インタビュー

親しい人が自傷行為(リストカット)をしていたら―家族や友人はどう対応すればよい?

親しい人が自傷行為(リストカット)をしていたら―家族や友人はどう対応すればよい?
松本 俊彦 先生

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 部長、国立研究開発法人 国立...

松本 俊彦 先生

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この記事の最終更新は2015年05月07日です。

あなたの周囲に、リストカットなどの自傷行為をしてしまった人はいませんか? 近しい人が自傷行為をしていると知ったら、どうしますか? 身近な人の自傷行為への対応について、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦先生にお話を伺いました。

最も良くない対応は、自傷行為に驚いて1) 頭ごなしに叱責したり、2) 過度に同情したり、3) 見て見ぬ振りをすることです。これらの行動は本人に対して、負のインパクトとなります。つまり、自分の存在を確認するために、自傷行為をより繰り返すようになってしまうのです。

自傷行為を見たときの対応で最も大事なことは“感情的にならない”ことです。努めて冷静に接し、その傷の程度に応じた手当を丁寧にしてあげる、あるいは、医療的な処置が必要なほど重篤であれば、一緒に病院に行ってあげるなどの対応を落ち着いてしてほしいと思います。

その上で、本人を信頼できる心の問題の専門家へつなぐことが大切です。そのために病院の予約をとってあげたり、場所を確認してあげたりすることで助けてあげるとよいでしょう。また、可能であれば病院まで一緒について行ってあげたり、受診したか確認したりすることも大きなサポートになります。

医療機関を受診したからといって、一度のカウンセリングで自傷行為が「魔法のように」なくなることはまずないと思ってください。辛いときに切ってしまう、というその生き方が問題であり、これには背景にある様々な問題を解決しなくてはなりません。

自傷行為は、特に12~13歳の思春期の入り口くらいでの発症が多いことがわかっています。このような若い人たちが自傷行為に走る背景には、家族の問題など、周囲の大人が関与していることが多くあります。このように自傷行為に家族の問題が関わっている場合など、医療機関だけでは対応しきれないこともあります。

このため、身の回りの親しい人が自傷行為をしていたら、まず精神保健福祉センターか地域の保健所へ相談するのが良いでしょう。家族や生活環境にも介入できる保健所は自傷行為をする人の助けになってくれますので、まずは連絡してみてください。

いずれにしても、粘り強く様々な支援機関とつながっていることによって、少しずつ自傷しないですむ生き方を手に入れることができるようになるでしょう。

記事1:自傷行為とは―自傷行為の種類、リストカットをしてしまう心理と原因
記事2:親しい人が自傷行為(リストカット)をしていたら―家族や友人はどう対応すればよい?
記事3:薬物依存症とはどのような状態?薬物中毒との違いについて
記事4:薬物によって依存症の治りにくさは違う?―大麻、ヘロイン、モルヒネ、コカインなど、薬物依存症を引き起こす薬の種類
記事5:薬物依存症の症状―薬物依存症は見た目でも分かる?
記事6:薬物依存症の治療法―家族、友人はどう対応すればよい?

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