インタビュー

てんかんと日常生活2――薬の飲み合わせに注意

てんかんと日常生活2――薬の飲み合わせに注意
中里 信和 先生

東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野教授

中里 信和 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年06月01日です。

てんかん薬を服用している患者さんは、ほかの薬を服用する際に注意が必要な場合があります。今回は、てんかんのある方の薬の飲み合わせについて、その他、体に取り入れる際に注意したいものについてお話しします。

精神安定剤や睡眠導入剤の多くはベンゾジアゼピン系です。これらには抗てんかん作用があるため、専門医の判断がない場合には飲むべきではありません。

日本において、これらの薬の乱用が大きな問題になっています。精神科の専門医でなくても、気軽に処方できてしまうためです。実際、てんかんがなかなか治らないと思っていったら、実はペンゾジアゼピン系の依存症だったというケースがかなりあります。患者さんも隠していることが多く、発見が遅れがちですが、危険です。

ベンゾジアゼピン系の薬剤をお薬を大量に飲んでいる人が、突然服用をやめるとその反動で離脱症状が起き、全身けいれんになることがよくあります。

たしかに睡眠不足はてんかん発作の引き金になるため、ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤の処方を希望する方もいますが、多くの場合、睡眠薬をはむしろ減らして中止に持ち込むほうが、てんかん発作は起きにくくなります。

抗ヒスタミン剤というと耳馴染みがないかもしれませんが、市販の風邪薬や、花粉症などのアレルギーの薬は抗ヒスタミン剤であるケースが多くあります。抗ヒスタミン剤の中でも中枢移行の強いタイプのものは、眠くなることが知られています。これらはヒスタミンの受容体に作用するため、てんかん発作を起きやすくします。

ただし、抗ヒスタミン剤全てが禁止というわけではありません。中枢移行の少ない薬剤であれば、通常は大丈夫ですから、主治医ときちんと相談しましょう。

病院や薬局で薬を処方される際は、「おくすり手帳」を活用するとよいでしょう。おくすり手帳とは、自分が飲んでいる薬の情報を1つにまとめられるもので、病院や薬局で無料でもらえます。

診察の際や、薬の処方を受ける際、医師や薬剤師が飲み合わせの危険がないかを判断する重要な情報源となるので、受診の際は必ず持参するようにしましょう。

アロマオイルの中には、「てんかんの人は使用を避けること」という注意書きがあるものが多いのですが、発作を起こしやすいという医学的エビデンス(医学的な証拠)はありません。これはアロマを販売する会社側の責任回避のためかもしれませんね。

ラベンダーの刺激臭が発作を引き起こすのではないか?という懸念が書かれたサイトはありますが、その程度で発作がもし起きるとすれば、そもそも抗てんかん薬による治療をきちんと考え直すべきではないでしょうか。

グレープフルーツやグレープフルーツジュースを抗てんかん薬と一緒に取ると、抗てんかん薬の吸収速度が速まり、血中濃度が乱高下することが知られています。この作用が起きてしまう代表的な薬としては、カルバマゼピンが挙げられます。

グレープフルーツの中でも、赤いものはその作用が弱く、黄色いものは作用が強いのですが、そこまでは気にしなくても大丈夫です。一切食べてはいけないというわけではなく、薬を飲む直前に食べなければ問題ありません。

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