概要
耳小骨発育不全とは、胎生期に音を伝える耳小骨がうまく発育せず、難聴をもたらす状態です。
難聴により言葉の発育にも支障が生じることがあるため、適切なタイミングでの治療介入が必要とされます。
治療としては、補聴器の使用による聴力の補助や、手術が必要なこともあります。
原因
耳小骨発育不全は、胎児期における耳小骨の発生異常により生じます。耳小骨とは、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨と呼ばれる中耳に存在する3つの骨の総称です。
たとえば、トリーチャー・コリンズ症候群やクルーゾン病などの先天性の疾患では、体中の色々な場所の骨に発育不全を来すことがあります。その一症状として耳小骨の発育に異常を来すことがあり、遺伝的な要因が関与しています。
その他、先天性風疹症候群や先天性梅毒などの胎生時期の母親の感染症により、内耳障害とともに耳小骨の発育不全が生じることもあります。また、さまざまな環境因子なども、耳小骨の発育に影響を与えることが知られていますが、明らかな原因を特定できない場合もあります。
症状
聴力障害
音を伝える耳小骨が発育していないと難聴が生じます。
難聴の程度は、耳小骨の発育具合や、片側性であるのか両側性であるかなどによって大きく異なります。難聴がひどい場合は全く音が聞こえないこともあります。
言語発達障害
言葉の発達は、言葉を聞いてそれを真似ることから発育していくため、聴力が低下していると、言葉の発達にも影響を及ぼします。3歳ごろまでに言葉の発達が完成するため、成長の早い時期に病気を発見し治療につなげることが必要です。
検査・診断
耳小骨発育不全による聴力障害は、出生後早期に行われる聴性脳幹反応(ABR)や聴性定常反応検査(ASSR)と呼ばれる他覚的な聴力検査によって疑われることがあります。
また、耳小骨の発育状況を詳細に評価するために、CT検査が行われます。この検査では、耳小骨の形態のみならず、外耳道や内耳などの解剖学的な変化も同時に評価することが可能です。
その他、鼓膜の動きを評価するティンパノメトリーと呼ばれる検査で、耳小骨が離れていたり、周囲の骨と固着していたりすることも評価できるため、耳小骨の発育不全の診断にも有用です。
治療
耳の聞こえをサポートするために、補聴器の使用を検討します。特に両側性の難聴がある場合には、言語発達障害も懸念されるため、早い段階で補聴器の使用をすすめることが重要です。
根本的な治療として手術が必要となります。ただし、手術を行うタイミングは患者さんの生活環境や発育環境によって大きく異なります。治療が長期に渡ることもあります。
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