いまるとりんぱしゅ

胃マルトリンパ腫

最終更新日:
2025年04月15日
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2025/04/15
更新しました
2017/04/25
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概要

胃MALTリンパ腫は胃に発生する悪性リンパ腫の1つで、白血球の一種であるリンパ球ががん化・増殖する病気です。通常、リンパ腫といえば悪性リンパ腫を指します。

私たちの体には、細菌やウイルスから体を守る免疫システムがあり、そのはたらきを担っているのが白血球の一種であるリンパ球です。

リンパ球が存在する組織をリンパ組織といい、リンパ系組織(リンパ節、胸腺など)とリンパ外組織または節外組織(胃などの消化管、骨髄、肺など)に分けられます。また、リンパ腫はがん化しているリンパ球の種類によってB細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫に分類されます。

MALTは“Mucosa-Associated Lymphoid Tissue(粘膜関連リンパ組織)”の略で、消化管などの粘膜や分泌腺に発生するリンパ腫をMALTリンパ腫と呼びます。胃に発生したものが胃MALTリンパ腫であり、B細胞リンパ腫の一種です。進行するスピードが緩やかで悪性度は低いのが特徴です。なお、MALTリンパ腫を粘膜関連リンパ組織型節外性辺縁帯リンパ腫と詳述する場合もあります。

胃MALTリンパ腫は、主にリンパ球のB細胞ががん化することで起こります。

主な誘因・原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)の感染が知られており、長期の感染による慢性炎症が発症に関与していると考えられています。

症状としては、上腹部の痛みや吐き気などがみられますが、初期では無症状のこともあります。そのため、健康診断や他の病気の検査中に偶然発見されるケースもあります。

治療としては、ピロリ菌陽性で病変が胃のみに限局している場合には除菌療法が行われます。除菌療法が無効な場合や、ピロリ菌陰性の場合、胃以外の部位にも病変が広がっている場合には、放射線治療や化学療法、抗体療法などが検討されます。

原因

悪性リンパ腫はリンパ球の遺伝子に傷がつくことで生じると考えられていますが、胃MALTリンパ腫は、リンパ球の一種であるB細胞ががん化することで発症する病気です。B細胞ががん化する正確なメカニズムは解明されていませんが、感染症による慢性炎症が発症に関与していると考えられています。特に、胃MALTリンパ腫の90%の症例でピロリ菌陽性であり、除菌治療によって病変が縮小・消失することがあるため、ピロリ菌感染が発症の引き金となっているという説が有力視されています。加えて、胃MALTリンパ腫の約2割において、API2-MALT1融合遺伝子という特徴的な遺伝子変異が確認されています。

症状

胃MALTリンパ腫は悪性リンパ腫の中でも進行するスピードが緩やかであり、悪性度は低いとされています。発症すると上腹部の違和感や痛み、吐き気などの一般的な消化器症状が現れることがありますが、多くの患者は目立った自覚症状がありません。一方で、進行すると周囲の臓器や骨髄、リンパ節に広がっていくためリンパ節の腫れや貧血などさまざまな症状を引き起こすこともあります。また、胃MALTリンパ腫ではB症状と呼ばれる発熱、寝汗、体重減少などの全身症状が生じることもあり、これらの症状が発見のきっかけになるケースもあります。

検査・診断

胃MALTリンパ腫が疑われるときは、以下のような検査が行われます。

内視鏡検査

胃内の病変を詳しく観察するために内視鏡検査が行われます。内視鏡を使用することで病変の広がりや深さを評価することが可能です。胃MALTリンパ腫の診断は、内視鏡下鉗子生検によって得られた病変組織の病理診断を通じて行われ、生検検査は診断に不可欠です。さらに、採取した生検組織を用いて、迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法などの方法でピロリ菌感染の有無を調べることも同時に行われます。

 血液検査

白血球数、白血球像・分画、貧血や電解質異常の有無など全身の状態を評価する目的で血液検査が行われます。病気の進行度を評価するうえでも重要な検査となります。

画像検査

胃MALTリンパ腫は周囲の臓器やリンパ節などに浸潤・転移する可能性があるため、病気の進行度を評価する目的で全身CTやPET検査、腹部超音波検査、超音波内視鏡などの画像検査も実施されます。

骨髄検査

胃MALTリンパ腫は進行すると骨髄にまで広がることがあるため、骨髄を採取して顕微鏡で詳しく調べる骨髄検査が行われます。

*浸潤:がんが周囲の組織に広がること。

治療

胃MALTリンパ腫の多くはピロリ菌感染を併発しており、ピロリ菌陽性で病変が胃以外の臓器に広がっていない場合、すなわち限局期(Lugano病期分類)では、ピロリ菌の除菌治療が第1選択です。除菌治療では胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)またはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)と、アモキシシリン、クラリスロマイシンの2種類の抗菌薬を組み合わせて1週間内服投与する3剤併用療法が行われます。この一次除菌が不成功の場合はクラリスロマイシンをメトロニダゾールに替えた二次除菌を実施します。一次除菌の成功率は約70~90%であり、二次除菌の成功率は約80~100%です。除菌治療による奏功率は50~80%といわれています。除菌治療後3〜6か月ごとに上部内視鏡検査で病変を観察し、生検検査を行います。除菌治療後MALTリンパ腫が消失するまでの期間は2か月~数年と報告されています。

一方、除菌治療が無効の場合やピロリ菌が陰性の場合(胃MALTリンパ腫の10%はピロリ菌陰性)また除菌が成功したが腫瘍(しゅよう)が縮小しない場合には、放射線治療(総放射線量25~40グレイ)や抗がん薬を使用する化学療法、分子標的薬のリツキシマブによる抗体療法などを組み合わせて治療を行います。

進行期(Lugano病期分類)の胃MALTリンパ腫ではリツキシマブ単独または化学療法との併用が行われます。なお、進行期でも症状がない場合や低腫瘍量である場合は、慎重な経過観察(watchful waiting policy)が適用されることがあります。

なお、過去には胃MALTリンパ腫に対して手術による切除が行われていたこともありましたが、現在ではほとんど行われません。

予防

胃MALTリンパ腫の明確な発症メカニズムは解明されていませんが、前述のごとくピロリ菌感染が関与している説が有力であり、現在のところ予防・治療の第1選択はピロリ菌の除菌治療です。そのため、ピロリ菌陽性が指摘された場合はまず除菌治療を行うことで胃MALTリンパ腫の発症を予防できる可能性があります。また、胃MALTリンパ腫は基本的に進行するスピードが遅い悪性度が低いリンパ腫ですが、進行すると他の臓器に広がっていくことがあります。消化器症状などが続くときは医師の診察を受けるようにしましょう。

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