インタビュー

薬物依存症の症状―薬物依存症は見た目でも分かる?

薬物依存症の症状―薬物依存症は見た目でも分かる?
松本 俊彦 先生

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部 部長

松本 俊彦 先生

テレビのニュースや週刊誌では、覚せい剤で逮捕される芸能人の話が絶えません。危険ドラッグの問題も大きく報道されたので、薬物依存症の話を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。意外と身近に起きている薬物依存症の症状について、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦先生にお話を伺いました。

Q. 薬物依存症の症状はどのようなものですか?

症状としては、以下の4つがあります。

1. 薬物への強い欲求

薬物の効果が切れると、どうしてもその薬が使いたいという強い気持ちがでてきます。
そして、どうにかその薬を手に入れようと動き回ります。頭の中が薬物のことで一杯になり、全ての物事について、薬物を使用することを最優先にして考えるようになります。

2. セルフコントロールの喪失

薬物を使うのを止めようと何度思っても、やはり使ってしまう状態になり、自分では制御できなくなります。量を減らそうと何度試みても、うまくいきません。本人も問題であると感じてはいても、時と場所をわきまえないような不適切な行動をするようになります。さらに症状が進むと、薬物を買うお金を得るために犯罪行為(恐喝、万引き、強盗など)にいたってしまうこともあります。

3. 薬物使用量の増加

多くの場合、当初の量では満足出来なくなり、使用する薬の量が徐々に増えていきます。薬の量が増えて、効果の持続も短くなり、より多くの薬を手に入れるために行動もエスカレートしてきます。

4. 使用中止による離脱症状

種類にもよりますが、薬を止めようとすると不眠や不安などが出てきます。薬によって出てくる症状も様々で、ヘロインでは下痢や嘔吐などの症状がみられることがあります。これらの症状はきまって、薬物を再び使うと消失します。このために、離脱症状が出ては薬物を使い、という行為を繰り返し、使う量が増えていくという悪循環になります。

以上の薬物依存の症状のうち、1と2は精神依存で3と4は身体依存の徴候と言えます。
薬物依存症と診断するには、1の薬物への強い欲求と2のセルフコントロールの喪失があるかどうか話を聞いて確認します。3や4の身体依存については、これらがなくても薬物依存症であることがあります。

Q. 身体依存と精神依存の違いは何ですか?

身体依存と精神依存の違いは、薬を止めたときに身体に何らかの症状(離脱症状)がでるかどうかです。身体依存の場合は、薬を止めると手が震えたり、頭痛がでたり、ひどい場合はけいれん発作などの離脱症状が起きます。精神依存では、薬を止めると再び使いたいという強い欲求は出るものの、上記のような離脱症状はほとんど起きません。

例えば、たばこに含まれるニコチンは、精神依存を引き起こす作用は強いものの、身体依存はあまり生じないと言われています。たばこをよく吸いニコチン依存症になっている人が禁煙した場合、「吸いたい」という気持ちが強くはなりますが、吸わなくなって手足が震えたりするような、明らかな身体的な症状はほとんど起きません。

Q. 薬物依存症の人に特徴的な行動や見た目などはありますか?

 
薬物依存症は、たとえ専門医が見ても外見からは分りません。特に薬物を長く使っていると、身体が使用している状態でバランスをとっているので、見た目は落ち着いて見えます。患者さんを診察する時、妙に落ち着いて話しているなと感じたときは薬物を使用していたり、逆に落ち着かない様子で変だと思ったら、約束通り薬物を止めていたり、などということもあります。

ご家族や周りの人が気付くのは多くの場合、「行動がおかしい」とか「嘘をつくようになった」という変化です。多くの場合、薬物を得るために嘘の理由でお金が必要だと言ったり、薬物を買いに出かけるために嘘をついて外出したりします。薬物を手に入れて使うことが生活の最優先となるため、約束をすっぽかすことも多くなります。また、薬が切れると身体がだるくなるので、家でぐったり眠ることが多くなる場合もあります。

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