インタビュー

緑内障の原因―眼圧が上がる理由とは

緑内障の原因―眼圧が上がる理由とは
相原 一 先生

東京大学大学院医学系研究科外科学専攻眼科学 教授

相原 一 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年09月20日です。

緑内障の原因は「眼圧が上がる」ことですが、眼圧が上がる理由にはいくつかの原因があります。緑内障の診療、研究ともに日本の第一人者である東京大学眼科学教授の相原一先生に、緑内障の原因についてお話をお聞きしました。

緑内障の原因には、眼圧が大きく関係しています。眼圧が上がることにより視神経に異常を来すのです。この記事では、なぜ眼圧が上がるのか、眼圧が上がるとなぜ視神経が障害されるのかについて説明していきます。やや専門的な内容となりますが、「眼圧」「房水」「視神経」というキーワードに注意してお読みください。

眼球と眼圧
眼球と眼圧

眼球の内部は房水(ぼうすい)という液体により満たされています。房水は圧力を維持して眼の形状を保つために重要です。房水は毛様体(もうようたい)で作られ、シュレム管へと排出されます。この房水により眼圧の強さが決まります。

通常、眼圧は一定に保たれています。しかし、緑内障の場合は房水の流れが悪くなることで眼圧が上がります。眼の構造上、最も弱くて圧力の影響を受けやすい視神経を圧迫することにより、障害してしまうのです。以前は房水の産生過多(房水が作られすぎてしまうこと)も眼圧を上げる理由の1つとされていましたが、今ではその可能性は低いと考えられています。

それでは、眼圧が上がる理由について詳しく説明していきます。
まず、眼の構造上眼圧が上がりやすい人がいます。次の記事で説明する「原発閉塞隅角緑内障」のケースです。これは、眼の「隅角」という部分(上図参照)が閉塞したり狭くなったりすることにより起こります。また、他の病気の影響や薬の副作用で眼圧が上がる続発緑内障の人もいます。炎症性疾患や他の目の疾患が背景にあるケースや、ステロイドの副作用で眼圧が上がるケースがその代表です。

しかし、これらが原因となる緑内障の割合は全体の2割程度で、もっとも多いのは後に述べる「正常眼圧緑内障」も含めた「原発開放隅角緑内障」です。これは、眼の見た目の構造上は隅角に大きな異常がないにもかかわらず、眼圧が上がってしまうというものです。原発開放隅角緑内障においては眼圧が上がるのは、房水の流れが悪くなることにより起こります。

実は、房水動態(房水がどのように産生し、どのように吸収され循環しているのか)はまだ完全には解明されていません。それのため、緑内障のメカニズムには不明な点も多くなっています。現在使われている薬に関しては、「房水動態への影響は完全には解明されていないものの、少なくとも眼圧を下げる効果があることは分かっている」という理由で用いられています。

眼圧が高くなったあとには視神経が障害されます。少し複雑な内容となりますが、このメカニズムを説明します。眼圧が上がった影響で乳頭篩状板が変形し、視神経乳頭(図を参照)の軸索(神経の線維のこと)を障害するのではないかといわれています。これは簡単に言うと「眼圧が高くなり、圧迫されて変形してしまった視神経が痛んでしまう」と理解して下さい。

視神経乳頭が障害されやすいかどうかという点には、個人差があります。同じ眼圧であっても、視神経乳頭に全く問題が起こらないケースもあれば視神経乳頭が変形してしまうケースもあるのです。眼圧の統計学的な正常値は10-20と定められています。この数字は参考にはなりますが、これだけでは緑内障なのかどうかを決定することはできないのです。眼圧が正常値であっても緑内障になるケースを「正常眼圧緑内障」といい、実は緑内障のうち72%を占めています。

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