めーぷるしろっぷにょうしょう

メープルシロップ尿症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

メープルシロップ尿症とは、先天性代謝疾患の一つであり、分岐鎖アミノ酸と呼ばれるバリン・ロイシン・イソロイシンをうまく代謝できないことから発症する病気を指します。現在の日本では出生してから数日経ったのちに、産院で血液検査を行い複数の代謝・内分泌疾患の診断が行われていますが(新生児マススクリーニング)、メープルシロップ尿症もこの対象疾患の一つに含まれています。

マススクリーニングが行われるようになって以降、症状が出現される前に新生児期に診断されることが多いです。国内における発生率は50万人に1人と言われており、2015年までに本検査を通じて100名弱の患者さんが診断されていると報告されています。小児慢性特定疾患、難病指定疾患の一つでもあり、医療費助成を受けることも可能です。また、こうした指定を受けることで、より深く病気への理解が深まることも期待されます。

新生児マススクリーニング対象疾患にはなっていますが、結果が判定する前から症状を呈することもあります。対象疾患の中でもっとも重症度が高い病気であり、死亡率や神経学的な合併症の発症率も高いです。

原因

人が体外から摂取するタンパク質は、さまざまな種類のアミノ酸が含まれています。その一つに分岐鎖アミノ酸と呼ばれるアミノ酸を挙げることができますが、分岐鎖アミノ酸にはバリン・ロイシン・イソロイシンと呼ばれる物質が含まれます。

この分岐鎖アミノ酸を適切に体内で利用するためには、「分枝鎖ケト酸脱水素酵素」と呼ばれる酵素が必須です。しかし、この酵素の生産に関連する遺伝子に異常が生じることでメープルシロップ尿症は発症します。この酵素がうまく産生されなくなってしまうと、分岐鎖アミノ酸の代謝が適切に行われなくなってしまいます。バリン、ロイシン、イソロイシンが過剰に体内で蓄積すると、神経系を中心とした障害を引き起こされることになります。

メープルシロップ尿症の遺伝形式は、「常染色体劣性遺伝」と呼ばれます。この遺伝形式は、典型的には両親が病気の保因者となります。人の細胞には、一種類の遺伝子に対応して2本の遺伝子が存在します。メープルシロップ尿症においては、1本の遺伝子が異常なだけでは病気は発症せず、保因者になります。しかし、両親いずれもが1本の遺伝子異常を抱えている場合、もしお子さんが両親から1本ずつ異常な遺伝子を受け継ぐと、結果として2本ともが異常な遺伝子を有することになり、メープルシロップ尿症を発症することになります。

症状

メープルシロップ尿症の症状は、その名前とは裏腹に非常に重篤かつ急激に発症することがあります。新生児期には何となく元気がない、哺乳力低下、嘔吐などで発症します。症状が進行すると意識障害、けいれん、呼吸困難などが出現し、最悪の場合、死に至ることもあります。症状の進行程度によっては急性期に重篤な神経障害を残すこともあり、身体発達障害、精神運動発達遅滞、けいれんなどを長期的に引き起こすこともあります。

メープルシロップ尿症では新生児期の発作を乗り切った後も、再度分岐鎖アミノ酸が蓄積するような状況になると症状が増悪することもあります。風邪をひいたり、タンパク質を過剰に摂取したりした場合には新生児期同様、神経学的な障害を生じ得ます。

検査・診断

メープルシロップ尿症は、新生児マススクリーニングの対象疾患になっています。検査自体は簡便であり、母乳もしくはミルク摂取が開始された生後数日に、足の裏から血液を採取して検査が行われます。この検査では、血液中に過剰な分岐鎖アミノ酸が存在しないかどうかを検索します。マススクリーングで疑われた際には、血中や尿中のアミノ酸をさらに詳細に検索し、尿中の有機酸分析、分岐鎖ケト酸脱水素酵素活性の測定などが行われます。

治療

メープルシロップ尿症は、マススクリーニングの結果が判明する前の段階で発症することもあります。その場合には、急性期の治療を行うことになり、呼吸循環管理、けいれんに対する対応、血液浄化療法などが行われます。また、ビタミンB1に反応して代謝が改善するタイプのメープルシロップ尿症もあるため、ビタミンB1が投与されることもあります。

急性期発作が落ち着いた後、症状はなくともマススクリーングでメープルシロップ尿症が疑われた際には、発作が生じないような管理を行います。メープルシロップ尿症の神経障害が発生すると、不可逆的な障害を残してしまいます。そのため、治療の主眼は合併症を予防することであり、食事からの分岐鎖アミノ酸の摂取量を抑えることが重要です。年齢に応じた適切な量を摂取しつつ、分岐鎖アミノ酸を除去した特殊ミルクも活用されています。

また、風邪をきっかけに症状が増悪することもあるため、風邪をひかないような対策はもちろん、調子が悪くなった場合には早期の医療機関を受診することも必要です。

分岐鎖アミノ酸の摂取や風邪などに注意を払っていても、急性発作を繰り返すこともあります。症状コントロールの難しい場合には、肝移植も検討されます。

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