのように治っていました。 元気はあります。 これは何が原因なのでしょうか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「耳下腺腫瘍」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。