概要
胸骨骨折とは、胸の中央に位置する胸骨に生じた骨折のことを指します。
交通事故など強い衝撃を受けることに伴い起こることが多いですが、スポーツや高い場所からの転倒によっても起こることがあります。また、骨粗しょう症などの病気があると些細な外力でも胸骨骨折が生じることがあります。
痛みが数か月持続することもあり、呼吸がし辛くなることから合併症などを発症することもあります。
原因
胸骨骨折は、胸に対しての強い鈍的な衝撃を原因として発症します。
たとえば、交通事故での衝突で急激な減速運動が起こり、シートベルトやハンドルに胸を強く打ち付けられることなどが挙げられます。
また、ラグビーやプロレスなど胸に強い衝撃が生じる可能性のあるコンタクトスポーツや、高い場所からの転倒、暴行やケンカなどが原因となることもあります。
さらに、先に挙げたような強い衝撃以外でも、骨粗しょう症を抱える方は、軽微な外力で胸骨骨折が生じることがあります。
この点においては、高齢者、閉経後の女性、ステロイドを長期間使用している方などは、胸骨骨折の発症リスクが高まると言えます。
また、上半身を慢性的に使用するようなスポーツを行う方に、疲労骨折として胸骨骨折が生じるケースもあります。
症状
胸骨骨折を生じると、強い痛みや息苦しさ、外から見てもわかる出血や腫れなどが生じます。胸骨骨折による痛みは、数か月間持続することもあります。
骨粗しょう症などに伴ういわゆる「いつの間にか骨折」のような、怪我とは無関係の骨折では症状が軽いことも多いため、なかなか診断に至らないこともあります。
また、呼吸に伴い痛みが増強するため、浅い呼吸をするようになり、咳をしたりするのをできるだけ避けるようにすることもあります。このような場合には、合併症として肺炎を発症することもあります。
胸骨骨折は非常に強い外力がかかる状況で起こるため、胸骨以外の骨が損傷を受けることもあります。具体的には、肋骨や上下肢、鎖骨などがあげられます。
さらに、肺や心臓、腹部臓器など、骨以外の内臓臓器が損傷を受けることもあり、重篤な合併症につながることもあります。
検査・診断
発症した直後の急性期においては、意識状態や呼吸状態、血圧循環などを迅速に確認することが重要です。
胸骨以外の骨折や臓器損傷が生じている可能性もあるため、レントゲン写真やCT検査、超音波検査、心電図検査、血液検査など包括的な検査も検討されます。
また、発症後すぐには問題がない場合でも、時間経過と共に呼吸循環状態が変動したり、臓器損傷や続発症(肺炎など)が明らかになったりすることもあるため、時間経過を見て状態を確認することも必要です。そのため、状況に応じて集中治療室での管理を受けることもあります。
治療
胸骨骨折では、胸骨の損傷状態はもちろん、その他の骨・臓器損傷を評価しながら治療方針を決定します。
程度が軽い場合には、骨折部位の固定(バンドで体を巻く)や痛み止めの使用などによって局所の安静と痛みの管理を図ります。
急性期において呼吸循環に問題がある場合には、人工呼吸や心臓マッサージ、挿管による人工呼吸管理や輸液・輸血などが適宜検討されます。また、呼吸や血圧が安定している場合には、治療介入が必要な臓器に応じてドレナージや手術も検討します。
経過中に合併症の発症が疑われることもあるため、適宜必要な治療(たとえば肺炎の場合には抗生物質の投与など)も追加します。
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