熱海所記念病院は、ガンマナイフと呼ばれる放射線治療装置を用いた定位放射線治療(ガンマナイフ治療)に積極的に取り組んでいます。また、温泉地として知られる熱海という立地にあることも、同院の大きな特徴といえるでしょう。
熱海所記念病院 脳神経外科 中村 文先生は、「ガンマナイフ治療に慣れた親切なスタッフがそろっている当院で、リラックスしながら治療を受けてほしい」とおっしゃいます。今回は中村先生に、同院が取り組むガンマナイフ治療の特徴についてお話を伺いました。
当院では、ガンマナイフ治療を行う前に、患者さんとご家族に対してガンマナイフ治療が適している理由や、治療後の経過についてきちんとご説明したうえで治療を行うよう努めています。
また、ガンマナイフ治療は外科的手技による侵襲がなく、低侵襲で効果が期待できる治療法ではあるものの、放射線を被ばくすることには違いありません。ですので、起こり得る放射線障害などのリスクについては事前にきちんとご説明するようにしています(ガンマナイフ治療の詳細は、前ページ参考)。
当院では、2泊3日の入院でのガンマナイフ治療を基本にしています。ただし、患者さんやご家族のご事情によっては、2泊3日の入院が難しいケースもあるかもしれません。マスクシステムによるガンマナイフ治療であれば、日帰りや1泊2日の入院での治療も可能ですので、ご希望があれば相談していただきたいと思います。
ここでは、当院における2泊3日でのガンマナイフ治療の流れをご紹介します。
基本的に治療の前日に入院していただき、採血や心電図検査、胸部X線・CT検査を行います。その後、治療用の頭部のMRI検査とCT検査を実施し、腫瘍の形やサイズ、位置などを確認します。検査結果をもとに、放射線を照射する範囲や線量などを決定し治療計画を立てます。
照射中に頭部を固定するために、マスクシステムの場合は専用マスクと枕の作成を、フレーム固定の場合はフレームの装着を行います。
その後引き続き、治療計画をもとにガンマナイフによる照射を行います。治療にかかる時間は、平均1〜2時間ほどです。実際に照射を受けている時間は、小さな腫瘍が1個であれば10〜15分ほどです。照射中に痛みはありませんので、横になったままできる限りリラックスして治療を受けていただければと思います。
ただし、ご高齢の患者さんなどは、じっとしていることが負担となる場合もあるでしょう。治療中に疲れてしまったり不安を感じてしまったりすることで、照射を続けることが難しくなる場合もあるので、患者さんの様子を注意深く確認しながら休憩を入れつつ、治療を最後まで継続できるよう取り組んでいます。
治療や、退院後の生活などについて説明をさせていただきます。次回の受診日を予約していただき退院となります。
転移性脳腫瘍の患者さんがガンマナイフ治療を受けた後、日常生活を送るうえでの制限は特にありません。体調に問題がなければ、旅行に行ったり仕事をしたりしても構いません。回復期間やリハビリテーションなども必要ありませんので、退院後はすぐに日常生活に戻ることが可能です。
ただし、治療後に定期的な受診が必要であることはお伝えしています。治療によって腫瘍が縮小・消失したり症状が改善したりしたとしても、原発がんの状態によっては、がんが再び脳に転移する可能性があるからです。再発したとしても、発見が早ければ治療をスムーズに進めることができますので、医師と相談しながら定期的な受診を続けてほしいと思います。
当院は、ガンマナイフ治療に長く取り組んできました。そのため、医師のみならず事務、看護師、そして放射線技師など、ガンマナイフ治療に慣れたスタッフがそろっています。患者さんごとにどのような対応をすべきか経験を通して理解しているため、スムーズに治療することができるのです。
患者さんに対して親切に接するスタッフがそろっていますので、安心して治療を受けていただきたいと思います。
当院が位置する熱海は温泉地として有名であり、海が近く穏やかな雰囲気の場所です。患者さんやご家族にとって、リラックスできるような環境だと思います。
お話ししたように、ガンマナイフ治療後は通常の生活と変わらず過ごすことができますので、当院への受診が患者さんやご家族の気分転換につながればと願っています。
転移性脳腫瘍を治療する場合は、原発巣のがんの治療を担当している先生とコミュニケーションを取り、原発巣の治療方針を考慮しながらガンマナイフ治療を行うよう努めています。
また当院は、地域の医療機関とも協力体制を築いています。具体的にどのような症例にガンマナイフ治療が適しているか、ほかの医療機関の先生にお伝えして患者さんをご紹介いただいています。
ガンマナイフ治療は三叉神経痛*にも効果が期待できますが、三叉神経痛を歯肉の痛みとして歯科受診される例もありますので、歯科の先生たちに三叉神経痛に対するガンマナイフ治療を含め脳外科受診についてお伝えする取り組みも検討しています。
*三叉神経痛:顔面に短時間の強い痛みが起こる病気
私は、もともと脳神経の領域に興味があったことに加えて、病変と必要な治療との関係がより分かりやすいところに魅力を感じて脳神経外科医の道に進みました。
ガンマナイフ治療に携わるようになったのは、地方の勉強会で定位放射線治療を専門にする医師の講演を聞いて感銘を受けたことがきっかけです。 “自分が治療を受ける立場だったら、できる限り開頭手術は避けたいと思うだろうな”と当然ですが思うところがあり、もともと低侵襲の治療に興味があったことから、模索するなかでガンマナイフ治療にたどり着きました。そうしてガンマナイフ治療に携わってきましたが、治療が終わって患者さんが安心されている表情を見るとうれしく、やりがいを感じます。
転移性脳腫瘍の患者さんに対しては、神経症状をなるべく起こすことなく、患者さんが自分らしくいられるよう治療に携わることができればと考えています。
ガンマナイフ治療の対象となる腫瘍には、さまざまなものがあります。当院では転移性脳腫瘍がもっとも多いですが、聴神経腫瘍、髄膜腫などの良性腫瘍に対しても治療を行います。同じ脳腫瘍ではあるものの、受けてきた治療や体の状態など、それぞれの患者さんで背景は異なるのです。病気のみを診るのではなく、それぞれの患者さんの背景やご事情を把握し、一人ひとりに適した治療を提供できるよう努めています。
お話ししたように、当院は熱海というリラックスできる場所に位置しています。治療に慣れた親切なスタッフがそろっていますので、緊張せずに来ていただきたいと思います。
また、転移性脳腫瘍の患者さんには、根気強く治療をしていきましょうと伝えたいと思います。転移性脳腫瘍は、原発がんから転移するのが特徴です。治療後に新たな転移が見つかると、患者さんは落ち込んでしまうこともあると思います。ただし、腫瘍が小さいうちに発見されれば治療はしやすく、腫瘍のコントロールもしやすくなります。諦めずに根気強く治療に取り組んでいきましょう。
中村 文 先生の所属医療機関
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