概要
胆嚢炎とは、肝臓と膵臓の間にある胆嚢と呼ばれる臓器に炎症が起こる病気です。急性胆嚢炎と慢性胆嚢炎があり、どちらの症状も右上腹部の発作的な痛みを特徴とします。急性胆嚢炎は慢性胆嚢炎よりも痛みが強いことがあり、発熱がみられることもあります。
急性胆嚢炎の多くは胆石(胆汁の一部が結石化したもの)によって胆汁の流れが滞ることによって発生し、急性胆嚢炎が続くと、慢性胆嚢炎となり痛みの発作を繰り返すことがあります。
胆嚢炎は胆石がある場合に起きやすくなり、40歳以上の中高年や女性に多いことが知られています。一方で、急性胆嚢炎のうち約10%を占める無石胆嚢炎は、胆石がないのにもかかわらず発症し、寝たきりの患者や集中治療中の患者に起こりやすく、重症化のリスクが高いといわれています。
原因
胆嚢炎には“急性胆嚢炎”と“慢性胆嚢炎”があり、急性胆嚢炎のほとんどは胆石が原因です。胆石は胆汁のコレステロール濃度が高くなることなどによってでき、胆石ができると胆汁の流れが滞り、そこに細菌感染が起こると胆嚢炎を発症することがあります。
そのほか、急性胆嚢炎のうち無石胆嚢炎は、大きな手術、外傷、やけど、長期間の点滴栄養などをきっかけに起こることが多く、寝たきりの患者や集中治療中の患者に起こりやすいことが知られています。
慢性胆嚢炎は急性胆嚢炎に引き続いて起こることがあり、炎症によって胆嚢の壁が厚くなることで引き起こされると考えられています。
症状
胆嚢炎の主な症状は、右上の腹部やみぞおちあたりの腹痛です。腹部に生じる痛みの特徴やそのほかの症状は、胆嚢炎の種類によって異なります。
急性胆嚢炎
急性胆嚢炎は鈍痛や右上腹部の不快感から始まり、炎症が進むと痛みが激しくなることがあります。発熱、吐き気、嘔吐などの症状がみられることもあります。
無石胆嚢炎
無石胆嚢炎では突然耐え難いほどの激痛を生じることがあり、腹部の腫れや圧痛、原因不明の発熱がみられることもあります。
慢性胆嚢炎
慢性胆嚢炎では痛みの発作を繰り返しますが、発熱はないことが多いです。また、一般的に痛みは急性胆嚢炎よりも穏やかです。
検査・診断
胆嚢炎は、症状と血液検査、画像検査(超音波検査、CT、MRIなど)に基づいて診断されます。
血液検査や一般的に行われる画像検査だけで診断ができない場合は、胆道シンチグラフィー検査と呼ばれる画像検査が行われることもあり、特に無石胆嚢炎の診断に有用であるとされています。
上記のほか、肝臓の機能を評価するために肝機能検査が行われることもあります。
治療
胆嚢炎の治療には初期治療、胆道ドレナージ、胆嚢摘出術があります。特に急性胆嚢炎の場合はなるべく早い段階で胆嚢摘出術を行いますが、症状や合併症によっては症状が落ち着いてから手術を行うこともあります。
初期治療
まず食事を止め、水分と電解質を点滴で補いながら炎症を抑える処置を行います。胆嚢炎の炎症の多くは細菌感染によるものであるため、抗菌薬を投与し、痛みがある場合は鎮痛剤の投与を行います。
胆嚢摘出術
胆嚢を取り出す手術です。お腹に小さな穴をあけて腹腔鏡と呼ばれる器具を用いる腹腔鏡下手術と、お腹を開いて行う開腹手術があります。
胆嚢炎では初期治療で症状が落ち着いても、胆嚢を取り出さなければ再発する頻度が高いといわれており、なるべく早い段階で胆嚢摘出術を行うことが一般的です。ただし、無石胆嚢炎では、胆道ドレナージを行えば胆嚢摘出術を行わなくても再発の頻度は低いといわれているため、胆嚢摘出術を行わないこともあります。
胆道ドレナージ
胆管に細いチューブを通し、たまった胆汁を体外に排出する治療です。鼻からチューブを入れる方法と、皮膚の上から針を刺し、肝臓を通してチューブを入れる方法があります。
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