褥瘡(じょくそう)とは、寝たきりの状態が長期間続くことによって、自分の体重で圧迫されている部位の血流が悪くなったり滞ったりすることで、皮膚の一部が赤くなったり、ただれたり、傷ができてしまう状態のことをさします。一般的には「床ずれ」と言われることが多く、寝たきりになったお年寄りなどにできる治りにくい傷として知られていました。
しかし、現在では褥瘡は高齢者に限った症状ではなく、若い人や赤ちゃんでもできることがわかっています。ここでは褥瘡の一般的な症状やその発生原因について、大阪赤十字病院皮膚科部長の立花隆夫先生にお話をお伺いしました。
褥瘡は初期には丸く赤みを帯びたように見えたり、血まめや水ぶくれができることもあります。さらに進行するとその箇所から出血したり、ただれて黄色くなります。そして最終的にはその部分の細胞が壊死する(死ぬ)ことで組織が黒く乾燥してきます。
このように褥瘡が進行することを防ぐためには、まず褥瘡のできやすい部位を定期的に確認することが大切です。褥瘡は姿勢によってできやすい部位が違っており、寝ている状態でベッドに接しやすい骨が突き出している部位、また座った状態で椅子に当たりやすい部位などにできやすくなっています。
後頭部・肩甲骨・仙骨部(お尻の上の部分)・かかとなど
耳・肩・肘・腸骨(腰骨のところ)・膝・くるぶしなど
背中・尾骨(背骨をずっとお尻側に辿っていった先の箇所)・坐骨(お尻の肉をよけて座ると椅子に当たる場所)など
上記のように褥瘡のできやすい部位の皮膚が赤くなっている場合、褥瘡であるのかを確かめる方法として、赤くなっている部分を軽く3秒ほど圧迫し、白っぽく変化するかどうかを確認する方法があります(指押し法)。押したときに白く変化し、離すと再び赤くなるものは褥瘡ではありません。押しても赤みが消えずそのままの状態であれば、初期の褥瘡になります。
褥瘡は寝たきりの状態など長時間同じ姿勢で動かない状態が続くと、自分の体重で長時間同じ部位が圧迫されるために、その部位の血流が悪くなり、その結果細胞に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなることで生じます。また長期間圧迫されていると、皮膚だけにとどまらず、さらに深い部分にある骨に近い組織が傷つく場合もあります。
私たちは通常、寝ているときでも無意識に寝返りをうっています。また、長時間椅子に座っているときもお尻を左右に動かしたり、座りなおしたりすることで、同じ箇所に長時間圧迫がかからないようにしています。このように体を動かすことを「体位変換」といいます。褥瘡ができてしまう患者さんはこの体位変換ができないことが大きな要因となっています。
そのため、長期間寝たきりの状態であったり栄養状態が悪い場合、また皮膚が弱い高齢者やステロイドを服用している人は褥瘡になりやすくなっています。そのほかにも、体位変換ができない骨盤骨折や脳血管疾患、脊椎損傷の患者さん、免疫機能が低下している糖尿病の患者さんも、褥瘡ができやすいため注意が必要です。
星ヶ丘医療センター 皮膚科 部長
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