概要
B型急性肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで肝臓に炎症が生じる病気です。
B型肝炎ウイルスの潜伏期間は平均90日程度で、発症すると倦怠感や疲労感、食欲低下などの症状が現れ、1週間ほど経過すると腹痛、吐き気、嘔吐、黄疸(皮膚や白目が黄色くなること)などの症状が現れます。関節の痛みや発疹などの症状が現れることもあります。これらの症状は数週間から数か月続いたのち自然に回復しますが、まれに慢性化し、肝臓に非常に強い炎症を引き起こす“劇症肝炎”に移行することがあります。劇症肝炎は命に関わることがあるため注意が必要です。
治療は、症状を和らげるための対症療法が中心となり、必要に応じて食欲低下に対する点滴などを行います。劇症肝炎に移行した場合は、抗ウイルス薬などを用いた薬物療法や血液透析などを行い、重症な場合には肝移植を検討します。
原因
B型急性肝炎の原因となるB型肝炎ウイルスは、感染者の血液や体液を介して感染します。たとえば傷口に感染者の血液や体液が付着する、感染者との性行為などの密な接触で感染する可能性があります。そのほかにも感染者の血液や体液が付着した医療機器を使い回すことも感染の原因となるため、入れ墨やピアスの穴開けなどの機器を使い回すことでも感染リスクが高まります。
またB型肝炎ウイルスは、出産時に母から子に感染することもあるため、母親が感染者の場合は出産後すぐに感染予防のための治療が必要となります。
2016~2022年における報告例をみると、性的接触が983例と最多で、続いて針などの刺入が39例、輸血・血液製剤と子どもへの母子感染がそれぞれ1例、そのほか・不明が409例でした。
症状
B型肝炎ウイルスに感染すると、平均90日の潜伏期間を経て症状が現れます。
B型急性肝炎を発症すると、倦怠感や疲労感、食欲低下などの軽度の症状が現れ、1週間ほど経過した後に腹痛、吐き気、嘔吐、黄疸などの症状が現れます。また、尿が濃くなったり、関節の痛みや発疹などの症状が生じたりするケースもあります。
B型急性肝炎は数週間から数か月で自然に回復していくことが多いものの、10~20%は肝臓に軽度の炎症が継続するB型慢性肝炎に移行するといわれています。B型慢性肝炎になると、将来的に肝硬変や肝がんになるリスクが高まるほか、劇症肝炎に移行することがあります。劇症肝炎を発症すると肝臓の機能が著しく悪化するため、意識障害などを引き起こし、命に関わるリスクが高くなるとされています。
検査・診断
B型急性肝炎が疑われるときは、以下の検査を行います。
B型肝炎ウイルス検査
B型急性肝炎の診断には、B型肝炎ウイルスに感染していることを確認する検査が必要です。血液検査を行い、血液中にB型肝炎ウイルスに対する抗体や抗原、B型肝炎ウイルスのDNAがあるかどうかを調べます。
肝機能検査
B型急性肝炎は肝機能悪化を引き起こすことがあるため、重症度を評価するため血液検査で肝機能の状態を調べます。また、B型急性肝炎では黄疸が生じやすいため、黄疸の原因物質であるビリルビンの数値も確認します。
画像検査
肝臓の腫れやほかの病気がないかを調べるために、超音波、CT、MRIなどを用いた検査を行います。
治療
B型急性肝炎は多くの場合、自然に回復します。しかし、劇症化したり慢性化したりするケースもあるため、安静を保ちつつ、そうした変化が生じないか慎重に経過をみます。また、症状の程度が強い場合は症状を和らげるための治療が必要となり、食欲低下による脱水に対して点滴を行うといった治療が行われます。
万が一、経過中に急激な炎症の悪化が起きた際は、抗ウイルス薬やステロイドなどを使用した薬物療法、血液透析などの治療を行い、それらの治療で効果がない場合には肝移植を検討することもあります。
予防
B型肝炎ウイルスへの感染を予防するには、他者の血液や体液に安易に触れない、性行為をするときはコンドームを使用する、衛生状態が不明な医療機器は使用しない、といった対策が必要です。
また、2016年からは0歳児の定期接種として、B型肝炎ワクチンを接種するよう定められています。医療従事者など他者の血液や体液に触れる機会が多い職種ではワクチン接種が推奨されています。感染者の女性が出産する場合、出産時の感染によるB型急性肝炎の発症と持続感染(キャリア化)を防ぐため、子どもには生後12時間以内にB型肝炎ウイルスに対する免疫やワクチンを接種し、その後生後1か月と6か月目でのワクチン追加接種が推奨されています。
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