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こうれいしゃてんかん

高齢者てんかん

同義語
高齢発症てんかん

概要

てんかんは、脳の神経細胞が過剰に興奮することで、反復性の発作(てんかん発作)を引き起こす病気です。一般的に、65歳以上で発症した場合を“高齢者てんかん”と呼びます。

てんかんの発症率は乳幼児期にピークがありますが、中高年以降で再び増加することが明らかになっています。多くの高齢者てんかんは脳血管障害脳卒中)や認知症などの脳の病気、また加齢にも関連して生じるため、これらの病気と併せて注意すべき病気の1つです。

高齢の方における発作は、若い年代とは異なり、意識がわずかに途切れているだけの症状であることが多く、診断が遅れることで生活の質(QOL)が低下する可能性があります。発作による脳の障害や転倒、骨折などのリスクを防ぐためには、早期発見と適切な治療が大切です。

原因

若い世代のてんかんは原因不明のケースが多いといわれていますが、高齢者てんかんの多くは、後天的な脳の病気や外傷といった原因が明らかなてんかん(症候性てんかん)です。原因となる病気や外傷が生じた後、1~2年後にてんかんを発症する可能性が高いと考えられています。

脳血管障害

高齢者てんかんの主な原因であり、全体のおよそ50%を占めます。脳梗塞(のうこうそく)脳出血などの発症後、すぐに発作が起きることもあり、急性症候性発作と呼ばれています。

認知症

アルツハイマー型認知症や、レビー小体型認知症などの認知症も重要な原因です。特にアルツハイマー型認知症の約10〜20%は、てんかんを発症するといわれています。近年、認知症が高齢者てんかんの原因となるだけでなく、高齢者てんかんでは認知症を発症する場合があることも明らかになりました。認知症と高齢者てんかんは相互に関係すると考えられ、研究が進められています。

そのほかの原因

脳腫瘍(のうしゅよう)や、過去の転倒・事故による頭部外傷などがてんかんを引き起こすことがあります。また、精密検査を行っても明確な原因を特定できないこともあります。

症状

一般的に高齢者てんかんでは、脳の一部の神経細胞から異常な興奮が始まる“焦点起始発作”が現れます。脳全体が同時に興奮する“全般起始発作”は、高齢者においては比較的まれであるとされています。また、若い世代にみられるような全身が激しくけいれんする発作を伴わないことが多いため、本人や周囲が発作に気付きにくいという特徴があります。この特徴が、高齢者てんかんの発見を遅らせる要因の1つとなっています。

高齢者てんかんの前兆

高齢者の発作では、前兆は起こりにくいとされていますが、めまい、頭がフワフワする(ボーッとする)、お腹の不快感などの非特異的な症状が現れることがあります。

焦点起始発作の主な症状

最も頻度が高く見逃されやすい症状は、意識がはっきりとしない状態で、それまで行っていた動作を止める発作(焦点意識減損発作)です。多くの場合、目の焦点が合わず反応のないまま、一点をぼんやりと見つめる症状が数十秒~数分間続きます。このとき、若い世代よりも頻度は少ないですが、口を動かしたり、衣服のボタンを無意味にいじったりする“自動症”と呼ばれる無意識の動作がみられることもあります。意識がはっきりしない状態で生じる発作のため、一般的には発作中の記憶はありません。

発作後のもうろう状態

高齢者特有の重要な点として、発作そのものは数分で終了しても、その後のもうろう状態が長く続くことが挙げられます。短い場合は数分~10分ほどですが、数時間~数日間にわたって意識がはっきりしないこともあり、認知症せん妄などと間違われることが少なくありません。

検査・診断

高齢者てんかんが疑われた場合、認知症せん妄などの病気と区別するため、問診や脳波検査、画像検査などが行われますが、異常が見られない場合も多く、発作症状で診断します。

問診

まずは詳細な問診が行われます。発作中、本人は意識を失っていることが多いため、家族や介護者など、発作を直接目撃した人からの情報が欠かせません。突然の動作停止や自動症の有無、発作後のもうろう状態の長さなどを詳しく確認します。スマートフォンなどで発作時の様子を動画記録しておくことも、診断の助けになります。また、既往症や現在治療中の病気、服用している薬などについても確認されることがあります。

各種検査

脳の異常な興奮を調べる“脳波検査”や、てんかんの原因となる大脳の異常(脳血管障害脳腫瘍など)を探すための“画像検査(MRI検査やCT検査など)”が行われます。また、より詳細な検査として“長時間ビデオ脳波モニタリング検査”があります。この検査では、2~3泊の入院期間中、持続的に脳波の測定とビデオ撮影を行うことで、発作のタイミングや症状を確認します。

そのほか、低血糖や電解質異常、腎不全などのほかの病気と区別するために血液検査を実施したり、心臓の病気による失神と見分けるために心電図検査を行ったりすることもあります。

鑑別が必要な病気

高齢者てんかんは、失神や一過性脳虚血発作TIA)、せん妄、認知症、レム睡眠行動障害など、さまざまな病気と症状が似ているため、慎重な診断が行われます。

治療

高齢者てんかんの治療は、主に抗てんかん発作薬による薬物療法が行われます。

薬物療法

治療に用いられる抗てんかん発作薬には、レベチラセタムやラモトリギン、ラコサミドなどがありますが、ほかの病気や使用中の薬、加齢に伴う体の変化を総合的に評価して選択されます。

高齢者は薬の代謝機能の低下により副作用が出やすいため、極めて少ない量(成人投与量の半分以下)から開始し、ゆっくりと増量していきます。高齢者てんかんは抗てんかん発作薬が効きやすく、多くの場合は少量で発作が抑えられるといわれています。

副作用と経過観察

抗てんかん発作薬には神経の興奮を抑えるはたらきがあるため、ふらつきや眠気などの副作用に注意が必要です。高齢の方の場合、ふらつきが転倒や骨折につながる可能性があります。

また、薬の組み合わせによる影響を避けるため、抗てんかん発作薬以外の薬やサプリメントなどを服用している場合は、医師や薬剤師の指示に従いましょう。必要に応じて血液検査を行い、副作用や全身状態を確認しながら治療を進めます。

服薬継続の必要性

てんかんは慢性の病気のため、一般的に抗てんかん発作薬による治療は長期間にわたります。服薬を急に中断したり、不規則に服用したりすると、てんかん発作の再発や重篤な症状を引き起こしやすいため、決まった時間の服薬を続けましょう。

自動車の運転に関する条件と注意点

てんかんの方が自動車を運転するには、原則として“発作が2年間ないこと”や“意識障害を伴う発作が起こらないこと”などが条件となります。また、加齢による認知機能や運動能力の低下も考慮し、決して自己判断はせず、医師に相談しましょう。

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