インタビュー

てんかんを診断する際のポイントとは

てんかんを診断する際のポイントとは
赤松 直樹 先生

福岡山王病院 神経内科、日本神経学会 代議員

赤松 直樹 先生

この記事の最終更新は2016年02月08日です。

突然意識を失ったり倒れたりする病気は、てんかん意外にも多々あります。しかし、てんかんに症状が似ているため、誤診されていることも少なくないというのが現状です。てんかんなのか、あるいはそれ以外の病気なのか、てんかんとの鑑別を行うことはとても重要です。てんかんを診断する際のポイントについて福岡山王病院のてんかん・すいみんセンターの赤松直樹先生にお話を伺いました。

てんかん外来に来院された初診の患者さんで、てんかんと確定診断されるのは全体の6割程度です。残りの4割の患者さんは、てんかん以外の病気と診断されています。その最も代表的なものが「失神」です。朝礼で長い時間立っている時などに倒れる脳貧血のことで、次に心因性発作(ヒステリー、非てんかん性心因性発作)という順に続きます。

イギリスなどでは、てんかんは「3つのFを鑑別しろ」と表現されているほど、他の病気との鑑別が重要となります。この「3つのF」とは、Fits(てんかん発作 )、Faint(失神)、Funny turns(直訳すると変な回転 : 心因性発作・ヒステリー発作のこと)のことで、この3つが意識を失う代表的な病気として知られています。オランダで行われた研究によると、意識消失発作を起こした患者さん350人の診断結果の報告では、失神が57%、てんかんが22%、(非てんかん性)心因性発作が18%と、97%が3つのFで占められていました。

最近も、20分間けいれんが止まらなかったという患者さんが、てんかん重積状態ではないかということで他院から送られてきましたが、脳波に異常はなく、てんかんではありませんでした。はじめてのてんかん発作ということでしたが、20分間もけいれんが続くということは、まず考えにくいのです。もしてんかんであるならば、その場合は脳炎やクモ膜下出血など、非常に重篤なことが脳の中で起きていることになります。

とはいえ、てんかんを専門にしている先生自体が少ないことも現状です。例えば、1日に100人の患者さんを診ている先生でも、60人は脳卒中、30人は認知症、てんかんの患者さんが占める割合は2%程度という状況でてんかんを正確に診断できるかというと、かなり厳しいものだと思われます。

福岡山王病院のてんかん睡眠センターには、他院からも問い合わせがあるのですが、そんな時にお尋ねしていることは1年間に起きた発作の回数です。1回でも発作があるというのであれば、当院に送ってもらうようにしています。

前項ではてんかんと間違いやすい病気の話をしましたが、てんかんの診断にあたっては、病歴を聞くことと脳波検査が基本となります。脳波検査は、てんかん発作が起きていない時にもてんかんに特有のてんかん波という波が現れるため、てんかんの診断時にはとても有用な検査です。

てんかん発作と考えられる病歴とてんかん波がみられれば、てんかんと診断することがほぼ確実にできます。しかし、脳波に関しては、判読に専門的な知識が必要であり、十分にトレーニングを受けた医師でなければ正しい診断はできません。先ほどもお話したように、脳波検査でてんかん波が認められると、てんかんと診断される確率が高まります。間違った判読をしてしまうと誤診ということになりますし、また逆にてんかん波を見逃すと発作を繰り返してしまうことにも繋がってしまいます。

てんかんに関しては、社会的に認知されていないことが多く、誤解や偏見があるのも事実です。患者さん自身も同様の認識をお持ちなので、てんかんと診断されることの影響は大きく、ショックを受けられる方も現状として少なくありません。このような背景から考えても、てんかんの診断には正確性が求められているのです。

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