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小児てんかんとの付き合い方――日常生活で注意したいこと

小児てんかんとの付き合い方――日常生活で注意したいこと
菊池 健二郎 先生

埼玉県立小児医療センター 神経科 科長

菊池 健二郎 先生

目次
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基本的にお子さんがてんかんを持っていても、学校生活などにおいて強い行動制限をする必要はありません。ただし、てんかん発作が起こりやすい状況が分かっている場合にはその状況をなるべく控えるようにするなどの注意は必要です。また、年齢に応じた適切な睡眠や、継続的な内服の徹底といった生活上の留意点を知っておくことが重要です。

今回は埼玉県立小児医療センター 神経科 科長の菊池 健二郎(きくち けんじろう)先生に、発作が起きたときの対応など、お子さんと親御さんが小児てんかんと付き合っていくためのポイントについてお話を伺いました。

基本的に日常生活において、強い行動制限を強いる必要はありません。てんかん発作は突然起こることが多いですが、お子さんによってはある決まった刺激や出来事、状況によって発作が起こる場合があります。そうした刺激や出来事を発作の誘発因子、発作が起こりやすくなる状況を発作の助長因子といいます。そのため、小児てんかんと付き合っていくためのポイントは、発作が起こりやすい状況が分かっている場合には、その状況を控えるようにすることです。たとえば、暗いところで眩しい光が点滅したりするような光刺激によっててんかん発作が出現しやすいお子さんの場合は、テレビ、ゲーム、スマートフォンなどを明るいところで見るような配慮が重要です。

発作の助長因子とされるものには睡眠不足やストレスが挙げられます。ストレスを避けるための具体的な方法は生活環境や学校・保育環境などさまざまな要因があるため、お子さんに合わせた対応が求められると思います。睡眠不足は、単に長い時間寝ればよいということではなく、年齢やお子さんに応じた適切な睡眠時間を確保することが重要です。テスト前に睡眠時間を削って詰め込むような一夜漬けの勉強や、ゲームやスマートフォンの使用により寝る時間が遅くなるなどは避けてほしいです。そのためにも、土日、休日も含めて朝起きる時間はなるべく一定にし、規則正しい生活を送ることが大切になります。

小児てんかん治療では抗てんかん薬の服薬が基本となり、決められた服薬回数を守り、理想は毎日きちんとお薬を飲むことです。たまに飲み忘れがあるかもしれませんが、飲み忘れに気付いた時点で規則正しく内服を再開すればよいと思います。飲み忘れたときの対応について、あらかじめ担当の先生に確認しておくこともよいと思います。

お子さんにてんかん発作がみられた場合には、まずは親御さんや学校・保育の関係者が慌てずに観察することが大切です。子どもを安全なところに寝かせ、顔は横に向けておくことが望ましいです。発作中に舌や唇を噛む可能性を心配して口の中に箸やスプーン、タオルなどを入れることは控えましょう。嘔吐を誘発し、窒息の原因になります。基本的に多くのてんかん発作では数分で発作は止まりますが、当院では5分経過しても発作が止まらない場合、救急車を呼ぶ目安としています。

いつてんかん発作が起こるか分からないお子さんの場合には、基本的にシャワーがすすめられ、浴槽に蓋をすることを説明しています。また、ドラベ症候群と呼ばれる難治性てんかんでは乳幼児期に体温の上昇が原因で発作が起こりやすいため、お風呂やシャワーの温度を低めに設定してもらうこともあります。お子さんと一緒に親御さんが入浴できる場合はよいですが、1人で入浴するような学童期以降のお子さんでは、親御さんなど周囲の人に数分おきにちゃんと起きていることを確認してもらったり、入浴中はお子さんに歌を歌ってもらったりするよう説明することもあります。

入浴時に発作が起きたときは、無理やり浴槽から体を引き上げる必要はありません。水の上に顔を上げた状態で、浴槽の栓を抜いて水が全部なくなるまで待ち、それから引き上げるのがよいと思います。

基本的に学校生活についても特別な行動制限はありませんが、どのような状況で発作が起こりやすいのか、発作が起こったときはどのような対応を行うべきかを、事前に学校へ伝えておく必要があります。

一番相談が多い水泳の授業については、学校長の判断によって水泳の授業参加の有無が決定されている場合があります。“保護者の監視の下で参加する”、“お子さんの帽子の色を変えて参加する”などの対応を求められることがあるようですが、私個人の見解としては、全てのてんかん患者さんにそのような画一的な対応は必要ないと考えています。お子さんの立場になったら、どうして自分だけほかの友達と違う色の帽子を被らなければならないのか理解できない/納得できない場合もありますし、ほかの友達からからかわれるために水泳の授業がある日は学校を休みたがる場合もあるからです。そうはいっても最終的には学校側の判断に委ねることになるため、水泳の授業参加や登山、修学旅行などの参加の決定について学校との事前協議が重要です。

てんかんを持つお子さんの就職に対して不安を持つ親御さんは多いかと思われますが、現在ではてんかんを理由として就職を制限されることはパイロットなどのごく一部の特殊な職業を除きありません。ただし、睡眠不足などが発作の助長因子とされるため、不規則な勤務形態が求められるような職業では事前に担当医の先生と相談することをすすめます。また、高所での作業や大型トラックの運転などもよく相談する必要があります。

限られた時間の外来診療では必要な情報を十分に伝え切れないため、埼玉県立小児医療センターでは親御さんやお子さん、学校・保育の関係者を対象に “てんかん教室”という公開講座を定期的に開催しています。“てんかん教室”では、てんかん、けいれん性疾患の理解を深めるため、外来診療で伝え切れない情報をお伝えしています。たとえば、てんかんの基礎知識やてんかんの治療、てんかん発作の分類、学校生活の過ごし方や注意点、薬の服用方法、てんかん発作時の対応など、その回ごとに違うテーマを扱っています。患者さん目線を心がけ、お子さんと親御さんがてんかんに対する正しい理解を得られるように、専門用語だけでなく分かりやすい言葉を用いて詳しい解説を行い、分かりやすいスライド作成や資料の配布を行っています。

埼玉県立小児医療センター てんかん教室はこちらのページからご覧いただけます。

当院は、小児を専門とする病院であるため、てんかん治療が小児期で終了できずに成人期に移行する必要があるお子さんもいらっしゃいます。てんかんの分野に限りませんが、小児科から成人科へ治療の引き継ぎを行う際の課題もあります。この移行期医療において、当院ではスムーズに成人科への移行ができるよう、“地域連携・相談支援センター”が窓口となり、どのような病院に移行すればよいのか、成人のてんかんを専門とする医師がどこの病院にいらっしゃるかなどの情報提供や相談を行っています。

我が国では、てんかんを持つ患者さんは100人に1人といわれており、てんかんは小児期に発症することが多いため診療する機会が多いです。成人と異なり、日々成長・発達するお子さんに対してより適切な治療を提供することを、当科スタッフ一同心がけています。成人期にてんかんが関係する事件や事故が実際に取り立たされることもあります。小児期に発症したてんかん患者さんが、成人期になってもてんかんのない人と同じような日常生活を送られるように正しい知識を患者さんご本人やご家族に持っていただき、自信を持って自分のやりたいことに取り組んでもらえるよう支援したいと思います。てんかんに関する正しい知識や情報が、患者さんやそのご家族だけでなく一般社会にも広がっていくように、当科では引き続き情報を発信し続けていきたいと思います。

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