ちはつせいじすきねじあ

遅発性ジスキネジア

最終更新日:
2022年06月23日
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2022/06/23
更新しました
2021/06/17
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概要

遅発性ジスキネジアとは、抗精神病薬などの治療薬を使用した後に現れ、自分の意思とは関係ない動きが繰り返される症状のことです。ジスキネジアとは繰り返し唇をすぼめる、舌を左右に動かす、口をもぐもぐさせるなどの意味のない動きを繰り返し、自分の意思では止められない症状を指し、なかでも抗精神病薬などを長期に使用した場合に副作用として現れるものを“遅発性ジスキネジア”と呼びます。

遅発性ジスキネジアは抗精神病薬などを長く使用しているほど症状が出やすくなり、特に高齢の方、糖尿病を合併している方、脳に何らかの器質的な異常がある人でリスクが高くなるといわれています。

原因

遅発性ジスキネジアは、ほとんどが抗精神病薬を使用した後に現れます。また、抗精神病薬のほかにも制吐剤や抗てんかん薬、抗うつ薬などで現れることもあります。

遅発性ジスキネジアをはじめとして、ジスキネジアは随意運動(自分の意思で行う運動のこと)を調節する大脳基底核と呼ばれる部位に何らかの障害が起こって発症すると考えられています。また、大脳基底核の機能はドパミンと呼ばれる物質によって調節されており、遅発性ジスキネジアの原因となる抗精神病薬は脳内のドパミンに作用するものが多いため、ジスキネジアなどの原因になりやすいとされています。

薬剤を長期に服用した後に起こる遅発性ジスキネジアの詳しい発生原因は分かっていませんが、ドパミンが作用するドパミン受容体と呼ばれる部位に抗精神病薬などが長期にわたって作用することで、ドパミンのはたらきのバランスが崩れることやドパミンの代謝物が大脳基底核に何らかの障害を起こすことなどが原因ではないかと考えられています。

症状

遅発性ジスキネジアでは、唇をすぼめる、舌を左右に動かす、口を突き出す、口をもぐもぐさせるといった意味のない動きが、自分の意思とは無関係に繰り返されます。これらの症状が抗精神病薬を使用し始めてから通常3か月以上経ってから現れ、数年単位の長期間が経ってから現れることもあります。

ジスキネジアとは意味のない不随意運動(自分の意思とは無関係に起こる運動)の総称です。上記のような口の動きが多いですが手足にも現れることがあり、勝手に手が動いてしまう、足が動いてしまって歩きにくいといった症状が現れることもあります。また、手足に症状が広がるときはジストニア(持続的に筋肉が緊張し、異常な姿勢や運動を繰り返すこと)やアカシジア(じっとしていることに違和感を覚え、常にそわそわしてしまうこと)と呼ばれる症状が見られることもあります。

検査・診断

遅発性ジスキネジアは原因となり得る薬剤を服用している場合に、症状の様子から判断されます。特別な検査は行われませんが、遅発性ジスキネジアと似たような病気があることから、これらの病気と区別することが重要になります。

特に、抗精神病薬を服用している場合には、精神疾患そのものが遅発性ジスキネジアのような不随意運動を引き起こす場合があるほか、正常な人でも加齢に伴って口もとの不随意運動(口唇ジスキネジア)が見られることがあります。これらの症状と遅発性ジスキネジアの症状を区別することは難しい場合もありますが、眼球が特定の方向を向いてしまう、じっとしていられずに同じ動きを繰り返してしまうといった症状は、遅発性ジスキネジアの診断の手助けとなることがあります。

治療

原因となっている薬剤の中止か薬剤の変更が治療の基本です。症状が重い場合は、症状に対する治療薬を用いることもあります。

原因薬剤の中止

原因となっている薬剤の中止や減量が可能であれば、中止・減量を行います。ただし、精神疾患では薬剤を突然中止することで症状が悪化することがあるため、主治医と相談しながら慎重に行う必要があります。

薬剤の変更

抗精神病薬の中でも遅発性ジスキネジアを起こしやすいものと起こしにくいものがあります。原因薬剤を減量することで精神症状が悪化する場合は、減量したうえで遅発性ジスキネジアを起こしにくいタイプの薬を併用することで症状が改善する場合があります。

症状に対する治療

遅発性ジスキネジアの多くは生活に影響がないものですが、まれに重症化して動けない、寝られない、食事が上手く取れないなどの生活上の問題が出てくることがあります。遅発性ジスキネジアに対して確立した治療法はありませんが、脳に作用する薬などを用いることがあります。また、2022年6月に遅発性ジスキネジアに対する治療薬が発売開始されました。

予防

遅発性ジスキネジアは一度発症すると治りにくい病気です。そのため、発症を予防することが遅発性ジスキネジアの一番の治療法ともいえます。治療薬の量が多くなるほど発症のリスクが高くなるため、治療薬についてはメリット、デメリットについて主治医とよく相談しながら使用方法を決めることが大切です。また、抗精神病薬の中にも遅発性ジスキネジアを起こしにくいものがあるため、どのような薬が使用できるか聞いてみるとよいでしょう。

遅発性ジスキネジアの症状の多くは生活に差し障るものではないため、症状が軽ければ見過ごされてしまうことも少なくありません。遅発性ジスキネジアの原因となる薬を使用しているときは起こり得る症状についてよく理解し、何らかの症状が出たらすぐに主治医に相談するようにしましょう。

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