インタビュー

依存症とは(5)―依存症の6つの特徴を紐解く

依存症とは(5)―依存症の6つの特徴を紐解く
村井 俊哉 先生

京都大学医学研究科 脳病態生理学講座 精神医学教室 教授

村井 俊哉 先生

この記事の最終更新は2015年07月10日です。

現代、「依存」という言葉はさまざまなシーンで使われます。しかし、「依存症」となると、これは精神医学における病気です。
依存症の6つの特徴について、日本の精神医学におけるオピニオンリーダーである京都大学精神医学教室教授の村井俊哉先生にお話をお聞きしました。

上記1と2は深く関わっています。たとえば、会議中などに「早くタバコを吸いにいきたい」という衝動が強く我慢できなくなる人は、ニコチンに対する渇望があることになります。これは依存症の基本的な特徴です。ギャンブル依存症でも同様に、仕事や育児の途中に「パチンコがしたくてたまらない」という状態になります。特定の物質や行動に対して、耐え難いほどの欲求が生じ、手に入れるまで衝動を抑えることができません。そして、適量や適度な時間にコントロールすることができなくなります。

摂取や行動が途切れた際に起こる様々な症状を指します。たとえば、発汗・手の震え・不眠・幻視などがそれです。タバコなどの物質だけでなく、ギャンブルなどの行為も、中断を余儀なくされると強い不安やいらいらした気分が生じます。

物質の摂取量が増加する・依存行動が頻繁になることをいいます。物質においてはだんだんと摂取する量が増えていきます。ギャンブルにおいては、同じ程度の金額の賭けでは満足できず、だんだんと大きな金額をかけるようになります。

ギャンブル依存症であれば、ギャンブル以外のことはどうでもよくなります。例えば、麻雀にハマったことのある方であればお分かりいただけると思いますが、麻雀をやっているときは、それ以外のことがどうでもよくなってしまいます。普段であれば喜びをもたらすはずの日常的な刺激に対して無関心になります。誰かが美味しい差し入れを持ってきてくれても、それには無関心で、虚ろな目で麻雀卓に気をとられたまま、ということになってしまいます。

「夫婦がパチンコ店に入っている間に車に残したこどもが脱水状態になり、亡くなってしまう」という事件が報道されたことがあります。これこそがまさに5の「渇望する物質の摂取や行動以外に対する関心の低下」にあたります。

パチンコ依存症に陥っている人は、パチンコで勝っている・負けているということで関心がいっぱいになります。そうすると、自分のこどものことさえ頭から飛んでしまいます。「関心の低下」が、大切な家族にさえも及んでしまうことがあるのです。人生における様々な喜びをバランスよく享受できず、それ以外のことがどうでもよくなってしまう状況です。重要な仕事や大切な家族もすべていい加減な扱いになり、自己破産を招くこともありますし、この夫婦のように大切なこどもの命を失うこともあるのです。

「趣味や嗜好の範囲の飲酒やギャンブルではなく、いよいよアルコール依存症やギャンブル依存症を心配すべきだ」といえる状態にひとつの特徴があると私は考えます。それは「周囲に嘘をつくようになること」です。つまり、どの程度の金額依存しているのかに対して嘘をつくようになるということです。例えば、一日で失ったお金の額、飲酒量などを、家族に対して半分ぐらいで報告するようになります。自身の健康や家計において障害が起き始めると、当然周囲の者は心配することになります。ところが、そのような家族からのプレッシャーがありながら飲酒やギャンブルを継続すること、これは依存症の特徴の一つです。

誰でも寝食を忘れ、何かに熱中することはあるでしょう。そのために学業や仕事などが一時的におろそかになることもあります。しかし多くの場合、それは正常の範囲です。依存症と言えるほどの「よほどのこと」の際に精神医学が介入します。

たとえば、インターネットゲームを例に挙げてみましょう。ゲームを制作している企業は、ユーザーにハマってもらおうと思ってゲームを制作しています。つまり、ユーザーをゲームに依存させようとしているのです。しかし大半のユーザーは、そうしたゲームとほどほどの付き合いをしています。そして、しばらくするとそのゲームに飽きてしまいます。一部の人だけが、病気といわれるレベルでの重症な問題を起こしてしまうのです。

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