【インタビュー】
緑内障の治療―症状を悪化させない治療が必要
公開日 2015 年 09 月 23 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日
- 緑内障
- スタージ・ウェーバー症候群


東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学 教授
相原 一 先生
緑内障は完全に治ることはない病気です。しかし、点眼薬などによる治療を行うことによって緑内障を進行させないようにすることはとても大切なことです。
緑内障の診療、研究ともに日本の第一人者である東京大学眼科学教授の相原一先生に、緑内障の治療についてお話をお聞きしました。
緑内障の治療の基本的な考え方
緑内障の治療の基本的な考え方は「症状を悪化させない」ことです。高くなってしまった眼圧は、以下に紹介していく治療により下げていくことができます。これにより、緑内障がさらに進行するのを防止することができます。正常眼圧緑内障においても、眼圧を下げることは有効であるとされています。
ただし、「症状が改善する」わけではありません。一度障害されてしまった視神経は回復しませんし、再生することもできません。また、どんな治療も無効で進行を止められない末期の緑内障も存在します。しかし、緑内障を早期発見できれば視神経の障害が進行する前に治療をすることができます。すると失明に至る危険性が少なくなるのです。
緑内障の治療戦略
緑内障の本質は「眼圧が上がる」ことです。そのため、何よりもまずは「眼圧を下げること」が重要です。そこで、眼圧上昇の原因に対処していくためには何ができるのかを考えていきます。
治療方法としては、薬物療法・レーザー治療・手術の3種類があります。これらを緑内障の種類や重症度に応じて組み合わせていきます。大まかに考えて、最も多い「原発開放隅角緑内障」の場合は薬物療法を用います。そして、「原発閉塞隅角緑内障」と「発達緑内障」では薬物療法では十分に眼圧を下げられないことが多く手術治療も行うことが多いです。また、何かしらの眼の病気が原因で緑内障になっている場合には、原因への対処をするとともに眼圧下降知慮も行っていきます。
(1)薬物療法による治療
多くの場合、点眼薬を用いることが治療の基本となります。8種類以上の点眼薬があり、それぞれに異なった効果があります。これらを、緑内障がどのようなものか(種類・重症度・眼圧の高さ)に応じて組み合わせていきます。1種類だけを用いることもあれば、複数の種類の点眼薬を用いることもあります。
ここで忘れてはならないのは、繰り返しとなりますが、点眼薬は症状を悪化させないために用いるということです。症状が改善しない場合も、やめてしまってはいけません。脱落者が多いというデータもありますので、この点はしっかりと覚えておいてください。
点眼薬には、大きく分けて2つのグループがあります。
- 「房水の排出を促進する」点眼薬の代表として、プロスタグランジン系薬剤というものがあります。有名な「キサラタン®」はこの薬です。
- 「房水の産生を抑制する」点眼薬には、交感神経β阻害薬、炭酸脱水酵素阻害薬、交感神経α2刺激薬などがあります。
基本的な使い方としては、まずプロスタグランジン系薬剤を使い、十分に下がらない場合は切り替えたり、他の薬を併用します。また、内服薬は副作用が強いことが多く、基本的には用いられません。
(2)レーザー治療
レーザー治療は、基本的には「原発閉塞隅角緑内障」に対して行う治療です。原発閉塞隅角緑内障では隅角が狭くなっています。そこで、眼の「虹彩」という部分にレーザーで穴を開けることによって房水の流れを変えていきます。また、線維柱帯にレーザーをあてることで一部の開放隅角緑内障を治療できることがあります。しかし、著しく効果のある画期的な治療というわけではありません。なお、レーザー治療は入院せずに外来で行うことができます。
(3)手術
緑内障の手術は点眼薬やレーザー治療が無効であったときに行います。詳細については「緑内障の手術―手術方法から手術時間まで」をご参照ください。
緑内障 (相原一先生)の連載記事

東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学 教授
相原 一 先生
東京大学医学部卒業後、University of California San Diego、四谷しらと眼科を経て現在は東京大学眼科学で教授を務める。眼科学一般、特に緑内障を専門としており、この分野における診療ならびに研究のトップランナー。治療においては患者さんの生活の質を少しでも向上できるような手術を目指しており、診断においては少しでもムダな治療をしないようにするための慎重かつ注意深い診断をモットーとしている。
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