インタビュー

てんかんの問診と検査――外来で可能なことと、入院で行うべきこと

てんかんの問診と検査――外来で可能なことと、入院で行うべきこと
中里 信和 先生

東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野教授

中里 信和 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年04月10日です。

てんかんの診断には丁寧な問診と、脳波や神経画像などたくさんの検査が必要となります。3人に2人は外来診療だけで正しい診断が得られますが、残りの1/3の方には入院精査が必要です。残念なことに、日本のてんかん診療は外来偏重です。経過が思わしくないと考えられる場合には、ぜひ専門病院での入院をおすすめします。

てんかんを持つ方は普段は正常ですから、発作の様子を聞き取ることが大切です。ほかの病気と違って、患者さん本人だけではなく、発作を目撃した人からの直接の聞き取りが大切です。

非専門医は、大発作(全身けいれん)の聞き取りだけで問診を終えがちですが、大発作は診断にはさほど役立ちません。てんかん発作の多様性を熟知した専門医によって、発作の前兆となる細かな症状や、発作時の左右差、意識を失わない小さい発作の様子を時間をかけて聞き出してもらう必要があります。目撃者が診察室にいない場合、電話をかけて聞き出すことも必要です。

脳波とは、脳の神経細胞が発する電気信号をとらえたものです。波形をチェックすることで、脳の異常を確認することができます。通常は外来での検査が普通ですが、発作のないときの所見しか確認できません。発作がないときの脳波でも診断に役立つ場合がありますが、1/3の方は十分な情報が得られません。そのため、次に紹介する「長時間ビデオモニタリング脳波検査」がより有効といえます。

数ある検査の中で、てんかんにもっとも有効なのが長時間ビデオ脳波モニタリング検査です。発作の瞬間をビデオで撮影し、同時に脳波で確認する検査であり、入院して行います。発作頻度が高い小児などでは1泊程度でも診断できますが、成人では3泊4日の入院が一般的で、長い場合には1週間の検査になります。その間、トイレ以外はカメラのもとで生活してもらうことになります。

神経画像と呼ばれるCT、MRI、PET、SPECT、磁気で測定する脳磁図(MEG)など多数の検査法があります。てんかんでは、何か1つの検査で原因がはっきり判明することはまれです。必要に応じて外来もしくは入院で、複数の検査を組み合わせてもらう必要があります。

てんかんに合併する精神発達遅滞や高次脳機能障害が疑われる場合には専門の医師や言語聴覚士、心理士の時間をかけた面接によって、神経心理検査や心理社会検査が行われます。特に外科治療が必要な方では、事前にこの検査を受けておくことが必要です。

てんかんで入院した時に検査でおこなうこと
てんかんで入院したときに検査で行うこと

問診や検査が終わったら、医師からの説明を受けます。しばしば「あなたはてんかんです」の一言だけで治療を開始されることがありますが、理想的には、1)どのような発作分類なのか、2)どのようなてんかん病型なのか、3)どのような治療方針でのぞむのか、4)その場合の予後(てんかんが抑制される見込み)の説明があるはずです。

残念ながら、どんなてんかんの専門医でも、てんかんの全てを知っているわけではありません。むしろ患者さん自身が自分のてんかんに対する一番のスペシャリストになるべきです。

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