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結節性硬化症とは――白斑とけいれんの症状があったら

結節性硬化症とは――白斑とけいれんの症状があったら
菊池 健二郎 先生

埼玉県立小児医療センター 神経科 科長

菊池 健二郎 先生

目次
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結節性硬化症とは全身に過誤腫(かごしゅ)と呼ばれる良性腫瘍(りょうせいしゅよう)が生じる病気です。遺伝子の異常によって生じ、年齢に応じて多彩な症状がみられることが特徴です。多くは小児のうちに、皮膚に生じた白いあざのような“白斑(はくはん)”やけいれんなどの症状をきっかけに発見されるといわれます。

今回は、埼玉県立小児医療センター 神経科 科長の菊池 健二郎(きくち けんじろう)先生に結節性硬化症の特徴や現れる症状などについてお話を伺いました。

結節性硬化症とは、皮膚や脳神経系、目、腎臓、肝臓、肺、消化管、骨など全身に“過誤腫”と呼ばれる良性腫瘍が生じる病気です。そのほか、白斑と呼ばれる白いあざやけいれんなど、全身にさまざまな症状や合併症が現れます。指定難病にもなっており、およそ6,000人に1人の割合で生じると考えられています。

結節性硬化症は遺伝子の異常によって生じる病気で、患者さんの年齢とともに症状が変化していくことが特徴です。具体的な症状については次項で述べますが、多くは小児のうちに何らかの症状をきっかけに発見されることが一般的です。

ただし小児のうちに症状が現れず、学童期、思春期、あるいは大人になってから症状が現れ、診断されるケースもあります。

以下では、結節性硬化症で現れる主な症状について、体の部位別にご紹介します。

皮膚の症状

皮膚症状としては、白斑と呼ばれる白いあざや顔面の血管線維腫、シャグリンパッチ、爪囲線維腫(そういせんいしゅ)などが挙げられます。

  • 白斑

白斑は、結節性硬化症でよくみられる症状の1つです。木の葉のような形をした“葉状白斑”が一般的で、好発部位としては膝や太もも、お腹などが挙げられます。生まれた直後からあることが一般的で、結節性硬化症が見つかるきっかけとなることも多いです。色白の方の場合、出生直後は目立たないこともありますが、日焼けなどに伴って目立ってくることがあります。

  • 顔面血管線維腫

顔面の血管線維腫とは、頬や鼻など顔面に赤いできものが生じることを指します。できものの様子は年齢によっても異なります。2歳頃に現れる場合、赤い糸くずのようなしみとなって現れますが、小学校に上がる頃にはにきびのように盛り上がった赤いできものとして現れます。また、時に赤みのないものや大きく扁平(へんぺい)なもの、黒い球状のものなど多彩な特徴を持ち、年齢とともに増加していくことが一般的です。

  • シャグリンパッチ

シャグリンパッチは粒起革様皮(りゅうきかくようひ)とも呼ばれる、背中や腰、お腹などに生じる皮膚の盛り上がりです。早い人では幼児期にいぼのような形で現れますが、多くは思春期以降に現れます。時間の経過とともに大きくなることもあります。

  • 爪囲線維腫

爪囲線維腫とは、手足の爪の周辺に現れる硬い腫瘍をいいます。思春期以降に現れることの多い症状で、特に足の爪に生じる傾向があり、時間の経過とともに大きくなることもあります。

中枢神経系の症状

脳や脊髄(せきずい)など中枢神経系の症状としては、けいれんなどを症状とするてんかん、発達遅滞・知的発達症(知的能力障害)、自閉症、学習障害などが挙げられます。

  • けいれん性のてんかん発作によるてんかん

結節性硬化症によるてんかん発作は、乳児期から2歳以下の幼児期に生じることが多く、なかでも生後3〜11か月の乳幼児期には、ウエスト症候群点頭てんかん)が多くみられることが特徴です。ウエスト症候群は難治なてんかんの1つで、目覚めた直後や寝ぎわに首や四肢に一瞬グッと力が入り、すぐに止まったと思ったら数秒後にまた力が入るといった特徴的なけいれん様の動き(てんかん性スパズム)を5〜40秒ごとに繰り返し(シリーズ)、これが1日5~6シリーズ認められることが特徴です。ウエスト症候群では、てんかん性スパズムが消失した後に別の発作が出てくることもあります。また、患者さんの80〜90%に発達の遅れがみられるといわれています。一方、ウエスト症候群をきっかけに結節性硬化症が見つかる場合もあります。

  • 上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)

上衣下巨細胞性星細胞腫(じょういかきょさいぼうせいせいさいぼうしゅ)(SEGA)は脳の中の脳室という髄液が循環するスペースの壁に生じる過誤腫です。胎児期、または幼児期から10歳前後に生じることが一般的で、髄液の流れをせき止めるほど大きくなると脳室に髄液がたまる水頭症という状態になり、頭痛や吐き気などの症状がみられます。

発達遅滞・知的発達症(知的能力障害)がみられる患者さんもおり、知的発達症については、てんかんが早期に現れた患者さんや、てんかんのコントロールが難しい患者さんほど重度になることがあります。また、結節性硬化症に伴って生じる自閉症/自閉傾向、学習障害、そのほかの精神神経症状などを総称して結節性硬化症関連精神神経障害(TAND)と呼びます。

目の症状

目に現れる症状として、網膜や視神経に発生する過誤腫が挙げられます。結節性硬化症の患者さんのおよそ50%にみられ、無症状に経過することが一般的です。ただし、生じた位置や経過によっては網膜剥離(もうまくはくり)硝子体出血、視力障害などが生じることもあります。

心臓の症状

結節性硬化症では胎児期から乳幼児期にかけて、およそ50%の割合で横紋筋腫と呼ばれる心臓の過誤腫がみられます。無症状に経過し、加齢とともに自然に小さくなることもありますが、時に心筋肥大、不整脈心不全など心臓の異常がみられ、命に関わることもあるため、特に胎児期から乳幼児期にかけては注意が必要です。

腎臓の症状

結節性硬化症では患者さんの80%以上に腎症状が現れるといわれており、主な病変として腎血管筋脂肪腫(AML)が挙げられます。また頻度はまれですが、多発性腎嚢胞(たはつせいじんのうほう)腎細胞がんがみられることもあります。

腎血管筋脂肪腫(AML)は腎臓に生じる過誤腫です。乳幼児に見つかることは少なく、主に思春期以降に現れて少しずつ増大していきます。時に腰痛や腹痛などの自覚症状がみられることもありますが、多くは無症状で進行します。ただし、急激に大きくなったときはこのAMLの破裂による大量出血から命に関わることもあるため、継続的な経過観察が大切です。腫瘍が正常な腎組織を圧迫した場合、腎不全が生じることもあります。多発性腎嚢胞では、腎機能障害や高血圧などの症状がみられることがあります。

その他の症状

そのほか、歯に小さな穴が生じるエナメル小窩(しょうか)や口の中にできる口腔内線維腫(こうくうないせんいしゅ)、女性に多くみられて肺に生じるリンパ脈管筋腫症LAM)、肝臓に生じる血管筋脂肪腫などが挙げられます。

結節性硬化症には多彩な症状があり、年齢によって現れる症状が移り変わることが特徴です。そのため、各年齢に特徴的な症状で発見され、診断に至ることが多いほか、診断された場合には、各年齢で起こりやすい症状や合併症を踏まえて、専門の医療機関で生涯にわたって定期的にフォローを行います。

具体的に、胎児期に確認されることのある症状としては、脳の上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)や心臓の横紋筋腫などの良性の腫瘍が挙げられます。また出生後、新生児期から乳幼児期にかけては、皮膚の白斑、けいれんなどのてんかんの症状がみられることがあります。また学童期、思春期以降には顔面の血管線維腫、皮膚の盛り上がりであるシャグリンパッチや爪囲線維腫、腎臓にみられる腎血管筋脂肪腫(AML)などが生じることがあります。ただし、症状の有無や現れるタイミング、程度については個人差があります。

前述のように、結節性硬化症には多彩な症状があり、年齢とともに現れる症状や注意すべき合併症が異なります。私は小児科の医師なので、子どもの結節性硬化症を診ることが多いのですが、小児期に医療機関を受診するきっかけとなる症状としては、皮膚症状の1つである白斑や中枢神経系症状であるけいれんなどのてんかんによる症状が挙げられます。気になる症状が現れた際は、病院の受診を検討しましょう。

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