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インタビュー

てんかんと妊娠─多くの場合、特別扱いは不要

てんかんと妊娠─多くの場合、特別扱いは不要
中里 信和 先生

東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野教授

中里 信和 先生

てんかんのある女性が妊娠すると赤ちゃんに奇形が生じるのか、妊娠中に発作が起きたら流産してしまうのか、赤ちゃんにてんかんが遺伝してしまうのか、薬を服用したまま授乳して大丈夫なのか……ここでは、そんな不安を解決します。

てんかんのある女性は、妊娠・出産ができないと思っている人が多いようです。実際のところ医療従事者の間でも様々な誤解があり、てんかんをもつ女性の妊娠や授乳を根拠なく禁止してしまっているという現実があります。しかし、よほどの例外がない限り、いくつかの注意点を守ってさえいれば、てんかんでも健康な人と同じように赤ちゃんを産み、育てることが可能です。

健康な妊娠・出産・授乳をするためには、初診時から妊娠に備えて薬の調整などをおこなうことが重要になります。てんかんがあろうがなかろうが、妊娠や出産はリスクを伴うものです。最終的には「神様が決めること」だと達観し、人事を尽くして明るい未来を見つめましょう。ただし、そのためには「結婚したら考えよう」や、「妊娠を望むときになってから考えよう」では遅過ぎます。女性にとって妊娠の可能性は常にあるのですから。

妊娠したとき、子どもにてんかんが遺伝するのかが気になります。極論を言ってしまうと、どんな病気でも「体質」は親から子へと受け継がれやすいのは事実です。てんかんの場合でも「なりやすさ」の遺伝傾向はゼロではないでしょう。ただし、高血圧糖尿病よりも遺伝の確率は低いと考えてよいのです。特別な遺伝性疾患や合併症などがない限り、基本的には遺伝については神経質になりすぎなくても大丈夫です。

てんかん薬を服用していると、赤ちゃんの奇形のリスクが高まると心配する方もいるでしょう。たしかに、薬の種類によっては奇形のリスクを高めるものもあります。しかし、そのリスクは薬の種類によって異なるので、服用する薬の種類を調整すればリスクを低くおさえることが可能です。

原発性全般性てんかんの第一選択薬とされているバルプロ酸(デパケン®など)は、量が増えると奇形の赤ちゃんが生まれるリスクが高くなる傾向があります。バルプロ酸は細胞分裂の際に葉酸の働きを妨げて、中枢神経系の奇形をもたらしやすいのです。また、バルプロ酸を服用している母親から生まれた子どもは、知能指数が有意に低下しているとい報告もあります。

欧米では、原発性全般性てんかんのある妊娠可能な女性に対しては、少量であってもバルプロ酸を避けるような流れがあります。日本でも1日量1000mg以上の服用は避けるべき、とされていますが、今後は欧米の流れを受けて、少量のバルプロ酸でも妊娠可能な年代の女性にはなるべく服用しない動きが出てくるかもしれません。

トピラマート(トピナ®)も、量が多くなると奇形のリスクが高まるとされています。妊娠可能な女性に対しては、基本的には最初から処方されることのない薬ですが、仮に使用するとしても最小量に抑えることが求められます。

カルバマゼピン(テグレトール®)とバルプロ酸は、単独でもある程度の奇形のリスクがありますが、この2剤を併用した場合、奇形のリスクは急激に高まります。妊娠可能な女性にはこの2剤の併用は禁忌であると考えてよいでしょう。

新薬のラモトリギン(ラミクタール®)とレベチラセタム(イーケプラ®)は、胎児への影響が少ないという報告があります。ラモトリギンは2014年9月に第一選択薬としての仕様が認められ、レベチラセタムも2015年4月より第一選択薬として使用できるようになりました。新しい薬ではありますが、発作が抑制できるのであれば従来の薬よりもこの2剤のいずれかを試してみる価値があります。主治医に相談してみましょう。

表にあるように、バランスよく食事をとっていれば、1日に必要な葉酸を補充するには十分だと言われています。しかし抗てんかん薬の中には、葉酸の働きを直接じゃましてしまう薬剤(バルプロ酸など)や、胎盤において葉酸の通過障害を引き起こす薬剤(カルバマゼピンなど)があります。つまり、食事から摂取する葉酸だけでは、胎児に十分に葉酸を届けることができない可能性があります。そのため妊娠可能な女性が抗てんかん薬を服用している場合には、妊娠する予定がなくても前もって葉酸を薬として補充することが勧められています。

日本のガイドラインでは葉酸の補充量は0.4mgとされ、通常の1日の必要量となっています。しかしこの量では胎児に十分には届かない可能性もあります。私は欧米での標準的な補充量である1日量4〜5mgを処方することにしています。

ちなみに葉酸は水溶性のビタミンであり、尿中にすぐ排泄されます。まとめて食べることができませんので、毎日きちんと服用することが必要です。なお、葉酸のとりすぎを心配する人もいるかもしれませんが、てんかんをもつ妊娠可能な女性の場合には、薬として服用することのメリットがはるかに上回ります。

葉酸を多く含む食品
葉酸を多く含む食品

2017年3月25日(土)に仙台で世界的なてんかん啓発活動「パープルデー」イベントを開催します。

東北大学による世界パープルデーのイベント
東北大学病院てんかんセンターによる世界パープルデーのイベント

 

記事1:てんかんの問診と検査─外来で可能なことと、入院で行うべきこと
記事2:てんかんとは─誰でも何歳からでも発症する可能性のある病気
記事3:てんかん3 てんかんの治療のゴール─「発作ゼロ、副作用ゼロ、将来への不安ゼロ」
記事4:てんかん4 てんかんの外科治療─薬で発作が消えない場合は手術を考えよう
記事5:てんかん5 てんかんと運転─基本は「自分のてんかんを正しく知る」こと
記事6:てんかん6 てんかんと妊娠(1)─多くの場合、特別扱いは不要
記事7:てんかん7 てんかんと妊娠(2)─てんかんと妊娠に関する3つの不安─流産のリスクは低い
記事8:てんかん8 てんかんと日常生活1
記事9:てんかん9 てんかんと日常生活2
記事10:てんかん10 てんかんの助成制度1
記事11:てんかん11 てんかんの助成制度2
記事12:てんかん12 てんかんの助成制度3
記事13:てんかん発作の対処法
記事14:てんかん発作の種類。けいれんや意識障害など種類はさまざま
記事15:てんかんと仕事ー発作の有無がポイントになる

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