概要
スタージ・ウェーバー症候群とは、脳内の軟膜血管腫、顔面のポートワイン斑、眼の緑内障を三徴とする先天性の病気で、神経皮膚症候群の一つです。また、この病気では、難治性てんかん、精神発達遅滞、運動麻痺などが問題となります。スタージ・ウェーバー症候群は日本においては難病指定を受けている病気のひとつです。年間10~20人程度が発症すると報告されており、日本にはおよそ1,000人の患者さんがいると考えられています。
スタージ・ウェーバー症候群の根本的な治療方法はなく、症状に応じた対症療法が中心となります。発達障害やてんかん、緑内障など出現する病状に対するアプローチが求められ、継続的に治療等を行うことが必要です。
原因
スタージ・ウェーバー症候群の原因は、胎生初期の原始静脈叢の退縮不全と考えられています。しかし、その原因はいまだに不明です。近年、GNAQ遺伝子の変異が報告されたために、何らかの遺伝子異常が関係しているだろうと推定されています。
しかし、GNAQ遺伝子の変異は、軟膜血管腫やポートワイン斑の発生に関連するものと考えられており、スタージ・ウェーバー症候群の特徴である皮質静脈の形成不全を説明し得るものではありません。そのため、スタージ・ウェーバー症候群の遺伝性に関してはいまだに不明です。
症状
スタージ・ウェーバー症候群では、脳、皮膚、眼における血管異常に関連した症状が出現します。
脳に関連した症状
脳の表面を覆う血管に異常が生じることから「軟膜血管腫」が発生します。また、脳の血液循環に支障が生じることとなり、発達障害やてんかん、運動麻痺、片頭痛などを認めます。
てんかんの様相はさまざまであり、明らかにけいれんと判断できるものもあれば、意識がハッキリせずぼーっとしているように見えるだけで、けいれんがはっきりしないこともあります。てんかんをコントロールすることは、発達を考慮したうえでとても重要であるため、見た目ではっきりしないけいれんであっても看過してはいけません。
皮膚に関連した症状
出生時から「ポートワイン母斑」がみられます。典型的には薄いピンクから赤紫色の色調をしており、前頭部や側頭部、まぶた周辺に広範囲に認めます。この病変そのものが身体的な健康障害をもたらすわけではありませんが、美容の観点からの問題を引き起こすことになります。
眼に関連した症状
緑内障が代表的です。緑内障では、眼圧が上昇することから、両目のサイズに違いが生じます。また、緑内障を発症すると、視野障害や視力低下にもつながります。
検査・診断
スタージ・ウェーバー症候群は、出生時の顔面における皮膚所見をもとに疑われます。頭蓋内病変を評価するために、MRIやCT、SPECT、PETといった画像検査を参考にします。
経過中に、てんかんの発症に注意することは重要であり、脳波検査が必須となります。さらに、緑内障が発症するリスクも伴うため、眼圧測定や視野検査、視力検査を行うことも重要になります。
治療
スタージ・ウェーバー症候群の根本的な治療方法は存在せず、出現する症状に応じた対症療法が中心となります。
経過中、重要なもののひとつは、てんかんのコントロールであり、良好な発達を促すためにも治療が必要です。具体的には、発作のタイプに応じて抗てんかん薬が使用されることになります。抗てんかん薬による治療の効果には個人差があり、内服薬が奏功しないこともあります。この場合には、手術など、原因となっている病変部位に対するアプローチが検討されます。
緑内障に対しては、眼圧を下げる点眼薬を用います。点眼薬による治療の効果が不十分な場合には、手術が検討されます。 顔面のポートワイン母斑に対しては、レーザー治療が行われます。
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