インタビュー

高齢者のてんかんについて

高齢者のてんかんについて
赤松 直樹 先生

福岡山王病院 神経内科、日本神経学会 代議員

赤松 直樹 先生

この記事の最終更新は2016年02月10日です。

てんかんは小児に多い病気というイメージがありますが、有病率では高齢者が最も多いとされます。高齢社会を迎えた日本においては、今後さらに高齢者のてんかんが増加すると予測されています。高齢者てんかんについて、福岡山王病院てんかん・すいみんセンターの赤松直樹先生にお話を伺いました。

てんかんは、小児期に多く、高齢者では発症することはないと思われているようですが、近年の疫学調査の結果から、てんかんの発症率は高齢者でもっとも高いことがわかっています。高齢者とは65歳以上と定義していますが、65歳以上でのてんかんの有病率は1%を超えています。ちなみに、40歳以上では0.4%です。日本ではてんかんに罹る人がおおよそ1000人に8人といわれていますが、高齢者に限定すると1000人に10人程度となります。日本における65歳以上の高齢者人口は3千数百人を超えているので、国内の高齢者におけるてんかん患者数は40万人ほどにものぼると推測できます。

高齢者てんかんの原因でもっとも多いのは下記のグラフに示すように脳卒中です。

高齢者てんかんの病因

てんかん発作は、電気回路がショートして起こるものです。つまり、脳のどこかに病変があると、ショートしやすくなるのです。加齢にともない脳卒中や外傷など、脳は何らかの損傷を受けやすくなります。てんかんを発症する要因が増えるため当然かもしれませんが、高齢社会を迎えた日本においては、今後さらに高齢者てんかんが増えることが予測されています。

一方、脳卒中などの病変が何もないのにてんかんを起こす非病変性てんかんが多いのも高齢者の特徴のひとつです。この場合、てんかん発作は側頭葉に起こることが多く、半数以上は二次性全般化を起こさない複雑部分発作です。意識を消失したり、自動症といって、手をモゾモゾしたり、口をペチャペチャしたりと、特徴的な動作を繰り返す症状がみられますが、この時けいれんはありません。患者さんの半数はけいれんがないため、他の病気と誤診されてしまいます。そのため、てんかんと診断されるまでに時間がかかってしまうのです。

高齢者に多くみられる病変を伴わないてんかんは、薬による治療効果が非常に高いので、正しく診断されれば、抗てんかん薬でピタリと発作を止めることが可能です。

抗てんかん薬は、部分(焦点)発作にはカルバマゼピン等の部分発作に効果スペクトラムのある薬剤、全般発作にはバルプロ酸等と、発作のタイプに応じて薬剤を使い分けなければなりません。ただ、この時に注意しなければならないことは、カルバマゼピンやフェニトインという従来からある抗てんかん薬は、他の薬との併用で肝臓での代謝の活性化を早めたり、逆に遅くしたりする場合があるということです。

高齢者は、すでに何かの持病があったり、薬を服用していたりと、多様な背景をもっています。例えば、ワルファリンを服用している患者さんがカルバマゼピンを併用すると、ワルファリンの分解が早くなって薬の濃度が変わってしまいます。あるいは抗がん剤を服用している患者さんであれば、抗てんかん薬を併用することで、抗がん剤の濃度が下がってしまう薬剤があります。(酵素誘導作用)

過去5年から10年ほどの間に登場したレベチラセタム(Levetiracetan・LEV : 一般名)やトピラマート(topiramate・TPM  : 一般名)などの新しい抗てんかん薬には、これらの酵素誘導作用がないものが多いので、高齢者にはこういった相互作用のない薬剤を使うことが必要です。また高齢者のてんかんは軽症であるケースが多いのに加えて、薬物代謝もゆっくりとしているので薬の量も少なくて済み、通常量のおよそ3分の1程度の投与量で発作をコントロールすることができます。

※新規抗てんかん薬

一般名

トピラマート(TPM)

ラモトリギン(LTG)

レベチラセタム(LEV)

ガバペンチン(GBP)

てんかんは、抗てんかん薬を服用することで発作を抑制することが可能です。ただし、薬の作用が安定するまでには年単位の治療が必要になります。早い段階でてんかんを正確に診断し、一刻も早く発作をコントロールすることが大切です。

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