インタビュー

てんかんと自動車、運転免許――基本は「自分のてんかんを正しく知る」こと

てんかんと自動車、運転免許――基本は「自分のてんかんを正しく知る」こと
中里 信和 先生

東北大学大学院医学系研究科 てんかん学分野教授

中里 信和 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年05月12日です。

てんかんと診断された方が真っ先に心配するのは、自動車運転と事故の問題だといわれています。「運転中に発作が起きて大事故につながったらどうしよう」と心配なのは当然です。しかし「免許を取り上げられたら仕事に就けない」「生活が崩壊してしまう」と心配する方も少なくありません。

自動車運転免許の交付は公安委員会が決定する事項ですが、そのためには医師の診断書が必要となります。しかし、医師の診断書よりも大切なことは「患者さん一人ひとりが自分のてんかんについて正しく理解しているかどうか」です。てんかん患者さんが自動車運転をするためには、何よりもこれが大切です。

てんかんといっても、患者さんごとに発作のタイプは千差万別です。てんかん発作で運転が危険な方でも自分の発作を軽視して「大丈夫だろう」と思ってこっそり運転し、取り返しのつかない事故につながる恐れもあるからです。

患者さんが自分自身のてんかんの専門家になることがもっとも大切です。そうすれば、自ずと危険の少ない生活が送れるようになります。

免許センターから専用の診断書をもらうことが第一歩です。それをかかりつけの医師に記入してもらい、免許センターに提出します。最終的に免許取得を許可するかどうかは、公安委員会が判断します。

発作があることを隠して免許を取得しようとした場合、法律で罰せられます。また、発作があるのに医師の忠告を守らず患者さんが運転し続けている場合、医師は守秘義務を免除され、その事実を公安委員会や警察に通報できる制度も開始されました。自分自身とそれ以外の人たちの安全を守るためにも、患者さんは自分自身のてんかん発作について正しく理解することが求められます。

てんかんの患者さんが運転免許を取得するには、一定の条件があります。

まずは道路交通法によって「運転に支障が出る恐れのある発作が2年以上起きていない」ことが条件となっています(チャート参照)。運転に支障が出ないような小さな発作や睡眠時だけの発作のときはどう考えるのでしょうか。このときは条件が満たせば運転は可能な場合もあります。

チャートのように、運転に支障がないような小さい発作の場合は原則的には1年以上の経過観察で免許取得の許可が下りることになります。しかし、100%支障がないかといえばそうとも限りません。患者さんが自分の発作を正しく理解しているかどうかの問題、それを医師に正しく申告しているかどうかの問題、発作ビデオなどで本当に運転に支障がないかどうかの確認など、いくつかの問題が残されています。このため、公安委員会に提出する診断書の作成に関しては、規程以上に慎重になる医師がいることも理解してください。

ある患者さんの事例を紹介しましょう。無意識症状を呈する発作を繰り返しているため、主治医は運転を許可する診断書は書けないと説明しました。しかし患者さんは、「自分のてんかん発作は軽いから運転には支障ないだろう」と勝手に判断してしまいました。

あるとき、発作の様子を家族がビデオに撮影しました。その様子を初めて見せられた患者さんは大変に驚いて、それ以降は運転をあきらめて治療に専念することを決意しました。

自分の発作を知るための手段としては以下のようなものがあります。

  • 発作の様子を目撃者から詳しく説明してもらう
  • 医師から病状について説明してもらう
  • 長時間ビデオ脳波のモニタリング検査で自分の発作を記録してもらい、それを見せてもらう

てんかんの患者さんの航空機の運転、船舶の運転は禁止されています。以前は、はさみを使う床屋さんや包丁を持つ調理師は禁止されていましたが、最近ではそれは許可されるようになりました。詳細な条件に関しては日本てんかん協会のホームページを参照してください。

また、自転車でも大きな事故につながることがあります。最悪の場合、死亡事故やけがの原因になるので、自転車に乗ることも禁止される場合があります。

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