概要
West症候群とは、別名「点頭てんかん」とも呼ばれ、3か月から8か月の乳児に生じることの多い難治性てんかん症候群を指します。
脳の先天的な形成異常や染色体異常など発症の原因はさまざまです。群発する短い筋収縮からなるスパスムと、ヒプスアリスミアが特徴であり、放置すると発達や予後に多大なる影響を及ぼす可能性のある病気です。
原因
West症候群の原因として以下が挙げられます。
- 結節性硬化症
- 脳の先天的な形成異常
- 頭部への外傷
- 染色体異常(ダウン症候群)
- 周産期の異常(胎内感染症や新生児仮死など)
- 先天性代謝疾患(フェニルケトン尿症やメープルシロップ尿症、ミトコンドリア脳症など)
など
約80%の患者さんでは、上記に記載した原因で起こる脳の発生・発育異常が原因となるため症候性West症候群と呼ばれます。一方、20%の患者さんでは、発症までの発達も正常でかつさまざまな検査でも異常を認めないため、潜在性West症候群と呼びます。
West症候群の中には、遺伝子異常を原因として発症するタイプのものも知られています。原因遺伝子としては、CDKL5やARXと呼ばれる遺伝子における異常を挙げることができます。
これら遺伝子は、染色体の中でもX染色体と呼ばれる遺伝子に存在しています。X染色体に存在していることと関連して、本遺伝子に関連した点頭てんかんはX連鎖性劣性と呼ばれる遺伝形式をとります。
症状
West症候群は、発作としてスパズム、脳波異常としてヒプスアリスミア、発達遅滞の3つの特徴のうち2つ以上を満たすものとされています。
生後3~8か月に発症する場合が多く、発症すると外からの刺激への反応が乏しく無表情になったり、おもちゃなどに対する関心が薄くなったりします。
スパズムは四肢や体幹の瞬間的な筋収縮で、その際、頭が前屈することを「点頭」と言い、そのためWest症候群のことを点頭てんかんと呼んだりもします。
スパズムが短時間の間隔で繰り返し生じることを「シリーズ」といい、スパズムがシリーズを形成して出現する、といった言い方をします。頭部が前屈する特徴は座位をとるとわかりやすくなり、スパズムが生じると泣き始める子も多いです。
病気の発症に伴い、その後の発達が著しく障害を受けることになります。また、それまでできていたこと(たとえば、お座りや首のすわりなど)ができなくなることもあります。
West症候群は時間を経た後に、Lennox-Gastaut症候群といった別のタイプのてんかんに移行することもあります。
検査・診断
West症候群を診断するためには、症状の項目で記載したような発作形式を確認することが大切です。
また、West症候群では原因疾患を調べることを目的とした検査も検討されます。具体的には、頭部CTやMRIなどの画像検査、血液検査、脳波検査、尿検査、染色体検査、遺伝子異常の検査などが適宜検討されます。
脳波検査では、発作間欠期所見でヒプスアリスミアがみられますが、全例で観察されるものではありません。
治療
West症候群では、発作をコントロールし、発達を促せることを目的とした治療介入が行われます。具体的には、以下のような治療が適宜検討されます。
- 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)療法
- 抗てんかん薬
- ビタミンB6
- 食事療法(ケトン食治療を含む)
- 手術療法
など
ただし、いずれの治療方法もすべてのWest症候群の患者さんに当てはまる治療方法ではなく、また副作用が懸念されることもあるため留意が必要です。
West症候群はコントロールすることが必ずしも容易ではないため、病状が進行したり、長期に渡ったりすることも少なくありません。
発作の病型観察や脳波検査を続けながら、抗てんかん薬の調整をすることが大切であり、発作型や脳波検査のパターンが変化した場合、Lennox-Gastaut症候群への移行を考慮する必要があります。
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