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インタビュー

耳下腺腫瘍とは-診断や治療に高い専門性が求められる

耳下腺腫瘍とは-診断や治療に高い専門性が求められる
別府 武 先生

埼玉県立がんセンター 頭頸部外科 科長兼部長

別府 武 先生

耳下腺は耳の下にあり、唾液を作る唾液腺の中でもっとも大きなものです。おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)で腫れるのがこの耳下腺ですが、一説によると昔話の「こぶとりじいさん」は耳下腺腫瘍だったのではないかとも言われています。良性のものが多いとされる耳下腺腫瘍ですが、実際のところはどうなのでしょうか。頭頸部外科の第一人者である、埼玉県立がんセンター頭頸部外科部長の別府武先生にお話をうかがいました。

3大唾液腺と顔面神経

耳下腺(じかせん)は顎下腺(がっかせん)・舌下腺(ぜっかせん)とともに三大唾液腺のひとつです。唾液腺は文字通り唾液(つば)をつくり出し、分泌する器官であり、耳下腺はその中でもっとも大きなものです。左右の耳の前から下にかけて位置しており、おたふくかぜで腫れるところがこの耳下腺です。耳下腺腫瘍はこの耳下腺から発生する腫瘍であり、良性腫瘍と悪性腫瘍(がん)に大別されますが、病理組織的にはさまざまなタイプのものがあり、2017年のWHO分類では悪性腫瘍は24種類に分類されています。

体の表面近くにできる腫瘍であるため比較的安易に摘出される傾向がありますが、耳下腺の中には顔の表情筋を動かす顔面神経が走っているため、診断や治療には高い専門性が求められます。耳下腺はその中に張り巡らされた顔面神経によって浅葉(せんよう)と深葉(しんよう)に分けられます。また、顔面神経が通っていない最下部を下極(かきょく)といいます。

三大唾液腺に発生する腫瘍のうち、約70%が耳下腺に発生し、その多くは良性のものです。残り約30%は顎下腺に発生します。舌下腺に発生するものは非常に少なく、1〜2%程度です。耳下腺腫瘍における良性腫瘍と悪性腫瘍の比率は3:1であり、発生する部位でみると浅葉:深葉の比率は4:1です。また顎下腺腫瘍の場合、耳下腺腫瘍に比べて悪性腫瘍の比率はより高くなります。

良性腫瘍の代表的なものは次の2種類です。

  • 多形腺腫:耳下腺に発生する良性腫瘍でもっとも多くみられるのが多形腺腫です。40歳以上の女性に多くみられ、頻度は高くありませんが、長年経過すると悪性化する可能性があります。
  • ワルチン腫瘍:多形腺腫に次いで多く、中年以降の男性、特に喫煙者に多くみられます。

その他の良性腫瘍には基底細胞腺腫、筋上皮腫、オンコサイトーマ、顔面神経鞘腫(しょうしゅ)などがあります。

悪性腫瘍は組織型が多岐にわたり、非常に細分化されています。そのため、病理組織学的悪性度を高悪性度・中間型悪性度・低悪性度の3つに分類しています。それぞれの代表的なものは以下の通りです。(詳しい分類は次の記事「耳下腺腫瘍の病理学的悪性度と臨床的悪性度の関係、および病期分類」で示しています。)

  • 高悪性度:粘表皮がん(高悪性型)・腺がん(高悪性型)・腺様嚢胞がん(充実型)・唾液腺導管がん・多形腺腫由来がん(浸潤型)・扁平上皮がんなど
  • 低悪性度:粘表皮癌(低悪性型)・腺房細胞がん・基底細胞腺がんなど
  • 中間型悪性度:上記以外の各種がん

唾液腺腫瘍では、低悪性度のがんは良性腫瘍との鑑別が難しいという特徴があります。また、高悪性度の唾液腺がんは他の頭頸部扁平上皮がんと比較しても、決して予後が良好ながんではありません。
3分類それぞれの5年生存率は、高悪性度50%以下、中間型悪性度50〜85%、低悪性度85%以上となっています。耳下腺がんは隣接する頸部リンパ節に転移しやすいとされていますが、この頻度も悪性度によって変わってきます。低悪性度では10%以下とされています。

耳下腺腫瘍の多くは原因不明ですが、現在ではいくつかの遺伝子異常が関わっていることがわかっています。ワルチン腫瘍ではその原因として免疫異常が疑われていますが、主要なリスクファクターは喫煙であることが明らかになってきました。

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