逆子を治し、帝王切開分娩のリスクを回避するための選択肢である「骨盤位外回転術」。具体的には、どのような方法で逆子を頭位へと戻すのでしょうか。また、妊娠何週目ごろに受けるのが望ましいとされているのでしょうか。外回転術の豊富な施行経験を持つ、国立成育医療研究センターの周産期・母性診療センター骨盤位外来の小川浩平先生に質問させていただきました。
ここでは、どのようにしてお腹の中の赤ちゃんを頭位へと戻すのか、外回転術の具体的な方法をご説明していきます。
まず、赤ちゃんが母体頭側に上がるよう、妊婦さんには下半身を持ち上げ、頭部を下げるような姿勢で寝てもらいます。このとき、子宮の筋肉の緊張を緩め、赤ちゃんが回転しやすくなるように、点滴でお腹の張り止め薬を投与します。また、同時に痛みの除去と腹壁の緊張を解くために麻酔をかけます。
その後、1~2名の術者が超音波で赤ちゃんの向きを確認し、妊婦さんのお腹の外から、赤ちゃんの頭とお尻をしっかりと捉え、前回りになるように回転させます。
※赤ちゃんの姿勢などを確認したうえで、場合によっては後ろ回りに回転させることもあります。
外回転術にかかる時間は、ほとんどの場合が2~3分と短く、長くかかった場合でも1回10分程度です。
また、外回転術は保険適用されますので、純粋な外回転術のみの費用は1回の超音波検査などと大差ありません。ただし、麻酔や入院の有無によって、実際にかかる費用は変動します。国立成育医療研究センターでは、成功率向上とリスクヘッジのために麻酔を使い、手術室で手技を行っており、経過観察をするために全ての方に翌日まで入院していただいていますので、トータルで4万円ほどの費用がかかります。
次に、外回転術を行う時期についてお話しします。従来は、外回転術を受けた直後に破水した場合に備え、早産の時期を超えた妊娠37週以降に行うことが理想とされてきました。日米のガイドラインなどにも同様のことが記されています。
しかし、近年では妊娠35週~36週に行うことで外回転術の成功率が上がる可能性があり、さらに経膣分娩できる可能性も上がるという報告も出てきました。そのため、コクランレビューという権威のある論文でも妊娠35~36週での外回転術を考慮してもよい、と記されました。
当センターでは、万が一外回転術により早産を誘発してしまった場合でも、新生児科医が常におり、十分に対応できる環境が整っていますので、成功率と安全性どちらも考慮したうえで、妊娠36週を基本として行っています。
施設の中には、赤ちゃんが回転しやすい妊娠32週ごろに実施しているところもありますが、記事1でお話しした通り、逆子は妊娠後期に入っても自然に治るケースが多々あります。妊娠32週ごろですと、まだ自然に頭位に戻る確率は高いので、私たちはあまり早い時期には行わず、なおかつ「生まれてしまっても大丈夫」という時期に外回転術を行っております。
外回転術により頭位に矯正できた赤ちゃんが、分娩までに逆子に戻ってしまったというケースもありますが、私が経験したのはこれまでに1名のみです。しかし、これは、もともと頭位で落ち着いていた赤ちゃんが、分娩前に突然逆子になってしまう頻度とほぼ同程度のものではないかと考えられます。このような外回転術とは無関係に頭位の赤ちゃんが逆子になるケースは、年間約2000分娩中数回起こっています。外回転術後に逆子に戻ってしまうという症例も、同様に稀なことであり、予防、予測することは困難です。
ここまでは、外回転術のメリットや帝王切開のデメリットについて述べました。しかし、外回転術にもまた、腹部に力をかけることによるリスクが存在します。外回転術はあくまで逆子を妊娠している妊婦さんやご家族の「選択肢」のひとつですから、メリット・デメリット、どちらの側面も知っていただくことが重要になります。
国立成育医療研究センター 産科医員
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