概要
依存症とは、アルコールや薬物、ギャンブル等に対して心が奪われてしまい、やめることができなくなっている状態を指します。依存症では特定のものに没頭し、家族との関係性や社会生活に支障が生じています。本人はそれが原因であると判っているのに、なかなか行動では辞めることができない状態です。正確には依存症は、「精神に作用する化学物質の摂取や、ある種の快感や高揚感を伴う行為を繰り返し行った結果、それらの刺激を求める耐えがたい欲求が生じ、その刺激を追い求める行為が優勢となり、その刺激がないと不快な精神的・身体的症状を生じる、精神的・身体的・行動的状態」(WHOより)と定義されています。
具体的に病気として捉えられている依存症を考えると、アルコールや薬物等の物質的なものに対して依存するもの、ギャンブルなどの行為・過程に依存するタイプがあります。その一方、一般的な用語として「インターネットゲーム依存症」や「スマホ依存」「シュガーレスガム依存」などが使用されることがありますが、これらは正式な医学用語として認定されている訳ではなく、病気としては現時点では線引きされているものではありません。
どこからが依存症として見なすかどうかは、価値観や技術面での変化、時代の変遷と共に刻一刻と変化します。そのため、社会的背景を考慮しながら依存症を捉えることが重要であると考えられています。
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原因
依存症は、アルコールや薬物、ギャンブル行為などを原因として発症します。こうした物質・行為を通して脳が快楽を得る状態になり、快楽という報酬を得るために際限なく依存することになります。
こうした快楽を得る部位は、脳の中でも「報酬系」と呼ばれる場所が深く関与しています。依存症の方では “報酬”となる特定の刺激を見たり聞いたりすると、脳の中の報酬系が賦活(活性化)されることが知られています。例えば、ギャンブル依存症の状態の人では、パチンコ店の音楽がこの刺激であることがあります。アルコール依存症では居酒屋のちょうちんを目にすることが、そのような刺激となりえます。
また、依存症では自分自身の行動をコントロールすることができなくなっています。自分の意志や行動をコントロールするのは、脳の中でも「前頭葉」と呼ばれる部分が深く関与していますが、依存症の方の一部では、前頭葉の働きが弱まっているのでは、ということが推測されています。
依存症は誰でも陥る可能性がありますが、一定の性格的な傾向が必ずしもある訳ではありません。普段からリスキーな刺激を求める人は、確かにギャンブルに没頭する可能性はあります。しかし、普段はそうした行動パターンを求めていない人であっても、一回の大当たりをきっかけにギャンブル依存症に陥ることもあります。こうした面を考えても、依存症の原因を一つに同定することは困難であると考えられています。
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症状
依存症では、対象となっている物質や行為に対しての渇望が強くなり、衝動的に求めることになります。アルコール依存症であれば朝一からアルコール飲むことも稀ではありませんし、ギャンブル依存症であれば仕事中にもギャンブルをしたいという衝動が生じます。こうした行為が度を過ぎることで、家族の関係性が崩壊したり、仕事に支障を来したりするようになります。
特定のものに強い関心が産まれることから、ほかのものに対しての関心も薄れてきます。「関心の低下」が、大切な家族にさえも及んでしまうことがあるのです。人生における様々な喜びをバランスよく享受できず、それ以外のことがどうでもよくなってしまう状況です。重要な仕事や大切な家族もすべていい加減な扱いになり、自己破産を招くこともありますし、パチンコ中に車中に子どもを置き去りにして大切な子どもの命を失うこともあるのです。
依存症では、離脱症状を呈することも特徴です。摂取や行動が途切れた際に起こる様々な症状を指します。たとえば、発汗・手の震え・不眠・幻視などがそれです。タバコなどの物質だけでなく、ギャンブルなどの行為も、中断を余儀なくされると強い不安やいらいらした気分が生じます。
検査・診断
依存症の診断に際しては、詳細な情報整理を行うことが必要不可欠です。依存症の診断には、アルコールやギャンブルに依存している状態を聴取し、それが社会的な行動に支障を来していることも確認されます。この観点からは、家族や会社との関係性にも注意することが重要です。また、離脱症状の有無も重要な情報です。これらの情報を通して、アルコール依存、ギャンブル依存などを評価します。
なお、アルコール依存症の場合は、肝障害といった身体障害を続発していることもあります。このことを評価するために、血液検査やエコーなどの画像検査が行われることもあります。
治療
依存症の治療では、依存対象となっているものを完全に絶つことが重要です。アルコール依存であれば禁酒、ギャンブル依存であればギャンブルの中止です。ただ、急に辞めることから離脱症状が出現することがありますので、症状に応じて抗不安薬や睡眠薬なども検討します。
依存症では、再度原因となっているものに対して依存する再発のリスクがあります。こうした再発をいかにして抑えるかが重要な観点になります。最も有効性が高い治療として考えられているのは、同じ病気を有する方・有していた方と状況を共有することです。すなわち「同じ問題を抱えた当事者同士が集まる」自助グループでの治療が、もっとも信頼できる方法であるとされています。これは、アルコール依存症に対する断酒会などと同様です。依存症を脱した人、まだ脱することができていない人が、ミーティングの場を持つことが、有効な治療となり、長期的な再発防止につながるのです。
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