インタビュー

てんかんの助成制度2─社会生活をスムーズにする精神障害者保健福祉手帳

てんかんの助成制度2─社会生活をスムーズにする精神障害者保健福祉手帳
中里 信和 先生

東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野教授

中里 信和 先生

てんかんの助成制度の2つ目として、精神障害者保健福祉手帳があります。てんかんのある人は、発作のレベルに応じて精神障害者保健福祉手帳を取得できます。手帳を持つことによって、社会生活でのさまざまなサポート得られます。

精神障害者保健福祉手帳とは:税金や公共料金の優遇が受けられる

精神障害者保健福祉手帳を取得すると、さまざまな社会サービスを受けることができます。継続的な治療が必要なてんかんの人にとって、税金の優遇や公共料金の割引などは家計の助けになるはずです。受けられるサービスは、1~3級の等級(チャートA、B参照)によって異なります。また、市町村などの地方自治体ごとのサービスなどもありますので、窓口で確認してみてください。

◆全国で受けられるサービス

  • 所得税、住民税、相続税、自動車税などの減免、利子などの非課税
  • NHK受信料の減免
  • 携帯電話の基本使用料金の割引
  • NTTの電話番号案内(104)が無料

など

◆自治体独自のサービス

  • 医療費の助成
  • 交通運賃の割引
  • 公共料金の割引

など

チャート A 発作のタイプと頻度による等級の判定基準*

障害の程度 障害の状態
1級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のAまたはBが月に1回以上あり、かつ常時の介護が必要なもの
2級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のAまたはBが年に2回以上、もしくは、CまたはDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの
3級 十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のAまたはBが年に2回未満、もしくは、CまたはDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの

※上記に加え、下記の「発作が起きていない時の障害の程度」も考慮されます。
単身生活をおこなった場合に、自分で食事をする、規則正しく清潔に暮らす、他人とコミュニケーションをとる、趣味・娯楽に関心を持つなどのことに、誰かの助言や介護が必要な状態(または助言や介護があったほうがより適切におこなえる状態)

チャート B 発作のタイプ*

等級 発作のタイプと頻度
1級程度 ・タイプAまたはBの発作が月に1回以上ある場合
2級程度 ・タイプAまたはBの発作が年に2回以上ある場合
・タイプCまたはDの発作が月に1回以上ある場合
3級程度 ・タイプAまたはBの発作が年に2回未満の場合
・タイプCまたはDの発作が月に1回未満の場合

精神障害者保健福祉手帳の申請:申請後、審査がおこなわれる

てんかんがあり、長期にわたって日常生活に支障が出ている人で、最初に病院を受診した日から6ヶ月以上経過している人であれば申請することができます。

申請は市町村の担当窓口でおこないます。窓口の名前は自治体によって異なりますが、「保健福祉課」などという名前のところが多いです。不明な場合は、「精神障害者保健福祉手帳の申請をしたい」と伝えて窓口を教えてもらいましょう。
下記のものを揃えた上で、窓口に申請をおこないましょう。

  • 申請書

市町村窓口にある、障害者手帳用申請書に記入したもの。医療機関でもらえることもあります。

  • 診断書またはてんかんによる障害年金などの証書の写し

診断書は、初診日から6ヶ月以降に、精神保健指定医が記入したものに限ります。

  • 本人の写真

申請後は都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターで審査がおこなわれます。認められた場合に手帳が交付されます。また、本人の申請が困難な場合には、家族や病院の職員が代行することも可能です。
手続きの方法や申請に必要な書類などは自治体ごとで異なる場合もあるので、窓口に確認してください。

精神障害保健福祉手帳をもつデメリット:不利益はないので申請すべき

精神障害保健福祉手帳をもつことで、精神障害者のレッテルを貼られ、不利益を被るのではないかという不安を抱く人もいるかもしれません。とくに、てんかんの発作はあるものの、精神症状がある方はそう感じるかもしれません。しかし、手帳を持っていることで不利益になることはありません。手帳には病名は記載されません。

むしろ、手帳を取得しておくことで享受できるメリットの方に目を向け、申請をしたほうがよいでしょう。

参考文献

チャート出典:渡辺裕貴(2014)『てんかんのある人が利用できる福祉制度 3つのサポート』

記事1:てんかんの問診と検査─外来で可能なことと、入院で行うべきこと
記事2:てんかんとは─誰でも何歳からでも発症する可能性のある病気
記事3:てんかん3 てんかんの治療のゴール─「発作ゼロ、副作用ゼロ、将来への不安ゼロ」
記事4:てんかん4 てんかんの外科治療─薬で発作が消えない場合は手術を考えよう
記事5:てんかん5 てんかんと運転─基本は「自分のてんかんを正しく知る」こと
記事6:てんかん6 てんかんと妊娠(1)─多くの場合、特別扱いは不要
記事7:てんかん7 てんかんと妊娠(2)─てんかんと妊娠に関する3つの不安─流産のリスクは低い
記事8:てんかん8 てんかんと日常生活1
記事9:てんかん9 てんかんと日常生活2
記事10:てんかん10 てんかんの助成制度1
記事11:てんかん11 てんかんの助成制度2
記事12:てんかん12 てんかんの助成制度3
記事13:てんかん発作の対処法
記事14:てんかん発作の種類。けいれんや意識障害など種類はさまざま
記事15:てんかんと仕事ー発作の有無がポイントになる