スタージ・ウェーバー症候群とは、皮膚や神経に症状が現れる先天性疾患の一つです。スタージ・ウェーバー症候群を発症すると、頭部や顔面の血管腫(赤あざ)、脳軟膜血管腫(のうなんまくけっかんしゅ:細かな血管が脳の表面を覆う状態)に伴うてんかんや発達障害、緑内障(視神経の障害によって視野が狭くなったり見えにくくなったりする状態)などの症状が現れるそうです。
順天堂大学医学部附属練馬病院 小児科 教授の新島 新一先生は、小児神経学を専門の一つとし、スタージ・ウェーバー症候群の診療や研究に携わっていらっしゃいます。
今回は、同病院の新島 新一先生にスタージ・ウェーバー症候群の原因や症状についてお話しいただきました。
スタージ・ウェーバー症候群とは、皮膚や神経に症状が現れる、先天性の神経皮膚症候群の一つです。スタージ・ウェーバー症候群になると、生まれつき、細かな血管が脳の表面を覆う脳軟膜血管腫、頭部や顔面の血管腫(赤あざ)、緑内障(視神経の障害によって視野が狭くなったり見えにくくなったりする状態)などが現れます。
疾患が進行すると、脳軟膜血管腫に伴い、けいれんなどの症状が現れるてんかんや、発達障害などが認められています。
スタージ・ウェーバー症候群の発症の頻度は、5〜10万人に1人程度であるといわれています。
スタージ・ウェーバー症候群の多くは、3歳までに発症するといわれており、発症年齢の平均は生後8か月といわれています[注1]。また、男女ともに発症する可能性がある疾患であることがわかっています。
スタージ・ウェーバー症候群の原因は、胎児期の原始静脈叢の退縮が悪いことだといわれていますが、解明はされていません。しかし、近年、遺伝子異常(GNAQ遺伝子変異)が原因の一つであることがわかっています。
原因の一つが遺伝子というと、疾患自体が遺伝するように思われる方もいるかもしれません。しかし、スタージ・ウェーバー症候群は親から子どもへ代々受け継がれる遺伝性の疾患ではなく、突発的に発生する点が特徴でしょう。
スタージ・ウェーバー症候群の症状は、以下のように、主に皮膚、脳、目に現れます。しかし、必ずしもこれらすべての症状が現れるわけではなく、いずれかが欠けるケースもあります。
スタージ・ウェーバー症候群の患者さんに現れる典型的な症状の一つは、顔面や頭部の血管腫(赤あざ)です。
なかでも、顔面や頭部の左右どちらか片方に血管腫が現れるケースがもっとも多いでしょう。実際に、血管腫が現れた場所を示したデータでは、75%の患者さんに顔面や頭部の左右どちらか片方の血管腫が認められています。一方、左右両方に血管腫が現れた患者さんは15%程です。また、10%の患者さんには顔面の血管腫が認められていません[注1]。
さらに、顔面や頭部だけではなく、血管腫が全身にわたり現れるケースもあります。
スタージ・ウェーバー症候群では、脳を細かい血管が覆う脳軟膜血管腫に伴い、さまざまな症状が現れます。健康な脳では、細い血管が速いスピードで流れています。一方、脳軟膜血管腫があると、血流がうっ滞(停滞してしまうこと)し、組織に酸素を運ぶことができなくなってしまいます。
このように、脳の血液循環が悪化することで、けいれん症状などが現れる難治性てんかんや発達障害、脳の石灰化、脳梗塞などを引き起こすことがわかっています。
なかでも特に多くの患者さんにみられる症状は、てんかんでしょう。また、発達障害や精神遅滞は半分以上の患者さんに現れるといわれています。
さらに、脳軟膜血管腫によって脳の血液循環が悪化することで、脳梗塞を発症するケースもあるため、脳軟膜血管腫が見つかった場合には早期治療が重要になります。
スタージ・ウェーバー症候群の約半数の患者さんには、先天性緑内障が現れるといわれています[注1]。緑内障になると、視野が狭くなったり、見えづらくなったりといった症状が現れるでしょう。
注1:新島新一, 他. 小児内科. 2007;39:262-266.
スタージ・ウェーバー症候群の進行は、患者さんによって大きく異なります。進行のスピードが遅いケースでは、症状がほとんど現れず治療をする必要のない方もいらっしゃいます。
しかし、進行が早いケースでは、けいれんを繰り返してしまったり、早期に発達障害が現れるといった方も少なくありません。スタージ・ウェーバー症候群は、早期治療によって重症化を食いとめることが可能な疾患です。記事2では、スタージ・ウェーバー症候群の診断から治療までお話ししたいと思います。
スタージ・ウェーバー症候群の診断と治療に関しては、記事2『早期治療によって重症化を防ぐ-スタージ・ウェーバー症候群の診断と治療』をご覧ください。
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