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てんかん治療の中心、“抗てんかん薬”とは ~服用中の運転や、金銭的な負担への支援についても解説~

てんかん治療の中心、“抗てんかん薬”とは ~服用中の運転や、金銭的な負担への支援についても解説~
中本 英俊 先生

TMGあさか医療センター 脳神経外科 部長・てんかんセンター長

中本 英俊 先生

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てんかんとは、脳の異常により突然の発作症状を繰り返す病気です。てんかん治療ではてんかん発作を起こさないようにすることが重要であり、抗てんかん薬による薬物治療が中心となります。

それでは、抗てんかん薬とはどのような薬で、どのような効果があるのでしょうか。また、治療を続けるうえで注意すべきことはあるのでしょうか。

てんかんとは、“てんかん発作”と呼ばれる発作症状を特徴とする病気です。普段は規則正しいリズムを繰り返している脳の電気信号が乱れ、脳の神経細胞に突発的な興奮が発生することで起こります。

てんかん治療は、このような異常興奮を抑え、発作が起こらない状態にすることを目標とします。治療の中心となるのが抗てんかん薬による薬物治療で、てんかん患者さんのおよそ6~7割は適切な薬物治療によって発作をコントロールすることができるようになります。

抗てんかん薬の効果が不十分な一部の患者は脳の興奮部位を切除する“外科治療”や迷走神経と呼ばれる神経を刺激し続けることで発作を抑える“迷走神経刺激療法”、食事の内容を工夫することで発作が起こりにくい状態にする“食事療法”などを行うこともあります。しかし、いずれの治療法も抗てんかん薬による治療を試みてから行われるものであり、多くの治療法は抗てんかん薬との併用が必要となります。

てんかんの治療で用いられる薬は、抗てんかん薬と呼ばれます。抗てんかん薬は脳の神経細胞の過剰な興奮を抑えたり、電気信号の伝達を抑えたりするはたらきがあり、飲み続けることでてんかん発作が起こらないようにすることができます。

日本ではさまざまな種類の抗てんかん薬が使用でき、薬によって効きやすい発作の特徴(発作型)、効果の持続時間、副作用の特徴が異なっています。

どのような薬を使うかはてんかんの治療ガイドラインや患者さんの生活スタイルを元に、主治医と相談しながら決められます。

主な抗てんかん薬の例として、以下のものがあります。

バルプロ酸ナトリウム

全般発作と呼ばれる“脳全体が興奮するタイプ”のてんかんに対して効果が高く、よく用いられる薬です。

カルバマゼピン

焦点発作と呼ばれる“脳の一部が興奮するタイプの発作に用いられます。他のいろいろな薬剤との相互作用がありますが、採血で血中濃度をみながら効き具合を細かく調整することが可能で、焦点発作に対する効果が高く、現在でもよく用いられています。

エトスクシミド

欠神発作と呼ばれる“突然動作が停止し、意識を消失する発作症状”に有効な薬です。

ゾニサミド

複数の抗てんかん薬を使用する場合に、ほかの薬への影響が少ないといわれており、焦点発作、全般発作どちらにも有効です。

ラモトリギン

さまざまなタイプのてんかん発作に対して用いられます。少量から開始し、増量するのに時間がかかりますが、妊娠・出産を希望する女性や高齢者に対しても安全に使いやすい薬です。

レベチラセタム

主に焦点発作に対して使用されます。他の薬との相互作用がなく、治療用量から開始でき、小児から高齢まで幅広く用いられる薬のうちの1つです。

ラコサミド

主に焦点発作に対して使用されます。レベチラセタムと同様、他の薬との相互作用がない特徴があるのと、新しいナトリウムチャンネル阻害薬の1つとして、使用されることが増えてきています。

ペランパネル

焦点発作や一部の全般発作に用いられます。効果が長く続き、しかも効きはじめるのが速いため、1日1回、寝る直前に内服するという特徴があります。

てんかん薬は、毎日規則正しく服用し続ける必要があります。抗てんかん薬の服用によって発作が治まったように見えても、突然服用をやめると発作が再発することもあるため、自己判断で薬の量を減らしたり、服用を中断したりすることのないようにしましょう。

抗てんかん薬にはさまざまな種類があるため、適した薬が見つかるまでは薬の効果や副作用を見極める必要があります。服用時の症状の変化に気を配りながら、定期的な受診を欠かさないようにしましょう。

抗てんかん薬は長期にわたって飲み続ける必要があるため、薬の選択にあたっては副作用の様子も重要な判断材料となります。副作用は薬の種類によって異なりますが、代表的なものは発疹(ほっしん)、眠気、ふらつき、肝機能障害などがあります。

副作用が強かったり自分のライフスタイルと合わなかったりする場合、薬の種類や量を変えることもあります。薬を飲み始めてから気になる症状がある場合は、我慢せずに医師に相談することが大切です。

てんかん発作が起こると自分の意志ではコントロールができなくなるため、車や機械の運転は難しいと考える人は少なくありません。しかし、てんかんがある人でも、抗てんかん薬を服用することで2年間以上症状がコントロールできている場合は、医師に意見書を書いてもらい、公安委員会で許可を得ると車の運転をすることができます。運転する際は体調の変化に気を配り、抗てんかん薬を確実に服用することが大切です。

抗てんかん薬の内服は長期にわたることが多く、生涯内服する例も少なくありません。経済的負担軽減のため、てんかんの外来診療に関わるもの(薬剤費、診察費、脳波検査費用など)を3割負担から1割負担に軽減(収入額によって上限額設定あり)することができます。指定自立支援医療機関(インターネット等で検索可能)でのみ有効です。

てんかん薬はてんかん治療の中心となる重要な治療であり、脳の電気信号をコントロールして発作を抑えるはたらきがあります。発作が落ち着いた状態を維持するために、毎日規則正しく飲み続けることが大事なので、飲み忘れたり自分の判断で中断したりすることのないようにしましょう。

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