インタビュー

てんかん発作の対処法――発作時の対処法を本人と周囲が知っておこう

てんかん発作の対処法――発作時の対処法を本人と周囲が知っておこう
中里 信和 先生

東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野教授

中里 信和 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年05月23日です。

てんかんの最大の症状は、てんかん発作です。患者さん本人だけでなく、周囲も、発作時の対処法を知っておくことが大切です。

てんかん発作が始まると、意識を失ったり、体の自由がきかなくなるため、本人が安全を確保するのは困難です。そのため、なるべく早く、できるだけ安全な場所に身を置くことが大切です。前兆など症状の軽い段階で安全な場所に移動できれば理想ですが、ほんの数秒で意識を失うこともまれではありませんから、まずはその場で最小限の危険回避を考えるほうが現実的です。

てんかん発作の最初の症状は、脳が最初に興奮する部位によってさまざまです。ただし患者さん1人を見ると、てんかん発作の前兆はいつも同じであることがほとんどです。

患者さんによって異なるてんかんの発作の前兆について、以下、代表的なものをご紹介します。患者さんは、発作を目撃した方から詳しく聞いたり、ビデオ脳波モニタリング検査を行っていればその記録を見せてもらって、自分の発作の始まりから終わりまでの様子を、自分自身で詳しく知っておくことが大切です。

てんかん発作の前兆はさまざま
てんかん発作の前兆はさまざま
  • 部位としては、手、足、顔など決まった場所から始まります。
  • 感覚異常としては、ビリビリする、感覚が鈍いなどが多い症状です。
  • 上腹部がムカムカして吐き気を感じることもあります。
  • 見えるものの形状は、点、丸、星などさまざまで、白であることも、色がつく場合もあります。
  • 見える場所は、視野の右半分や、左上など決まっていることが多いです。
  • 景色が歪んで見える場合もあります。
  • 聞こえる方向は、左や右のいずれか一方のこともあります。
  • 聞こえる音は、機械音、人の話し声、音楽などさまざまです。
  • 恐怖感(こわい)、寂寥感(さびしい)、恍惚感、不安感、既視感などさまざまです。
  • 意識はハッキリしているのに、他人の言葉が理解できない、自分で言葉を話せないなどの症状です。
  • 「どう説明すればよいのか分からない」症状もあります。

人がけいれんが起きている状況に遭遇した場合、それがそもそもてんかんかどうなのか分からないこともあります。しかし、てんかんであってもなくても、発作の最中は「力技は不要」と覚えておくとよいでしょう。また、てんかんかどうか不明の場合には救急車を呼びましょう。

いつもと同じてんかん発作と分かっている場合には、周囲は落ち着いて見守ります。安全に発作を終わらせてあげることが第一です。患者団体の合言葉に”Keep calm, it’s just epilepsy.(落ち着いて。これはただのてんかんだから)”というものがあります。周囲は激しいけいれんを伴う発作を見るとつい慌ててしまいがちですが、落ち着いて見守ることが大切なのです。

てんかんの発作のとき、よく「舌を噛み切ってしまうから口にものを詰めるべき」ということが言われますが、これは大きな間違いです。舌を噛んで死んでしまうということはありません。窒息のリスクを高めるだけなので絶対にしないでください。

またてんかん発作時に、周囲が患者さんに力を加えたり、抑えつけるのはやめましょう。発作中、患者さんの筋肉はものすごい勢いで収縮しています。そのため、素人の力では抑えるのは無理なのです。加えて、患者さんは薬の副作用で骨粗鬆症の人が多い傾向があります。無理に押さえつけることによって骨折してしまう可能性もあります。

患者さんの周囲の状況に気を配り、安全を確保するのもよいでしょう。患者さんの近くに尖ったものなど、けがの危険性のあるものはないか、水場、高温ストーブは周りにないか、気をつけてあげましょう。

てんかんの診断の際に、周囲の目撃情報は重要な判断材料になります。患者さんの発作の状況がどのようなものだったかと把握しておくことも、周囲がしてあげられることの1つといえるでしょう。もし余裕があれば、発作の様子を手元のカメラや携帯電話などで動画として記録しておくと、その後の診察の役に立ちます。

2017年3月25日(土)に仙台で世界的なてんかん啓発活動「パープルデー」イベントを開催します。

 

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