ふくぶがいしょう

腹部外傷

目次

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概要

腹部外傷(ふくぶがいしょう)とは、腹部に負う損傷です。腹部にはさまざまな臓器がおさまっています。その部分に衝撃が加わったり、切り傷を負ったりすると、腹部の臓器に大きな損傷がおよびます。

たとえば肝臓、脾臓、膵臓、腎臓などの実質臓器(じっしつぞうき)(割面でみると組織がつまっているようにみえる臓器)、胃、十二指腸、小腸、大腸などの管腔臓器(かんくうぞうき)(管状になっている臓器)、そして骨盤や脊椎といった骨などが損傷を負います。こうした部位に損傷をうけることで、救急搬送が必要になるケースがあります。

腹部損傷では、大量出血や腹腔内出血のほか、腹膜炎、骨折などが生じる可能性があり、命の危険にさらされることもあります。
 

原因

腹部損傷は主に以下のような原因でおこります。

  • 直接的な打撃(蹴られる、打たれる)
  • ものに衝突する(歩行者の交通事故)
  • 落下する(高い場所からの転落)
  • 自動車運転時の事故(ハンドル外傷やシートベルト外傷)
  • 銃で撃たれる
  • 刃物で切られる など

腹部損傷には「鈍的外傷」と「穿通性外傷」があります。鈍的外傷は打撃が加わることでおこります。蹴られる、衝突する、落下するなどで生じる損傷です。一方、穿通性外傷は皮膚を突き破ることで生じます。これは銃や刃物で外傷を負ったときにみられるものです。
 

症状

症状は外傷の種類によってさまざまです。

  • 大量出血
  • 腹腔内出血
  • 腹膜炎
  • 骨折 など

肝臓、脾臓、膵臓、腎臓などの臓器や、腹部を通る大きな血管、腸間膜の血管などが損傷すると大量出血がおこります。胃、小腸、大腸などの管腔臓器が損傷すると、臓器の内容物が腹腔内(腹部にある空洞の部分)に入ってしまいます。するとそこで炎症がおき、腹膜炎を引き起こすことがあります。
 

検査・診断

腹部外傷の診断では、まずは腹部の損傷の状況、外傷を負った経緯を確認します。そして血液量が低下することであらわれる異常な症状(ショック)があるかどうかを確認します。体のほかの外傷や症状も確認しながら、特に腹部の損傷が大きければ、腹腔内の出血を探していきます。

検査としては、以下のようなものがおこなわれます。

  • FAST(迅速簡易超音波検査法)
  • CT検査(造影CT、MD-CTなど)
  • IVR(インターベンショナル・ラジオロジー)
  • 動脈造影 など

腸管損傷が疑われる場合には診断的腹腔洗浄法を検討します。出血部位を特定するためには造影CT、IVR、動脈造影などをおこないます。

※FAST(迅速簡易超音波検査法):腹腔に出血が溜まっているかどうかを調べることができる検査法
※IVR:X線透視、超音波像、CTなどの画像診断装置を用いながら体内にカテーテル(医療用の細い管)や針を入れておこなう治療法
※診断的腹腔洗浄法:腹部外傷に対して開腹手術をおこなうかどうかを決めるための補助検査法

治療

出血性のショック症状をおこしている場合には、ショックに対する治療をおこないながら、開腹手術で止血することが必要です。また外傷を負ったところから腸管が脱出していたり、刃物などが体内に残っている場合にも開腹手術が必要です。

CTやIVRなどの検査で出血部位を特定できた場合には、動脈塞栓術で治療をおこないます。

※動脈塞栓術:カテーテル(医療用の細い管)を血管に挿入して、目的の血管の治療をおこなう方法。一般的には局所麻酔後、足の付け根の血管(大腿動脈)などからカテーテルを入れ、目的の血管の部位に血管を塞ぐための物質を注入して止血をおこなう