インタビュー

てんかんと仕事――発作よりも「能力」で考える

てんかんと仕事――発作よりも「能力」で考える
神 一敬 先生

東北大学大学院医学系研究科 てんかん分野 准教授

神 一敬 先生

中里 信和 先生

東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野教授

中里 信和 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年04月24日です。

てんかんの人は、一部の例外を除いて、どんな仕事にも就くことができます。職業に対する心配、職場に病気を告知するべきかどうか、てんかんと“仕事”にまつわる不安を解消します。

てんかんの人は、基本的にどんな職業にも就けます。ただ、例外があります。発作で意識を失った際に、本人やほかの人に命の危険が伴うような職業です。

発作が残っている人は運転することができません。発作がなかったとしても、運転を仕事にすることは避けなければなりません。トラックや列車などの特殊車両、飛行機、船舶の運転はできません。
※一般に普通車の運転は2年間発作がなければ許可されます。

とび職、建設作業員は、高所での作業に際して、意識を失う発作が起きた場合に転落の危険性があります。
自衛隊員や消防士も同様に危険ですので、発作が残っている人はなれません。
ただし、自衛隊員や消防士の方が就職後、途中からてんかんを発症された場合には配置転換により業務内容を配慮されることもあります。

銃に関する仕事についても、安全上の問題から制限があります。

以前でしたら、てんかんのある人は医師や美容師などにはなれませんでした。しかし、現在は基本的に国家試験を受けることができ、発作さえ治まれば職に就くことができます。

てんかんがあることを職場に伝えるべきかどうか、迷う人も多いでしょう。理想は、発作の有無にかかわらず職場に伝えることです。事前に告げておいたほうが、万が一発作を起こした場合に、職場の理解が得やすくなります。

残念ながら、それまで病気を告知せず、急に発作が起きた場合、職場からの理解がなければ解雇されるリスクがあるのも事実です。不当な解雇ではありますが、現実にこのようなことがあるのです。もし発作がある場合は、必ず伝えるようにしましょう。

就職先や相談員に伝えるにはコツがあります。「てんかんです」と伝えるのは不十分です。てんかんは多彩な病気で個人差があります。単に「てんかん」の4文字だけでは、相手が強い不安を感じてしまいます。発作が抑制されているのか、あるいは発作が残っているとすれば「どのような発作で、どのように対応して欲しいのか」を具体的に伝えるのです。また、発作以外の障害が合併している場合には、これに対する配慮も伝えておきましょう。こうして具体的に伝えることで、漠然と「てんかん」と伝えることによる過剰な不安を取り除くことができるのです。

実際は、発作が治まっていても職場に伝えている人と伝えていない人は半々くらいです。2~5年以上発作がなければ職場へ告知しなくても問題ないでしょう。

再就職などをする際には、やはりてんかんがある人は健康な人よりは採用されづらい傾向があります。ハローワークなどを利用して、自分に合った働き方を見つけたいものです。

ハローワークの方は多くの場合、てんかんという病名を聞いただけで、精神障害保健福祉手帳を取得することを強くすすめてきます。しかし、てんかんでも発作がなく落ち着いている場合は、精神障害保健福祉手帳は取得できません。

てんかんがあれば必ず手帳を取得できると誤解している方が多いです。手帳を持っていれば障がい者枠として就労が可能ですが、たとえば1年に1回、重症ではない発作があるというような“中間”の方々が就職に苦労しているという現状があります。「軽い発作で頻度も低いのであれば就職先に伝えないでいいのでは」と考えたくなりますが、万が一発作が起きたときのリスクもあります。

「どんな仕事に就くべきか」と患者さんから質問されることがあります。基本的には自分がやりたいと思う仕事に就くのがよいと思いますが、公務員、医療従事者、保育士など、なんらかの資格を持って働ける仕事が理想的ではないでしょうか。

※2018年3月24日(土)に仙台で毎年恒例の世界的なてんかん啓発活動「パープルデー」イベントが開催されました。

東北大学病院てんかんセンターによる世界パープルデーのイベント
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