てんかんを真の意味で完治させる方法は、ごく一部の例外を除くと残念ながらまだありません。しかし、適切な治療を行えば、発作をうまくコントロールすることが可能です。その第一歩が薬物療法です。
てんかんの治療方法には、1)薬物療法、2)外科的治療(手術)、3)食事療法(ケトン療法)などがあります。基本は、てんかん発作を抑える薬の服用です。発作を減らすことが治療のゴールだった時代もかつてはありました。現在は、「発作ゼロ、副作用ゼロ、将来への不安ゼロ」という「3つのゼロ」を目指すべきです。
発作が半分に減っても患者さんの人生は劇的には改善しません。発作が年に1回でも運転免許は取得できないでしょう。発作を完全にゼロにすることは治療目標の第一です。
発作が治まったとしても、治療薬による副作用があれば治療にとっての理想的なゴールとは言えません。服薬を断念せざるをえない重篤な副作用もありますし、そこまで重篤でなくとも副作用がつらすぎれば生活の質は落ちます。患者さんが自覚できないような体質の異常が水面下で進行していることもありえます。副作用ゼロは治療目標の第二に位置します。
発作ゼロかつ副作用ゼロでも、人生に対する不安や悩み事があれば、治療のゴールに達したとは言えません。将来起こりうる発作の再発への不安、薬剤の副作用出現への不安、女性の場合は妊娠した際に子どもへの影響が出てくる不安など、医学的な問題や悩みもありますし、偏見や差別で学校や職場でつらい思いをしている方も少なくありません。なかには家族や自分自身が、てんかんについて偏見や差別を持っているために、患者さんの自尊心が保てないケースもあるのです。こうした問題は、医師が1人で解決できるとは限りません。多くの職種の協力のもと、医療資源や社会資源を組み合わせつつ、解決していかなければならないでしょう。
はじめに、てんかんの薬物療法で用いる薬は「発作を抑える」薬であって、「てんかんを治す」薬ではないことを心にとどめておいてください。てんかん発作を抑えるための薬を服用し続けるというのが薬物療法の基本となります。
これまでのてんかん治療ガイドラインでは、成人の場合、局在関連てんかんの第一選択薬は「カルバマゼピン」、全般性てんかんの第一選択薬は「バルプロ酸ナトリウム」となっています。基本は「単剤治療」といって、 1種類の薬だけで治療を行うのが基本です。そして、単剤治療では効果がみられない場合には、別の薬に切り替えて最終的にはやはり単剤治療を目指すのが標準です。
しかし最近、新薬として登場した「ラモトリギン」と「レベチラセタム」は、発作抑制効果が強いものの長期に服用する副作用が小さいために、カルバマゼピンやバルプロ酸ナトリウムに代わって最初から第一選択として使われるようになってきました。
「ラモトリギン」は局在関連てんかんと全般性てんかんの認可、「レベチラセタム」は局在関連てんかんにのみ認可が下りていますが、実際には両者共に、どちらのタイプのてんかんにも効果を発揮します。むしろ、てんかん治療の初期段階から 「ラモトリギン」もしくは「レベチラセタム」を使い、もし両者を試しても効果が十分でない場合にはじめて、局在関連てんかんならカルバマゼピン、全般性てんかんならバルプロ酸ナトリウムを用いる、という方法が広まりつつあります。
てんかんの薬物療法では、最初の薬剤で約5割の人で発作が抑えられるといわれています。2番目ないし3番目の薬剤で発作が抑制される場合は、さらに追加の1〜2割といわれ、それ以上は追加の効果を期待できないのが普通です。ここまでの薬剤調整は通常1年以内に終了しますので、もし薬剤療法で発作がゼロになる見込みがないのなら、早めに専門医を紹介してもらうべきです。その場合、外来診療を繰り返していても大きな変化は期待できませんから、できれば入院のうえ、長時間ビデオ脳波モニタリング検査を実施してもらえる施設に紹介してもらいましょう。
※2017年3月25日(土)に仙台で世界的なてんかん啓発活動「パープルデー」イベントを開催します。
東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野教授
「てんかん」に関連する病院の紹介記事
特定の医療機関について紹介する情報が掲載されています。
関連の医療相談が29件あります
てんかん患者の仕事について
中学生の頃にてんかんと診断されてから、約15年ほど経ちます。 発作は、完全に意識を失って、強直&痙攣する大発作と、数秒間ぼーっとする欠伸発作があります。 現在、会社員をしています。 仕事はとてもやりがいがあり、楽しんでいます。 しかし、環境としては劣悪です。。日付を超えても働き続ける長時間労働で、給料も低い。ひとりひとりに任される責任も重いです。 それでも、他の仕事にはない楽しさだけで続けてきましたが、ついに先日、家でぶっ倒れてしまいました。5年ぶりの大発作です。 要因としてはやっぱり、疲労やストレス、寝不足があるのだろうとは思います。そして、今の仕事を始めてからずっとそこは気がかりではありました。 会社にてんかんのことは伝えていますし、口では理解もしてくれていますが、やっぱり実感が伴わないとなかなか心からの理解を得られるのは難しいです。 数日前の大発作から、まだ頭痛と気持ち悪さが続く中で、仕事をどうするべきか悩んでいます。 お医者さんならやはり、きちんとした生活リズムの作れる仕事をおすすめされるのでしょうか...?
てんかん発作?
まだ、診察していないのですが、肺に水がたまって、手足のむくみ不眠症、吐き気嘔吐恐怖、どうき、気持ち参るなく夜に泣いてる。
笑いてんかんについて
こんばんは 娘が精神疾患で通院歴8年になります 脳波検査をしたのですが 診断はてんかんではないと言われました 親の私はてんかんです 娘が8年ぐらい笑つたり、泣いたりを繰り返しています 毎日です 笑いてんかんがあると知りました 痙攣はありません 舌を噛んだりします 診断書にはてんかんの疑いと記載されています 病状が悪化しているので病院を変わろうかと考えています 笑いてんかんてあるのでしょうか? できればてんかん専門の病院で診てもらいたいです
外傷性てんかんによる発作
昨年の12月に父親が交通事故にあい頭の手術をしました。 事故にあってすぐ意識がない時にてんかんの発作が起きたと言われました。 そしてその後1年ぐらいが経ち先週の木曜日にてんかんの発作が起きました。 その時の発作を実際自分の目では見たのではなく人から教えて貰ったのですが 腕がピンと上に伸びて首を横に振る動作を1時間していたそうです。 その日病院で入院をして金曜日に退院したのですがその翌日の土曜日にまた同じ発作が起きてまた入院をしたそうです。 医師から脳に異常は無いと言われたそうです。 今は退院して家にいるのですが木曜日に発作が起きたあとから何を喋っているか分からない喋り方をしているそうです。 私が心配なのはこの発作が1時間も起きたことで脳に異常が起き、話せなくなったり痴呆症になってしまうのが心配です。 てんかんの発作で話せなくなったりしますか? 私は父親と離れて暮らしているのでどのように発作がおき今どのような状態なのかは正確にはわからないです。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「てんかん」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。