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こんなときどうする? ――子どもがけいれんしたときの対応

こんなときどうする? ――子どもがけいれんしたときの対応
菊池 健二郎 先生

埼玉県立小児医療センター 神経科 科長

菊池 健二郎 先生

目次
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お子さんがけいれんを起こすと親御さんはとても不安になるものです。しかし、子どものけいれんは珍しいことではありません。まずは冷静になり、安全を確保したうえでしっかり様子を観察することが重要です。そのためには、いざというときに注意すべきポイントを押さえておくと安心でしょう。今回は、子どもがけいれんしたときの対処法について、埼玉県立小児医療センター 神経科 科長の菊池 健二郎(きくち けんじろう)先生にお話を伺いました。

お子さんがけいれんを起こしている状態を目にすると親御さんはとても不安を覚え、慌ててしまうのも無理はありません。多くの場合、私たち医師は直接お子さんのけいれんの様子を見ることができないため、親御さんの観察が診断と治療にもっとも重要な情報になります。以下のポイントを押さえ、冷静に対応しましょう。

1)慌てずに、まずは親御さん自身が落ち着く

何よりもまず、親御さん自身の心を落ち着かせましょう。

2)安全な場所にゆっくりと横向きにする

けががないことを確認したうえで、できれば横向きに寝かせてください。仰向けでも構いませんが、嘔吐した場合に備えて、顔は横に向けておいたほうがよいでしょう。お子さんを寝かせた周囲に尖ったものなどの危険物がないか確認し、安全を確保してください。寝かせるのは階段から離れた場所がよいでしょう。

3)服のボタンやベルトを緩める

呼吸が楽にできるよう、首の回りを中心にボタンやネクタイなどを緩めておきましょう。

けいれんの最中に呼吸が十分にできていない場合がありますが、無理に人工呼吸や心臓マッサージなどの応急措置を行う必要はありません。

4)指やタオルを口の中に入れない

けいれんしている間に舌を噛んでしまう、あるいは舌が喉に詰まってしまうと心配して、タオルや箸、指などを口の中に入れることはやめましょう。けいれんの最中は意識がないことが多く、かなりの力で歯を食いしばっていることもあり、無理に口を開けたり口の中に物を入れたりすることは、かえって口の中を傷つけたり、歯が折れてしまったり、嘔吐を誘発したりして危険です。

5)激しく揺すったり、無理矢理押さえつけたりしない

基本的に、けいれんは呼びかけたり体を押さえたりすることでは止まりません。また、けいれんしている最中に無理に体温を測る必要もありません。けいれんが止まったら必要に応じて測りましょう。

6)発作が終わったら、そばに付き添う

多くの場合、けいれんは3~4分ほどで止まります。その後、意識が戻るまで近くでしっかり様子を観察して、普段どおりに戻っているかどうか確認しましょう。

けいれんが始まってからの時間を計り、5分以上たっても止まらない場合は救急車を呼んでください。

なお、てんかんと診断されていて、そのけいれんが数分で終わりけがもない場合は、必ずしも救急車を呼ぶ必要はありません。けいれんが止まった後はしばらく様子を観察して、普段どおりに戻っているかどうか確認してください。何か気になることがあれば主治医に相談しましょう。

ほとんどのケースでは、私たち医師はお子さんのけいれんの様子を直接見ることができないため、親御さんが観察した様子を教えてもらうことが治療を決めるうえでとても重要となります。落ち着いて下記のポイントを中心に観察していただき、医療機関での医師からの問診のときにお子さんのけいれんの状況を伝えていただきたいと思います。心理的に余裕がある場合は、スマートフォンなどでけいれんの様子を動画撮影されるのもよいと思います。

  • 何をしているときにけいれんが起こったか(寝ていたのか、起きていたのか、テレビなどを見ていたか、立っていたのか、座っていたのか)
  • けいれんが何分続いたか
  • 体のどこから症状が出始め、どのように広がっていったか(特に両方の眼球の動きや方向、手足の動き方、けいれんの左右差など)
  • けいれんしている最中の意識障害があったか、本人がけいれんの最中のことを覚えているか

救急車を呼ぶ目安としては、当院ではけいれんが5分以上続いた場合としています。それは、けいれんは多くの場合3〜4分で自然に止まりますが、5分以上続くと自然に止まる可能性が低くなるからです。また、けいれんが短時間で止まったとしても意識の回復が悪かったり、断続的に何度もけいれんを繰り返してその間の意識の回復が悪かったりする場合にはけいれん重積状態といえますので、救急車を呼んだほうがよいでしょう。けいれんが止まった後に寝てしまうお子さんが多いのですが、1~2時間たって目が覚めても普段どおりの様子に戻らない場合、あるいはけいれんは止まっているものの顔色が悪いといった場合にも救急車を呼んでください。

前述のとおり、けいれんが5分以上続く、あるいは何度もけいれんを繰り返してその間の意識の回復が悪いようなけいれん重積状態や、けいれん自体は短時間で止まったものの普段と様子が異なるといったときには救急車を呼んでください。また、1日に何度もけいれんを繰り返す場合には医療機関を受診されたほうがよいでしょう。受診の際には、先に述べたポイントに加えて、食事との関連(空腹だったか)、思春期以降の女の子であれば生理との関連などについても医師に伝えてください。症状についてはけいれんの左右差があったかということが重要になってきますので、スマートフォンなどで動画撮影されてもよいでしょう。あるいは、親御さん自身がお子さんのけいれんの様子を真似されてもよいです。

子ども(特に乳幼児)のけいれんの原因の1つとして、低血糖があります。空腹状態になると低血糖を引き起こすことがありますので、特に夕食はしっかり食べさせてあげてください。乳幼児期には、遊び疲れて夕食を取らずに寝てしまうということもあると思いますが、夕食を食べずに寝てしまうと、前日の昼食あるいはおやつから翌日の朝まで15~18時間何も食べていないことになります。大人と違って、子どもはブドウ糖の元になるグリコーゲンを体内に多く蓄えておくことができないため、食事を抜くと血糖値が下がりやすくなります。1日3回の食事、特に夕食はしっかり取ることが大切だと個人的には思っています。

お子さんのけいれんを実際に目の当たりにすると、親御さんはとても驚かれ、不安になられると思います。しかし、けいれんの原因がはっきりすれば、その状況を回避したり予防したりすることができます。熱中症低血糖からけいれんを起こすこともありますので、お子さんの毎日の食事や体調管理には十分気を配ってあげてください。また、けいれんが起こったときには慌ててしまいがちですが、落ち着いてけいれんの様子を観察し、診察時に医師にできる限り正確な情報を伝えていただきたいと思います。動画を撮ることも有効な方法です。けいれんの詳しい情報があれば、正しい診断と治療に結びつきますし、不必要な治療を回避することもできます。

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