りんぱみゃっかんきんしゅしょう

リンパ脈管筋腫症

別名
LAM
最終更新日
2017年04月25日
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2017/04/25
掲載しました。

概要

リンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis : LAM)とは、妊娠可能な年齢の女性に発症することの多い、肺に嚢胞(のうほう)と呼ばれる小さな穴がたくさんできてしまう疾患です。気胸や息切れで発見されることが多いです。LAM細胞と呼ばれる細胞が肺やリンパ節で大量に増殖してしまうことが原因と考えられており、肺以外にも腹部の腫瘍や胸水、腹水などを引き起こすことがあります。

頻度はまれで、人口100万人あたり約1.9~4.5人に発症すると推定されています。ゆっくりと進行することが多いですが、現在のところ病気を治癒させる方法はなく、治療の目的は症状を和らげる、あるいは進行を遅らせることになります。近年薬事承認されたシロリムスという新薬は、肺機能の低下を防ぐ効果が認められており、LAMに対する最も有効な治療法と考えられています。

また、肺病変の進行が早い場合には、肺移植が行われることもあります。平成27年度から指定難病の対象疾患となっています。

原因

結節性硬化症(tuberous sclerosis complex : TSC)の肺病変およびリンパ節病変として発症する場合(TSC-LAMと呼ばれる)と、原因不明の場合(孤発性(こはつせい)LAM)とに分けられます。いずれもTSC遺伝子と呼ばれるがん抑制遺伝子に異常が起こり、異常な平滑筋細胞(LAM細胞)が発生します。このLAM細胞が体内で大量に増殖することで発症すると考えられています。また、LAM細胞がコラーゲンなどを分解する酵素を出して肺に穴をあけるのではないかと考えられています。

症状

初発症状として代表的なものは、気胸と労作時の息切れです。気胸は肺が破れることを指しますが、気胸を起こしたときには胸痛や呼吸困難を伴うことが多いです。気胸を繰り返すことも多く、若い女性で気胸を繰り返す場合にはこの疾患を疑う必要があります。

その他、胸部異常影、咳や血痰、腹腔内(おなかの中)に腫瘍(腎血管筋脂肪腫、リンパ脈管筋腫など)が生じることがあります。乳びと呼ばれるリンパ液が胸水や腹水となって貯留することで呼吸困難や腹部膨満感を生じたり、リンパ液の流れが(とどこお)って、リンパ浮腫と呼ばれる足のむくみが生じたりすることもあります。

検査・診断

胸部CT

初期には、胸部単純レントゲン写真で異常を指摘できないことが多く、胸部CT(とくに高分解能CT)が有用です。CTで、数mm大の嚢胞と呼ばれる小さな穴が肺野全体に多数指摘されることがこの疾患の特徴です。

腹部CT

腹部の腫瘍(腎血管脂肪腫、リンパ脈管筋腫)や腹水を発見することができます。

呼吸機能検査

肺機能が落ちているかどうかを確認します。胸水や腹水がみられた場合には、穿刺(せんし)を行って胸水の性状が乳び様(白色)であることやLAM細胞を確認することができます。確定診断には、肺の組織や腫瘍、胸水・腹水などからLAM細胞が確認される必要があります。

肺病変に対しては、気管支鏡検査や手術、腹部の腫瘍に対してはCTガイド下での針生検や手術などが行われます。しかし、侵襲が大きいことから、現在では、LAM細胞が確認されなくても、特徴的な肺病変に加えてその他のLAMを疑う病変が認められる際には、臨床的に診断されることもあります。

治療

現在のところ、この病気を治癒させる治療法はありません。そのため、症状や合併症に対する治療を行います。呼吸機能検査で肺機能が低下している場合には気管支拡張薬、肺機能の低下が進行して低酸素血症が認められる場合には在宅酸素療法を導入します。

気胸を繰り返す場合には、胸腔(きょうくう)ドレナージや外科的治療が必要な場合があります。乳び胸水や腹水に対しては、食事療法や薬物療法、外科的治療が行われます。肺病変の進行が早い場合には、肺移植の対象となりますが、肺移植を行った後にLAMが再発したという報告もあります。

近年、シロリムスという薬剤がLAMによる肺機能の低下を防ぐ効果をもつことが臨床試験で証明され、薬事承認されました。肺機能の低下だけではなく、胸水などにも効果が認められています。しかし、治療を中止すると病気の進行は元に戻るため、ずっと飲み続ける必要があります。また、口内炎や皮疹などの副作用がみられたり、内服中は妊娠できなかったりするため、治療は主治医とよく相談しながら続けていく必要があります。

また、LAMの発病や進行には女性ホルモンが関わっていると考えられており、女性ホルモンを治療の標的としたホルモン療法が行われることがあります。しかし、治療効果に差があることや治療中は妊娠できなくなるなどの制約があるため、すべての患者さんに用いられるわけではありません。

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