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緑内障とは 種類から治療方法まで詳しく解説

緑内障とは 種類から治療方法まで詳しく解説
永原 幸 先生

国立国際医療研究センター病院 眼科診療科長

永原 幸 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年09月28日です。

緑内障とは、主に眼圧が上がり視神経が障害されることで起こる病気です。緑内障には複数の種類があり、眼圧上昇の原因によって分類されていますが、眼圧が正常とされる値にもかかわらず視神経が障害される、正常眼圧緑内障という種類もあります。

今回は、緑内障の種類や治療方法について、国立国際医療研究センター病院 眼科診療科長である永原幸先生にお話を伺いました。

緑内障とは、主に眼圧が上昇することにより視神経が障害されることで、視野狭窄や視野欠損を起こし、通常、眼圧を十分に下げることで改善または進行を抑制できる病気です。

眼圧とは、眼球内を流れる房水がつくられる量と眼内から流れ出る量のバランスで決まる圧力のことで、眼の硬さといえます。眼圧は下の図のように、目の中の毛様体という場所で房水という水が常につくられ、線維柱帯を経てシュレム管から目の外の静脈系に流れ出る抵抗があり、両者のバランスで眼圧が一定に保たれています。そのため、つくられる房水の量が増加したり、目から出ていく房水の量が減少したりすると眼圧は上昇し、1日の中で変動することも知られています。

この眼圧の上昇により視神経乳頭(神経線維が90度曲がった部位)の圧迫による障害が進行すると、緑内障を発症することがあります。なお、緑内障の原因は眼圧の上昇による視神経障害だけではありません。中には、眼圧が日本人における正常範囲内(正常上限:20mmHg)におさまっているにもかかわらず、同様に視神経障害が進行する種類のもの(正常眼圧緑内障)もあります。

静脈系…毛細血管から血液が心臓に戻っていく際に通る静脈の総称

視神経とは目と脳をつなぐ神経のことです。脳が物を「見た」と認識するためには、水晶体を通り網膜に映った像の情報が視神経を通じて脳に伝えられる必要があります。そのため、視神経が障害されることによって視覚情報が適切に脳に伝えられないと、脳がその物の像を正確に捉えることができず、視野の狭窄や欠損が起きてしまうのです。

緑内障:見たと認識するまでの道のり
「見た」と認識するまでの道のり

日本緑内障学会が2000年から2002年に実施した調査によると、「40歳以上の日本人における緑内障有病率は5.0%」という結果が出ています。また、年齢が上がるにつれて、緑内障の発症率が高くなることもわかっています。

日本緑内障学会多治見緑内障疫学調査(多治見スタディ)

緑内障には複数の種類があります。緑内障を発症する前にほかの眼疾患、全身疾患、あるいは薬物治療によって眼圧が上昇し発症する続発性緑内障、そういった病気にかかっていない状態で発症する原発緑内障があります。また、これらが複合していることもあり、診断が難しいことがあります。生まれつき眼圧が高い方や幼少期から眼圧が上昇している方は、原発緑内障・続発緑内障ではなく小児緑内障に分類されます。
以下では、原発緑内障の主な種類と症状について説明します。

原発開放隅角緑内障とは、線維柱帯というシュレム管のフィルターになっている部分が詰まり、房水が静脈系に流れにくくなることが原因で眼圧が上昇し発症する緑内障です。

この場合、眼圧上昇は軽度~中等度であることが多く、視野欠損はゆっくりと進行していきます。進行が緩やかなため、自覚症状があまりない患者さんもいます。また、早期発見・早期治療のためには、人間ドックなどの検診を定期的に受けることが重要です。

正常眼圧緑内障

原発開放隅角緑内障には、先に述べた正常眼圧緑内障も含まれます。正常眼圧緑内障は、眼圧の値は日本人における正常範囲内(正常上限:20.0mmHg)であるにもかかわらず、視神経が障害されることで発症します。はっきりとした原因はわかっていませんが、近視や加齢が影響しているといわれています。

原発閉塞隅角緑内障とは、遺伝的な要因や年齢的な変化で隅角が狭くなり、線維柱帯から房水が排出されにくくなることが原因で、眼圧が上昇し発症する緑内障です。加齢に伴うものは水晶体の厚みが増加して、虹彩と水晶体の間を房水が流れにくくなり、虹彩が前方へ押し出され(膨隆する)隅角が狭くなることが原因です。

この場合、徐々にではなく突然発症することがあります。眼圧が急激に上昇し、視力低下、眼痛、頭痛、悪心(吐き気)、嘔吐などの症状が現れます。突然発症する原発閉塞隅角緑内障は、急性緑内障発作といわれています。急性緑内障発作が起こった場合は早急に治療を受けないと失明する危険性があります。

緑内障の診断や進行度を測る主な検査としては、以下のものがあります。

細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査とは、細隙灯というスリット状の光を使いながら、顕微鏡で目を観察する検査です。緑内障の検査では角膜、前房、虹彩、水晶体などを観察します。

眼圧を測定するための方法は複数あります。一般的な眼圧検査としては、目に機械から空気を噴射することで眼圧を測る方法が用いられています。非接触型の検査のため、痛みなどの身体的負担はありません。より正確に眼圧を測定する必要がある場合は、点眼の麻酔薬をつけた後、目に器具を直接接触させて眼圧を測定します。

隅角検査では、特殊なコンタクトレンズを目に接触させて隅角を観察します。接触型の検査のため、点眼の麻酔薬を使用します。主に、緑内障を診断するための検査として実施します。

眼底検査では、視神経の障害度を測定し、主に緑内障の病期を調べます。正常眼圧緑内障の場合、眼底検査により緑内障を発見することも少なくなくありません。コンピュータ眼底3次元画像解析法を用いて網膜神経線維層の厚みを測定して、診断の補助に使用する場合もあります。

視野検査とは、視野が欠けている範囲を測る検査です。緑内障の病期の診断や進行の判定に重要な検査です。

2018年現在、エビデンスに基づいた緑内障の進行を遅らせる方法は、眼圧を下げることです。緑内障の治療法には、薬物治療、レーザー治療、手術の3種類があり、どの治療法も眼圧を下げることを目的として実施します。

多くの緑内障の場合、基本の治療は薬物療法です。2018年時点で使用されている緑内障の点眼薬は10種類以上あり、緑内障の種類などによって選択します。緑内障の進行度合いによっては、複数の種類の点眼薬を併用することもあります。また、点眼薬の付け忘れは緑内障を進行させる大きな要因となるため、毎日欠かさずにつけるようにしてください。加えて、眼圧を下げる効果のある飲み薬を服用することもあります。

薬物治療で眼圧を下げることが難しい患者さんに対しては、病態や病期に応じてレーザー治療を実施することがあります。緑内障のレーザー治療には、主に「レーザー線維柱帯形成術」と「レーザー虹彩切開術」の2種類が実施されています。緑内障の種類に合わせて選択します。

レーザー線維柱帯形成術

レーザー線維柱帯形成術とは、線維柱帯にレーザーを照射することで房水の排出を促す治療法です。線維柱帯が詰まることで眼圧が上昇する、原発開放隅角緑内障などの患者さんが対象です。

レーザー虹彩切開術

レーザー虹彩切開術とは、虹彩にレーザーで穴を開け隅角の閉塞を解消する治療法です。隅角が閉塞することで眼圧が上昇する原発閉塞隅角緑内障などの患者さんが対象です。

薬物療法やレーザー治療で症状の改善が期待できない、または効果が少なく眼圧を十分に下げることができなかった場合、手術の適応となります。それぞれの患者さんの状態に適した術式を選択します。原発開放隅角緑内障の患者さんに対しては、房水が静脈系に流れ出るときに抵抗を起こしている部分(線維柱帯)を切開してシュレム管への流れを再建する流出路再建術を行います。また、原発閉塞隅角緑内障の患者さんに対しては虹彩を切開する虹彩切開術や、白内障がある場合は水晶体再建術などが実施されています。

原発開放隅角緑内障の場合、ゆっくりと視力が低下していくことが多いため、自覚症状があまりないことがあります。そのため、緑内障であることに気がつかないまま生活し、自覚症状が現れてから病院に来られる患者さんもいます。しかし、自覚症状が現れる頃には病気が進行している場合が多く、失明のリスクも高くなっています。

近年、緑内障の診断と治療の技術は進歩しており、早期発見・早期治療によって失明という危険性を減らすことができるようになっています。定期的に人間ドックや眼科検診を受け、目の様子を確認するようにしてください。

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