いまるとりんぱしゅ

胃マルトリンパ腫

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

悪性腫瘍・がんの一種で、Bリンパ球の一部が正常の秩序から外れて増殖したものです。Bリンパ球とは、血液細胞のなかで、細菌やウイルスなどに対処する白血球の一種です。

リンパ球が増殖するリンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫に分類されたうえで、さらに細かく分類されますが、胃マルトリンパ腫はそのなかでも低悪性度に分類され、予後の比較的良好な疾患です。

胃マルトリンパ腫の原因となるリンパ球細胞は、リンパ組織における胚中心という部位での成熟を完了し、その後免疫グロブリン(体内に入った異物を排除する蛋白質)を作り出す形質細胞に分化する前の、辺縁帯リンパ球と呼ばれるものです。

マルト(MALT)とは、mucosa associated lymphoid tissueの略で、正式には、辺縁帯リンパ腫のうち胃の粘膜にあるリンパ組織のなかから生じてくるものを胃マルトリンパ腫といいます。

原因

節外性辺縁帯リンパ腫の原因としては、ピロリ菌をはじめとする細菌、ウイルスの感染、あるいは、自己免疫疾患などによる慢性的な一部の臓器での炎症反応が考えられています。

生体内では、抗原(細菌やウイルスなど)からの刺激に伴い局所で多種類のB細胞、T細胞が増殖を続けます。それが長期間続くと、抗原からの刺激により特定の種類のB細胞が単独で増殖を始めるようになります。

このB細胞が、遺伝子変異によって、抗原からの刺激無しに増殖する能力を獲得するとリンパ腫となります。これらの遺伝子変異は、B細胞の増殖に有利にはたらいたり、細胞の自死を妨げる働きをしたりします。

胃マルトリンパ腫の場合では、ピロリ菌による慢性胃炎が原因であることが多く、患者さんの9割以上に感染が認められます。

症状

胃マルトリンパ腫を含む、ほとんどの節外性辺縁帯リンパ腫は、比較的早い段階で特定の臓器に限った症状を起こし診断されることが多いです。そのため、微熱、倦怠感、寝汗といった症状(いわゆるB症状)を診断時に生じていることは多くありません。

胃での病変に起因する症状としては、逆流性食道炎、心窩部の不快感・痛み、食欲不振、体重減少、下血・黒色便などが挙げられます。

検査・診断

その他のリンパ腫と同様、診断の確定のためにはリンパ腫組織の生検が必要です。多くの場合は、上記のような胃に起因する症状の精査の過程で上部消化管内視鏡検査胃カメラ)をして、腫瘤が認められればその組織を一部採取して免疫染色やフローサイトメトリーといった病理学的な検査を行います。

内視鏡下で特に明らかな腫瘤が認められない場合には、診断に必要なだけの組織を採取することが困難な場合もあります。その場合、内視鏡下での超音波の使用や粘膜組織に加えて粘膜下組織まで採取することで診断の可能性が高まります。

その後の治療方針に関わるためピロリ菌に感染しているかの確認も非常に重要です。また、病期によって治療が異なるため、CTでの胸部、腹部、骨盤部の画像検査や骨髄穿刺・生検検査が行われる場合もあります。

治療

病期分類として、Ann Arbor分類という方法がその他の多くのリンパ腫では用いられますが、胃マルトリンパ腫の場合はLugano分類という方法が用いられます。

Lugano分類で早期(Stage I/II)、かつピロリ菌陽性の場合はピロリ菌の除菌療法(経口での抗菌薬内服)が行われます。除菌療法後に除菌の成功、失敗の判定を行うための再検査が必要で、失敗した場合には別の抗菌薬の組み合わせで2次除菌を行います。

リンパ腫治療の成功、失敗の判定には時間を置くことが必要なため、ピロリ菌除菌後に数か月毎に検査を行うことになります。

11;18の染色体転座がある場合は治療の成功率が低いという結果がありますが、除菌療法が安全な治療法で、放射線療法、全身化学療法では副作用を伴うことからまずは除菌療法が行われます。ピロリ菌陰性で早期の場合には放射線療法が行われます。

進行期(Stage IV)の胃マルトリンパ腫の治療方針に関しては、強いエビデンスはありません。ピロリ菌陽性の場合はピロリ菌の除菌を行い、その後症状が出るまで経過観察、あるいはリツキシマブという抗体療法を単独で行うか、場合によって抗癌化学療法を組み合わせて治療することもあります。

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