突然意識を失ったり倒れたりする病気は、てんかん意外にも多々あります。しかし、てんかんに症状が似ているため、誤診されていることも少なくないというのが現状です。てんかんなのか、あるいはそれ以外の病気なのか、てんかんとの鑑別を行うことはとても重要です。てんかんを診断する際のポイントについて福岡山王病院のてんかん・すいみんセンターの赤松直樹先生にお話を伺いました。
てんかん外来に来院された初診の患者さんで、てんかんと確定診断されるのは全体の6割程度です。残りの4割の患者さんは、てんかん以外の病気と診断されています。その最も代表的なものが「失神」です。朝礼で長い時間立っている時などに倒れる脳貧血のことで、次に心因性発作(ヒステリー、非てんかん性心因性発作)という順に続きます。
イギリスなどでは、てんかんは「3つのFを鑑別しろ」と表現されているほど、他の病気との鑑別が重要となります。この「3つのF」とは、Fits(てんかん発作 )、Faint(失神)、Funny turns(直訳すると変な回転 : 心因性発作・ヒステリー発作のこと)のことで、この3つが意識を失う代表的な病気として知られています。オランダで行われた研究によると、意識消失発作を起こした患者さん350人の診断結果の報告では、失神が57%、てんかんが22%、(非てんかん性)心因性発作が18%と、97%が3つのFで占められていました。
最近も、20分間けいれんが止まらなかったという患者さんが、てんかん重積状態ではないかということで他院から送られてきましたが、脳波に異常はなく、てんかんではありませんでした。はじめてのてんかん発作ということでしたが、20分間もけいれんが続くということは、まず考えにくいのです。もしてんかんであるならば、その場合は脳炎やクモ膜下出血など、非常に重篤なことが脳の中で起きていることになります。
とはいえ、てんかんを専門にしている先生自体が少ないことも現状です。例えば、1日に100人の患者さんを診ている先生でも、60人は脳卒中、30人は認知症、てんかんの患者さんが占める割合は2%程度という状況でてんかんを正確に診断できるかというと、かなり厳しいものだと思われます。
福岡山王病院のてんかん睡眠センターには、他院からも問い合わせがあるのですが、そんな時にお尋ねしていることは1年間に起きた発作の回数です。1回でも発作があるというのであれば、当院に送ってもらうようにしています。
前項ではてんかんと間違いやすい病気の話をしましたが、てんかんの診断にあたっては、病歴を聞くことと脳波検査が基本となります。脳波検査は、てんかん発作が起きていない時にもてんかんに特有のてんかん波という波が現れるため、てんかんの診断時にはとても有用な検査です。
てんかん発作と考えられる病歴とてんかん波がみられれば、てんかんと診断することがほぼ確実にできます。しかし、脳波に関しては、判読に専門的な知識が必要であり、十分にトレーニングを受けた医師でなければ正しい診断はできません。先ほどもお話したように、脳波検査でてんかん波が認められると、てんかんと診断される確率が高まります。間違った判読をしてしまうと誤診ということになりますし、また逆にてんかん波を見逃すと発作を繰り返してしまうことにも繋がってしまいます。
てんかんに関しては、社会的に認知されていないことが多く、誤解や偏見があるのも事実です。患者さん自身も同様の認識をお持ちなので、てんかんと診断されることの影響は大きく、ショックを受けられる方も現状として少なくありません。このような背景から考えても、てんかんの診断には正確性が求められているのです。
福岡山王病院 神経内科、日本神経学会 代議員
福岡山王病院 神経内科、日本神経学会 代議員
日本神経学会 神経内科専門医・指導医
高齢化の進む日本において、てんかん治療に尽力し続ける
産業医科大学病院にて、医師としてのキャリアがはじまる。その後、米国クリーブランドクリニック財団病院神経内科にて脳波・てんかん部門のフェローとして研修を受け、帰国後に専門領域としてのてんかん診療を開始。内科的治療でてんかんを治すために努力を重ね、現在は、福岡山王病院の神経内科にて、てんかんを専門に日々診療にあたっている。 超高齢社会に突入した日本において、高齢者てんかんの重要性にも言及。高齢者てんかんの診断と治療に力を注ぐとともに、国際医療福祉大学の教授も務め、若手医師の育成にも尽力。
赤松 直樹 先生の所属医療機関
「てんかん」に関連する病院の紹介記事
特定の医療機関について紹介する情報が掲載されています。
関連の医療相談が29件あります
てんかん患者の仕事について
中学生の頃にてんかんと診断されてから、約15年ほど経ちます。 発作は、完全に意識を失って、強直&痙攣する大発作と、数秒間ぼーっとする欠伸発作があります。 現在、会社員をしています。 仕事はとてもやりがいがあり、楽しんでいます。 しかし、環境としては劣悪です。。日付を超えても働き続ける長時間労働で、給料も低い。ひとりひとりに任される責任も重いです。 それでも、他の仕事にはない楽しさだけで続けてきましたが、ついに先日、家でぶっ倒れてしまいました。5年ぶりの大発作です。 要因としてはやっぱり、疲労やストレス、寝不足があるのだろうとは思います。そして、今の仕事を始めてからずっとそこは気がかりではありました。 会社にてんかんのことは伝えていますし、口では理解もしてくれていますが、やっぱり実感が伴わないとなかなか心からの理解を得られるのは難しいです。 数日前の大発作から、まだ頭痛と気持ち悪さが続く中で、仕事をどうするべきか悩んでいます。 お医者さんならやはり、きちんとした生活リズムの作れる仕事をおすすめされるのでしょうか...?
てんかん発作?
まだ、診察していないのですが、肺に水がたまって、手足のむくみ不眠症、吐き気嘔吐恐怖、どうき、気持ち参るなく夜に泣いてる。
笑いてんかんについて
こんばんは 娘が精神疾患で通院歴8年になります 脳波検査をしたのですが 診断はてんかんではないと言われました 親の私はてんかんです 娘が8年ぐらい笑つたり、泣いたりを繰り返しています 毎日です 笑いてんかんがあると知りました 痙攣はありません 舌を噛んだりします 診断書にはてんかんの疑いと記載されています 病状が悪化しているので病院を変わろうかと考えています 笑いてんかんてあるのでしょうか? できればてんかん専門の病院で診てもらいたいです
外傷性てんかんによる発作
昨年の12月に父親が交通事故にあい頭の手術をしました。 事故にあってすぐ意識がない時にてんかんの発作が起きたと言われました。 そしてその後1年ぐらいが経ち先週の木曜日にてんかんの発作が起きました。 その時の発作を実際自分の目では見たのではなく人から教えて貰ったのですが 腕がピンと上に伸びて首を横に振る動作を1時間していたそうです。 その日病院で入院をして金曜日に退院したのですがその翌日の土曜日にまた同じ発作が起きてまた入院をしたそうです。 医師から脳に異常は無いと言われたそうです。 今は退院して家にいるのですが木曜日に発作が起きたあとから何を喋っているか分からない喋り方をしているそうです。 私が心配なのはこの発作が1時間も起きたことで脳に異常が起き、話せなくなったり痴呆症になってしまうのが心配です。 てんかんの発作で話せなくなったりしますか? 私は父親と離れて暮らしているのでどのように発作がおき今どのような状態なのかは正確にはわからないです。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「てんかん」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。