編集部記事

誰にでも発症し得る脳の病気“てんかん”とは ~適切に治療すれば、多くは健康な人と変わらない生活を送れる~

誰にでも発症し得る脳の病気“てんかん”とは ~適切に治療すれば、多くは健康な人と変わらない生活を送れる~
後藤 知英 先生

神奈川県立こども医療センター 神経内科科長

後藤 知英 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

てんかんは、脳の神経細胞が突発的に興奮することで“てんかん発作”と呼ばれる症状を繰り返す病気です。脳の病気の中では決してまれなものではなく、性別を問わずさまざまな年齢で発症します。

この記事では、てんかんの症状や治療法などの概要について解説します。

てんかんは、てんかん発作と呼ばれる特徴的な発作を繰り返す脳の病気です。

脳の神経細胞は神経回路によってつながっており規則正しい電気信号で連絡しあっていますが、なんらかの原因で電気信号のリズムが乱れ、神経細胞の一部に激しい興奮が生じることでてんかん発作が引き起こされます。

どのようなてんかん発作が起こるかは興奮が生じる脳の部位によって異なり、激しいけいれん、手足の硬直、短時間の意識消失など多種多様です。また、人によっては発作が起こる前に何らかの前兆症状が現れる人もいます。

てんかんは、脳に何らかの障害や傷があって発症する場合(症候性てんかん)と、原因不明の場合(特発性てんかん)があります。

症候性てんかんの原因としては、出生時の脳の損傷、低酸素、脳炎、髄膜炎脳出血脳梗塞などが挙げられます。

特発性てんかんは血液検査や頭部画像検査を行っても明らかな異常が見られず、はっきりとした原因がまだ分かっていないてんかんのことを指します。てんかんは必ずしも子どもに遺伝しないものが多いとは考えられていますが、特発性てんかんの一部で“てんかんの起こりやすさ”は遺伝する可能性が考えられており、親がてんかんを持っていると子どももてんかんを発症しやすくなる可能性があります。

てんかんは、100人あたり1人程度に見られる比較的頻度の高い病気です。発症年齢は3歳以下がもっとも多く、年齢が上がるにつれ発症者数は減少しますが、60歳を超えると脳の病気(脳梗塞や脳出血など)を原因としたてんかんが増えるようになります。

てんかんの症状は、てんかん発作と呼ばれる発作症状です。てんかん発作は、脳の異常な興奮が見られる範囲によって部分発作と全般発作に分けられます。なお、2017年にてんかんの分類が改訂され、これからは部分発作などの用語が使われなくなっていくと思われますが、ここでは今までの用語を使って説明します。

脳の一部分が興奮して起こる発作です。興奮する部位によっては、発作中も意識がはっきりしている場合(単純部分発作)と意識障害を伴う場合(複雑部分発作)があります。具体的な症状は多岐にわたりますが、単純部分発作では運動機能の障害(手足のつっぱり、首や目が勝手に動く)、感覚機能の異常(光が見える、音が聞こえる)、自律神経の異常(吐き気や頭痛が起きる)などが見られます。複雑部分発作では急に動作が止まり、顔をぼーっとさせる、突然意味のない動作を繰り返すようになるなどの症状が見られます。

脳の全体が興奮して起こる発作です。全般発作では、ほとんどの患者で意識の消失が見られます。

突然意識を失い体がこわばる強直発作、手足をがくがくけいれんさせる間代発作、突然意識を失う欠神発作、全身の力が入らなくなる脱力発作などがあります。

てんかん発作はいつどのタイミングで起こるか分からず、てんかん発作が起こると本人は体の自由がきかなくなることも少なくありません。

脳がリラックスしているときや、長時間にわたって集中や緊張してその緊張がほどけたときに発作が起こりやすくなる可能性が考えられています。

てんかんは、日常生活で何らかの発作症状が見られたことをきっかけに受診し、診断されることがほとんどです。発作の様子はてんかんの診断の重要な情報ですが、診察時に発作が現れることはほとんどないため、患者や家族への問診をもとに診断が進められます。

問診の結果、てんかんの疑いが強いと判断された場合、脳波検査、CT・MRI検査、血液検査などの精密検査を行い、てんかんの確定診断を行います。

てんかんの治療は、抗てんかん薬と呼ばれる薬による治療が中心となります。抗てんかん薬は脳の過剰な興奮を抑えるはたらきがあり、飲み続けることでてんかん発作を起こさないようにするために内服します。

抗てんかん薬による治療効果が不十分で、発作を起こす場所が脳の一部分であることが明らかな場合などは、外科手術を検討する場合もあります。外科手術では、発作が起こっている部分を中心として脳の一部を切除します。手術を行うことで発作がなくなったり、抗てんかん薬が効きやすくなったりします。

てんかん治療では、発作が起こる可能性があるうちは抗てんかん薬を飲み続けなければいけません。しかし、人によっては薬物治療によって発作が消失している期間が続けば、薬の数や量を減らしたり服薬を中止したりできることもあります。

てんかんは脳の電気信号の異常によって起こる発作症状を特徴とする病気で、あらゆる年代の人が発症する可能性があります。適切な治療を受けることで健康な人と同じような生活を送ることもできるので、気になる症状がある場合は医療機関を受診するようにしましょう。

*2017年のてんかん分類では、“部分発作”は“焦点起始発作”、“単純部分発作”は“焦点意識保持発作”、“複雑部分発作”は“焦点意識減損発作”のように、一部の用語が変更されています。今後、このような用語が使われるようになっていくものと思われます。

受診について相談する
  • 神奈川県立こども医療センター 神経内科科長

    後藤 知英 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。
この記事は参考になりましたか?
記事内容の修正すべき点を報告
この記事は参考になりましたか?
この記事や、メディカルノートのサイトについてご意見があればお書きください。今後の記事作りの参考にさせていただきます。

なお、こちらで頂いたご意見への返信はおこなっておりません。医療相談をご要望の方はこちらからどうぞ。

    実績のある医師

    周辺でてんかんの実績がある医師

    国立精神・神経医療研究センター 病院外来部 特命副院長/外来部長/てんかんセンター長

    なかがわ えいじ

    内科、外科、精神科、脳神経外科、小児科、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、脳神経内科、児童精神科

    東京都小平市小川東町4丁目1-1

    西武多摩湖線「萩山」南口  病院シャトルバス運行 徒歩7分、JR武蔵野線「新小平」病院シャトルバス運行 徒歩10分

    国立精神・神経医療研究センター病院 脳神経外科 部長

    いわさき まさき

    内科、外科、精神科、脳神経外科、小児科、整形外科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、麻酔科、脳神経内科、児童精神科

    東京都小平市小川東町4丁目1-1

    西武多摩湖線「萩山」南口  病院シャトルバス運行 徒歩7分、JR武蔵野線「新小平」病院シャトルバス運行 徒歩10分

    国立国際医療研究センター 脳神経内科 科長

    あらい のりとし
    新井先生の医療記事

    2

    内科、血液内科、リウマチ科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器内科、呼吸器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、乳腺腫瘍内科、膠原病科

    東京都新宿区戸山1丁目21-1

    都営大江戸線「若松河田」河田口 徒歩5分、東京メトロ東西線「早稲田」2番出口 徒歩15分

    東京医科大学病院 小児科学分野 准教授

    やまなか がく
    山中先生の医療記事

    1

    内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、心療内科、神経内科、脳神経外科、呼吸器内科、呼吸器外科、消化器内科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、矯正歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、循環器内科、糖尿病内科、代謝内科、内分泌内科

    東京都新宿区西新宿6丁目7-1

    東京メトロ丸ノ内線「西新宿」2番出口またはE5出口 徒歩1分、JR山手線「新宿」西口 その他JR複数線、小田急線小田原線、京王電鉄京王線、都営新宿線なども利用可能 徒歩10分

    重症児・者福祉医療施設「ソレイユ」川崎小児科 副施設長、 聖マリアンナ医科大学 小児科 客員教授、東京医科大学小児科 兼任教授、東京都立東大和療育センター 非常勤医師

    すがい けんじ
    須貝先生の医療記事

    2

    内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、外科、心療内科、神経内科、脳神経外科、呼吸器内科、呼吸器外科、消化器内科、消化器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、矯正歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、循環器内科、糖尿病内科、代謝内科、内分泌内科

    東京都新宿区西新宿6丁目7-1

    東京メトロ丸ノ内線「西新宿」2番出口またはE5出口 徒歩1分、JR山手線「新宿」西口 その他JR複数線、小田急線小田原線、京王電鉄京王線、都営新宿線なども利用可能 徒歩10分

    関連記事

  • もっと見る

    関連の医療相談が29件あります

    ※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

    「てんかん」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    「受診について相談する」とは?

    まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
    現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

    • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
    • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。

    メディカルノートをアプリで使おう

    iPhone版

    App Storeからダウンロード"
    Qr iphone

    Android版

    Google PLayで手に入れよう
    Qr android
    Img app