てんかんのある女性が妊娠すると赤ちゃんに先天異常が生じるのか、妊娠中に発作が起きたら流産してしまうのか、赤ちゃんにてんかんが遺伝してしまうのか、薬を服用したまま授乳して大丈夫なのか……ここでは、そんな不安を解決します。
てんかんのある女性は、妊娠・出産ができないと思っている方が多いようです。実際のところ医療従事者の間でもさまざまな誤解があり、てんかんを持つ女性の妊娠や授乳を根拠なく禁止してしまっているという現実があります。しかし、よほどの例外がない限り、いくつかの注意点を守ってさえいれば、てんかんでも健康な方と同じように赤ちゃんを生み、育てることが可能です。
健康な妊娠・出産・授乳をするためには、初診時から妊娠に備えて薬の調整などを行うことが重要になります。てんかんがあろうがなかろうが、妊娠や出産はリスクを伴うものです。最終的には「神様が決めること」だと達観し、人事を尽くして明るい未来を見つめましょう。ただし、そのためには「結婚したら考えよう」や、「妊娠を望むときになってから考えよう」では遅すぎます。女性にとって妊娠の可能性は常にあるのですから。
妊娠したとき、子どもにてんかんが遺伝するのかが気になります。極論を言ってしまうと、どんな病気でも“体質”は親から子へと受け継がれやすいのは事実です。てんかんの場合でも“なりやすさ”の遺伝傾向はゼロではないでしょう。ただし、高血圧や糖尿病よりも遺伝の確率は低いと考えてよいのです。特別な遺伝性疾患や合併症などがない限り、基本的には遺伝については神経質になりすぎなくても大丈夫です。
抗てんかん薬を服用していると、赤ちゃんの先天異常のリスクが高まると心配する方もいるでしょう。たしかに、薬の種類によっては先天異常のリスクを高めるものもあります。しかし、そのリスクは薬の種類によって異なるので、服用する薬の種類を調整すればリスクを低く抑えることが可能です。
原発性全般性てんかんの第一選択薬とされているバルプロ酸などは、量が増えると先天異常の赤ちゃんが生まれるリスクが高くなる傾向があります。バルプロ酸は細胞分裂の際に葉酸のはたらきを妨げて、中枢神経系の先天異常をもたらしやすいのです。また、バルプロ酸を服用している母親から生まれた子どもは、知能指数が有意に低下しているという報告もあります。
欧米では、原発性全般性てんかんのある妊娠可能な女性に対しては、少量であってもバルプロ酸を避けるような流れがあります。日本でも1日量1,000mg以上の服用は避けるべきとされていますが、今後は欧米の流れを受けて、少量のバルプロ酸でも妊娠可能な年代の女性にはなるべく服用しない動きが出てくるかもしれません。
トピラマートも、量が多くなると先天異常のリスクが高まるとされています。妊娠可能な女性に対しては、基本的には最初から処方されることのない薬ですが、仮に使用するとしても最小量に抑えることが求められます。
カルバマゼピンとバルプロ酸は、単独でもある程度の先天異常のリスクがありますが、この2剤を併用した場合、先天異常のリスクは急激に高まります。妊娠可能な女性にはこの2剤の併用は禁忌であると考えてよいでしょう。
新薬のラモトリギンとレベチラセタムは、胎児への影響が少ないという報告があります。ラモトリギンは2014年9月に第一選択薬としての使用が認められ、レベチラセタムも2015年4月より第一選択薬として使用できるようになりました。新しい薬ではありますが、発作が抑制できるのであれば従来の薬よりもこの2剤のいずれかを試してみる価値があります。主治医に相談してみましょう。
表にあるように、バランスよく食事を取っていれば、1日に必要な葉酸を補充するには十分だといわれています。しかし抗てんかん薬の中には、葉酸のはたらきを直接じゃましてしまう薬剤(バルプロ酸など)や、胎盤において葉酸の通過障害を引き起こす薬剤(カルバマゼピンなど)があります。つまり、食事から摂取する葉酸だけでは、胎児に十分に葉酸を届けることができない可能性があります。そのため妊娠可能な女性が抗てんかん薬を服用している場合には、妊娠する予定がなくても前もって葉酸を薬として補充することがすすめられています。
日本のガイドラインでは葉酸の補充量は0.4mgとされ、通常の1日の必要量となっています。しかしこの量では胎児に十分には届かない可能性もあります。私は欧米での標準的な補充量である1日量4〜5mgを処方することにしています。
ちなみに葉酸は水溶性のビタミンであり、尿中にすぐ排泄されます。まとめて食べることができませんので、毎日きちんと服用することが必要です。なお、葉酸の取りすぎを心配する方もいるかもしれませんが、てんかんを持つ妊娠可能な女性の場合には、薬として服用することのメリットがはるかに上回ります。
※2017年3月25日(土)に仙台で世界的なてんかん啓発活動「パープルデー」イベントを開催します。
東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野教授
「てんかん」に関連する病院の紹介記事
特定の医療機関について紹介する情報が掲載されています。
関連の医療相談が29件あります
てんかん患者の仕事について
中学生の頃にてんかんと診断されてから、約15年ほど経ちます。 発作は、完全に意識を失って、強直&痙攣する大発作と、数秒間ぼーっとする欠伸発作があります。 現在、会社員をしています。 仕事はとてもやりがいがあり、楽しんでいます。 しかし、環境としては劣悪です。。日付を超えても働き続ける長時間労働で、給料も低い。ひとりひとりに任される責任も重いです。 それでも、他の仕事にはない楽しさだけで続けてきましたが、ついに先日、家でぶっ倒れてしまいました。5年ぶりの大発作です。 要因としてはやっぱり、疲労やストレス、寝不足があるのだろうとは思います。そして、今の仕事を始めてからずっとそこは気がかりではありました。 会社にてんかんのことは伝えていますし、口では理解もしてくれていますが、やっぱり実感が伴わないとなかなか心からの理解を得られるのは難しいです。 数日前の大発作から、まだ頭痛と気持ち悪さが続く中で、仕事をどうするべきか悩んでいます。 お医者さんならやはり、きちんとした生活リズムの作れる仕事をおすすめされるのでしょうか...?
てんかん発作?
まだ、診察していないのですが、肺に水がたまって、手足のむくみ不眠症、吐き気嘔吐恐怖、どうき、気持ち参るなく夜に泣いてる。
笑いてんかんについて
こんばんは 娘が精神疾患で通院歴8年になります 脳波検査をしたのですが 診断はてんかんではないと言われました 親の私はてんかんです 娘が8年ぐらい笑つたり、泣いたりを繰り返しています 毎日です 笑いてんかんがあると知りました 痙攣はありません 舌を噛んだりします 診断書にはてんかんの疑いと記載されています 病状が悪化しているので病院を変わろうかと考えています 笑いてんかんてあるのでしょうか? できればてんかん専門の病院で診てもらいたいです
外傷性てんかんによる発作
昨年の12月に父親が交通事故にあい頭の手術をしました。 事故にあってすぐ意識がない時にてんかんの発作が起きたと言われました。 そしてその後1年ぐらいが経ち先週の木曜日にてんかんの発作が起きました。 その時の発作を実際自分の目では見たのではなく人から教えて貰ったのですが 腕がピンと上に伸びて首を横に振る動作を1時間していたそうです。 その日病院で入院をして金曜日に退院したのですがその翌日の土曜日にまた同じ発作が起きてまた入院をしたそうです。 医師から脳に異常は無いと言われたそうです。 今は退院して家にいるのですが木曜日に発作が起きたあとから何を喋っているか分からない喋り方をしているそうです。 私が心配なのはこの発作が1時間も起きたことで脳に異常が起き、話せなくなったり痴呆症になってしまうのが心配です。 てんかんの発作で話せなくなったりしますか? 私は父親と離れて暮らしているのでどのように発作がおき今どのような状態なのかは正確にはわからないです。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「てんかん」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。