概要
VDT症候群とは、パソコンなどのディスプレイやキーボードのVDT 機器(Visual Display Terminals)を長時間連続して使用することによって、身体的疲労などの自覚症状がみられることです。
近年はIT化の進展に伴い、就業中に長時間パソコン、タブレット、スマートフォンなどのVDT機器を使用する状況が増加しています。厚生労働省は『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン』を定めて、雇用者が労働者の健康管理に配慮するよう求めています。
原因
眼症状
画面に集中することによる瞬目(瞬き)回数の減少や目線の変化による開瞼(まぶたを開く)幅の増加によって起こるドライアイや眼精疲労が原因になります。また、裸眼で十分に見えていない、メガネやコンタクトの度数が合っていないといった状態も眼精疲労を悪化させる原因となります。
筋骨格系症状
長時間にわたる同一姿勢の保持や手指の酷使が原因です。
精神症状
単調な作業の繰り返しや不適切な光や音によって引き起こされていると思われます。
症状
眼症状、筋骨格系症状、精神症状などが出現することがあります。
眼症状
筋骨格系症状
- 首、肩、腰のこり
- 腕、手の痛みやしびれ
精神症状
頭痛、耳鳴り、イライラ、倦怠感、疲労感など
検査・診断
眼精疲労や目の乾き
VDT症候群の検査では主に視力検査が行われます。調整力の低下は一時的なものと恒常的なものがあり、恒常的なものを老眼といいます。VDT障害による調節力の低下は一時的なものが多く、調節力検査や近方視力測定によって診断できます。そのほかに眼精疲労や目の乾きなどの症状があるかどうかの確認も行われます。
手や腕に痛みや違和感がある場合は、上肢の運動機能の検査や体の一部を触って痛みがでるかどうかを確認する検査などが追加で行われることもあります。
治療
ドライアイが生じている場合には点眼薬による治療が行われます。足りない涙液を補うための人工涙液やヒアルロン酸製剤を1日に5~6回点眼します。涙液の質を改善させる治療として、涙液成分中のムチンを増加させる点眼治療もあります。どちらも根本的な治療ではないので点眼を中断すると症状が再発します。調節力の低下は、ディスプレイまでの距離にピントをあわせた老眼鏡を使用することで対処できます。
予防
VDT障害の予防として、厚生労働省のガイドラインでは連続した作業時間が60分を越えないようにし、作業と作業の間は10~15分の作業休止時間と1~2分の休憩を挟むように推奨しています。作業中は椅子に深く座り背もたれを十分使用することで、正しい姿勢を継続することにより筋骨格症状を軽減できます。
また、ディスプレイを目線よりやや下方に設置すると開瞼幅が狭くなるため、ドライアイ症状が抑制されます。さらに、部屋もしくはデスクの湿度を上げるための加湿器を設置する、エアコンの吹き出し口が顔に向かないようにする、といった環境を改善するための工夫をすることも重要となります。
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