インタビュー

子どもがけいれん、ひきつけを起こしたらどう対応する?救急車は呼ぶべき?

子どもがけいれん、ひきつけを起こしたらどう対応する?救急車は呼ぶべき?
後藤 知英 先生

神奈川県立こども医療センター 神経内科科長

後藤 知英 先生

この記事の最終更新は2016年11月30日です。

けいれんは様々な原因によって起こります。人の体は元々けいれんが起こるようになっており、そこに何らかの原因が加わることで、けいれんが引き起こされると考えられます。子どもにけいれんが起こったとしても珍しいことではありません。まずは冷静になり、子どもの安全を確保して様子をみることを意識しましょう。とはいえ、子どもが初めてけいれんを起こした場合、親御さんは慌てるはずです。今回の記事では、子どもがけいれんを起こした際の対応についてご紹介します。神奈川県立こども医療センター 神経内科科長の後藤知英先生にお話しいただきます。

  • 子どもがけいれんを起こし時の対処法
  • 子どものけいれんがすぐに治まっても、初めての場合は医療機関の受診を
  • 過去けいれんを起こした経験があり、原因がわかっている場合はすぐに受診する必要はない

手足を突っ張らせたような状態になったり(強直けいれん)、がくがくと伸ばしたり曲げたりを速い速度で繰り返したり(間代けいれん)します。

こどものけいれんの原因は、大部分は熱性けいれんてんかんによるものです。しかし、まれに重度の脱水などで血液の中の塩分のバランスが崩れたり、血糖が下がったり、頭の中に細菌やウィルスが入って炎症を起こしたりすることでもけいれんを発症します。

子供がけいれんしているイラスト

けいれんが起こった場合にはいくつか注意すべき点があります。親御さんが慌てず冷静に対応するためには、何に気をつければよいかをあらかじめ知っておくことが大事です。

子どもがけいれんを起こしたとき、特に重要な対応は下記の3点です。

1、道路上など危険な場所でけいれんが起こったら、安全な場所に移動させる

2、ベッドや地面の上など、平坦な場所に横向きに寝かせる

3、服を重ね着しているなど窮屈な服装の場合はボタンやベルトを緩めて、呼吸を楽にする

以上の対処を行ったうえで、冷静に子どもの様子をしばらく観察します。

通常、けいれんは5分以内に治まることが大部分ですが、5分経っても治まる様子がなければ直ちに救急車を呼んでください。

かつては、けいれんが起こったときには舌を噛まないように割り箸やタオルなどを噛ませるという対応がなされていました。しかし、舌を噛むことはめったになく、むしろ割りばしで口の中を傷つけてしまったり、呼吸をしづらくさせてしまうので、現在では推奨されていません。

けいれんが起こっている最中は呼吸がしづらくなるため、うまく体に酸素を取り込むことができません。

人は体に酸素を取り込んでエネルギーを産生し、活動しています。短時間の酸素不足であれば問題なく回復しますが、脳に届く酸素が不足した状態が長時間続くと身体や脳に障害が起こる可能性があります。

また、けいれんで急に倒れた場合は頭を打つ危険性がありますし、けいれんが起きた場所がお風呂の湯船の中であればからだの姿勢を保つことができず、溺れてしまう可能性も考えられます。

けいれん重積は「けいれんが長時間持続するか、いったん治まっても意識が十分に戻らず再びけいれんが出現する状態が続くような場合」と定義されています。

けいれんが長時間続くと脳の酸素不足が進んでしまうだけではなく、脳を構成している神経細胞がダメージを受けたり、体温が急激に上がったり、血圧が不安定になるなど、脳や身体に負担がかかり、またけいれんを止める薬の効果が低くなるとされています。

では、どのくらいの時間、けいれんが続くと脳や体によくないかというと、以前は30分以上とされ、これ以上けいれんが続く場合はけいれんを止める薬を点滴で注射して治療を行う必要があるとされていました。

しかし、最近ではさらに短い時間、具体的には5~10分以上けいれんが続くようであれば治療介入するという流れに変わってきています。

今までに子どもがけいれんを起こした経験があり、なおかつ原因がすでにわかっていて、前回と同じパターンのけいれんで、本人の全身状態がよい場合であればすぐに受診する必要はありません。

たとえば子どもがこれまで何度も熱性けいれんを起こしており、今回もやはり熱性けいれんですぐに治まった場合や、てんかんと診断されていて明らかにいつもと同じてんかん発作だと判断できる場合は、いったん自宅で子どもの様子を観察し、後日病院に相談する形でよいでしょう。

一方、初めてけいれんを起こした場合や普段と異なるけいれんが起こった場合は、すぐに受診して、医師の診察を受けることをお勧めします。ときには、精密検査が必要となることもあります。

多くの場合、病院に到着したときにはけいれんが止まっているので、親御さんからは「どのようなけいれんを起こしていたか」を伝えていただけると診断に役立ちます。

大まかで構わないので、けいれんの左右対称性(右手・左手が同じようなけいれんを起こした、片方だけけいれんしたなど)や、けいれんの持続時間を教えてください。

また、けいれん前の子どもの状態も重要なポイントです。以前から発熱していた、かぜをひいていた、食欲がなくぐったりしていた、呼びかけに反応が鈍くなっていた、下痢や胃腸炎などの消化器症状がみられたなど、子どもの体調で気になった点も合わせて医師に伝えると診断がスムーズに進みます。最近、頭を激しくぶつけたことがあるかも教えてください。

 

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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