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依存症とは(1)―「依存症」という言葉の意味や定義、種類とは?
「依存」はとてもメジャーな日常用語であり、どなたでも一度は耳にしたことがあると思います。もっとも代表的なアルコール依存などに加え、最近ではギャンブル依存、インターネット依存、無料通話アプリ「LI...
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依存症とは(1)―「依存症」という言葉の意味や定義、種類とは?

公開日 2015 年 07 月 09 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

依存症とは(1)―「依存症」という言葉の意味や定義、種類とは?
村井 俊哉 先生

京都大学大学院医学研究科 教授 脳病態生理学講座 精神医学教室

村井 俊哉 先生

「依存」はとてもメジャーな日常用語であり、どなたでも一度は耳にしたことがあると思います。もっとも代表的なアルコール依存などに加え、最近ではギャンブル依存、インターネット依存、無料通話アプリ「LINE」依存などさまざまなシーンで使われます。

しかし、医学における「依存」(以下では「依存症」と呼ぶことにします)となると、これはその一部に限られます。実際、この依存症とはどのような病気なのでしょうか? 依存症の定義やその言葉の持つ意味について、日本の精神医学におけるオピニオンリーダーである京都大学精神医学教室教授の村井俊哉先生にお話をお聞きしました。

依存症の定義・種類

アルコールや薬物などへ「物質依存症」とギャンブルやインターネットゲームなどへの「行為・過程依存症」

まず、用語上の整理をしておきます。日本語の一般用語としての「依存」という言葉がありますが、これはとても広い意味です。私たちの生命は、空気や水に依存していますし、社会生活は他者に依存しています。以下では、こうした広い意味での「依存」ではなく、医学的意味における「依存」を扱います。

医学的用語に限った上でも、まだ用語の問題は複雑です。これまで、依存(dependence)と嗜癖(しへき・addiction)という用語が重なり合いながらもそれぞれ異なる意味で用いられてきました。そのあたりの事情は今回は説明しませんが、以下でこれから私が解説していく現象は、厳密に言うと「嗜癖」の定義のほうに相当します。ただ、「嗜癖」という言葉は日本語では馴染みが薄いこともあり、以下では「嗜癖」を「依存症」という語に置き換えることにします。

ややこしいことで恐縮なのですが、この記事をお読みいただく皆さんには、以下の記事の「依存症」という語が、日常語の「依存」という語で呼ばれているほど広い概念でもなく、また、医学的に狭い意味での依存(dependence)を表わすのでもない、ということを、まずご理解いただければと思います。

その上で、依存症(嗜癖)の定義としては、
「精神に作用する化学物質の摂取や、ある種の快感や高揚感を伴う行為を繰り返し行った結果、それらの刺激を求める耐えがたい欲求が生じ、その刺激を追い求める行為が優勢となり、その刺激がないと不快な精神的・身体的症状を生じる、精神的・身体的・行動的状態」(WHOより)となっています。

●物質依存症

アルコールや薬物など、何らかのかたちで体内に摂取する物質に対する依存症のことを言います。

●行為・過程依存症

ギャンブル依存症・インターネットゲーム依存症などがここに含まれますが、精神医学における診断基準(DSM-5)に含まれているのは、ギャンブル依存症のみです。

このように、依存症は上記の2種類に分けられます。

関係依存(人間関係における依存)は定義上含まれない

そのほかには、たとえば「関係依存」という言葉をお聞きになったことがあるかもしれません。しかし、関係依存までを依存症に含めてしまうと、依存症の範囲が非常に広がってしまうため、少なくとも、DSM-5などの精神医学における診断基準では、そのような病名は存在しません。

医学的病名としての依存症に含まれるのは、もともとは物質依存症だけでした。しかし、ここに行為・過程への依存症が含まれるようになりました。ただし、行為・過程への依存症のすべてが病名になったわけではなく、ギャンブル依存症だけが「ギャンブル障害」という病名で、精神科の診断名として含まれることになったのです。

関係依存についても少し説明しておきます。関係依存とは、家族や友人との対人関係の中で依存してしまうなど、人間関係の中における依存を指します。このような状態はパーソナリティ障害(これはこれで、精神疾患の病名のひとつです)や、精神疾患の診断に至らない程度でのパーソナリティの偏りに伴って生じることがあります。対人関係が不安定になる結果、自暴自棄となったり、自傷などの衝動行為がみられることもあります。

つまり、関係依存という現象自体は存在しますし、精神科でその問題について話し合ったり治療の対象とすることはよくあるわけです。しかし、それは物質依存症とはずいぶん異なっていることから、依存症のひとつとはみなされておらず、「関係依存症」という特別な病名は存在しないのです。

どんな行為でも依存症になるのか

先ほど紹介したWHOの依存症の定義をもう一度思い出してみましょう。「精神に作用する化学物質の摂取や、ある種の快感や高揚感を伴う行為を繰り返し行った結果、それらの刺激を求める耐えがたい欲求が生じ、その刺激を追い求める行為が優勢となり、その刺激がないと不快な精神的・身体的症状を生じる、精神的・身体的・行動的状態」というのが定義でした。

ところが、この定義を広くとると、ある意味際限が無くなってしまうことになります。たとえば、趣味で何かにハマっていることも、広く見ればすべて依存症になってしまうからです。

具体的な例を挙げてみましょう。仕事を熱心にする人に対し、「ワーカホリック」という言い方をします。実際、社会で活躍している多くの人はワーカホリックですが、仕事をすることがその人にとっての唯一の快感・高揚感の源であり、定年退職などによって仕事の機会を失うと、いらいらしたり、様々な症状が現れます。これも依存症といえば依存症、仕事依存症です。しかし、これを病気と考えてしまうと際限がなくなることになります。下手をすると人生そのものがすべて依存症ということになってしまうでしょう。

どのような行為を医学的意味での依存症に含めるかについての議論の中で、境界設定をした結果、病名に含まれることになったのが、物質依存症(ここにはたくさんの物質が含まれますが、物質の名前は特定されており、どんな物質であっても依存症の病名に該当するわけではありません)とギャンブル依存症なのです。

 

マックス・プランク認知神経科学研究所を経て、現在は京都大学脳病態生理学講座、精神医学教室において教授を務める。神経心理学、神経画像学におけるトップランナーであると共に、これからの精神医学のあり方に対しても多数の著書を持つオピニオンリーダー。これからの精神科医は生物学、心理学、社会学を単純に組み合わせるだけでなく個々において最適化していくべきであるという多元主義を提唱している。

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