子どものけいれんには、熱性けいれん、憤怒けいれん、てんかん、失神などがあります。けいれんの原因は多岐にわたり、年齢によってその原因が異なります。それぞれの原因に合った適切な治療を行うには、各種検査に基づく正しい診断が重要です。今回は、埼玉県立小児医療センター 神経科 科長の菊池 健二郎先生に、けいれんの原因を突き止めるための検査と治療についてお話を伺いました。
けいれんの原因を探るためには、まず血液検査と画像検査(頭部CT、頭部MRI)、さらに必要に応じて髄液検査や脳波検査を行います。また、失神から起こるけいれんの場合には起立調節試験を行います。脳波検査については即日実施できる医療機関が少ないため、後日あらためて検査するというケースも珍しくありません。当院では、けいれんの頻度が高い場合には長時間脳波検査を行い、けいれんの際に脳波異常を伴うのかどうかを評価する発作時脳波も実施しています。これらの検査でけいれんの原因が多くの場合において判断できるため、神経科として積極的に実施し、適切な治療につなげています。
血液検査では、血糖、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどの電解質、甲状腺ホルモン、乳酸・ピルビン酸などを測定することで代謝性疾患の有無を確認するとともに、肝臓や腎臓が正常に機能しているかどうかも調べます。
主に熱があってけいれん重積状態をきたしている場合に行われる検査です。腰椎穿刺により髄液(脳と脊髄の周囲を循環している体液)を採取し分析して、髄膜炎や脳炎などの中枢神経の感染症がないかどうかを確認します。
頭の中の構造を画像で確認する検査です。けいれんを引き起こしている可能性がある脳の構造的な異常、出血、梗塞、腫瘍などを区別するために行われます。また、頭に強い衝撃を受けたと考えられる頭部外傷の場合にも、CT検査で異常の有無を確認することがあります。
脳波検査は、脳の電気的活動を記録する検査で、異常な電気的放電(脳の過剰な興奮、あるいははたらきの低下)が起こっていないかどうかを調べます。
けいれんが起こる頻度が高い場合には、発作時脳波を記録して、てんかんによるけいれんであるか否かを判別することがあります。さらに、起きているときと寝ているときの脳の活動の変化を記録する目的で長時間脳波記録を行うこともあります。ただし、脳波検査で異常が認められた場合、その結果だけで即てんかんと診断されることは極めてまれです。けいれんの様子なども考慮して判断されますので、この点はご留意いただきたいと思います。
失神から起こるけいれんの場合に行われる検査です。当院でこの検査を行う場合は、15分間横に寝た後に立ち上がってもらい、血圧や心拍数の変化などを確認します。起立直後や長時間起立していると気分が悪くなり失神してしまうといった場合には、この検査で血圧や心拍数の変化が認められることがあり、日常生活における注意点などの指導が行われます。
血液検査では血糖や電解質の異常、また甲状腺ホルモンの異常が発見されることもあります。髄液検査では髄膜炎や脳炎、画像診断(頭部CT、頭部MRI)では頭の中の構造的な異常、出血、梗塞、腫瘍といった病気が区別できることもあります。さらに、脳波検査や起立調節検査では、てんかんであるかどうかの判別ができることがあります。
当院では、びくっとするけいれんを認めるてんかんの1つであるウエスト症候群(点頭てんかん)を疑われて来院される患者さんが多いです。このような場合にも、脳波検査(特に発作時脳波検査)を行い、その結果次第ではてんかんではないと診断しています。
治療は、けいれんを起こす原因によって異なりますが、基本的には原因が分かっている場合はそれに適した治療を行います。そして、けいれんが止まり、その原因が判明した場合には、再発しないよう生活に関する指導を行ったり、原因に適した治療を行ったりします。
けいれんの原因が不明な場合には、けいれんを予防する薬を“とりあえず”出すなどの不確実な治療をするのではなく、けいれんがどの程度の頻度で起こるのか、どのようなときに起こりやすいのか、といったことをしっかり経過観察してから薬を出すことが大切です。私たち医師は、お子さんがけいれんしている状態を実際に目にする機会はほとんどないので、親御さんのお話を元に、今まで述べてきたような病気をある程度頭の中で考えて、必要な検査を組み立てて経過を見ていきます。こうした経過観察そのものが重要な治療となることがあります。けいれんをしたからてんかんかもしれないといって安易に薬が出され、その後年単位で薬を飲み続けていたというケースもあります。当院ではそのようなことがないように留意しています。
けいれんの頻度が高い場合などには、必要に応じて入院して長時間観察することもありますし、原因によってはそのまま入院して治療を行う場合もあります。けいれん重積状態の場合、けいれんは止まっていても意識の回復が悪い場合、1回のけいれん持続時間は短いものの1時間に何度も断続的に起こる場合などでは、入院による経過観察が行われることが多いです。
医療機関に到着したときに、まだけいれんが続いている場合、まずは点滴ルートを確保し、抗けいれん薬を点滴で投与します。その際、低血糖が認められた場合にはブドウ糖を点滴で補充します。点滴ルートが確保できない場合には、歯茎と頬の間に抗けいれん薬(ミダゾラム口腔用液)を投与することもあります。
最初の薬でけいれんが止まらない場合は、さらに薬を追加したり変更したりするほか、原因に応じた特別な治療があれば、その治療を並行して行っていきます。
けいれんが止まっている場合には、慌てて治療をする必要性はなく先ほど述べたような血液検査などの検査を行います。時に、けいれんは止まっているけれど両目が右または左に寄っていたりする非けいれん性発作があり、そのときは治療を行う必要があります。お子さんはけいれんが止まった後に寝てしまうことが多いため、しばらく経過観察してしっかり目が覚めるかどうか、目が覚めて普段と同じ状況かどうかを確認します。けいれんがあったものの、医療機関に到着したときには元気に泣いている、普段と様子が変わらないなどの状況であれば、検査を行うことなく帰宅できる場合もあります。もちろん、けいれんが起きた原因や状況によっては経過観察のために入院となるケースもあり、これが重要な治療になります。
熱性けいれんを起こしたことがあるお子さんに対して、1回のけいれん持続時間が長かったり(15分以上)、いくつかの要件を満たす熱性けいれんを過去に2回以上起こしたことがあったりする場合には、次に発熱した際、ジアゼパム坐薬を予防的に使うよう指導することもあります。かつては熱性けいれんの予防目的に抗てんかん薬が使用されていたこともありますが、最近は行われません。なお、熱性けいれんを繰り返し起こすお子さんは約30%程度です。
てんかん治療には、抗てんかん薬による内科的治療、外科手術、食事療法などがあり、その中でもメインになるのは抗てんかん薬による内科的治療です。
2種類以上の抗てんかん薬を飲んでも、てんかん発作が治まらない場合は、治療抵抗性の難治性てんかんと判断し、外科手術が検討されることもあります。また、手術ができない場合や手術をしたものの十分な効果が得られなかった場合には、食事療法(ケトン食療法)が行われることもあります。
埼玉県立小児医療センター 神経科 科長
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