インタビュー

VDT症候群とは-パソコン作業で目に痛みや疲労が現れる

VDT症候群とは-パソコン作業で目に痛みや疲労が現れる
原 直人 先生

国際医療福祉大学 保健医療学部 視機能療法学科 教授

原 直人 先生

スマートフォンの普及に伴い、メディアでは「スマホ老眼」「スマホ内斜視」という言葉が飛び交うようになりました。これらはスマートフォンが影響していると考えられる視覚機能障害を指す言葉であり、現在社会問題となっています。しかし、パソコンをはじめとするデジタル機器がもたらす目への悪影響は、スマートフォンが誕生する以前から存在していたと、国際医療福祉大学病院眼科教授の原直人先生はおっしゃいます。本記事では、私たち一般生活者を取り巻くICT(情報通信技術)環境の変化と、目の疲れや痛みをはじめとする視覚機能への影響についてお伺いしました。

長時間化するコンピュータ業務-VDT(Visual Display Terminals)症候群とは

スマートフォン(多機能携帯電話、スマホ)の登場をきっかけとし、いわゆる「スマホ老眼」が問題視されるなど、デジタルデバイスの視機能への影響に注目が集まるようになりました。

「スマホ老眼」とは、スマートフォンの画面に焦点を長時間合わせ続けることにより、目のピントを調節する機能が衰えてしまう状態のことを指す言葉で、近年認知度が高まっています。

しかし、実は上記のようなデジタルデバイスによる視機能への悪影響は、既に20年ほど前から眼科医などの間で危惧されていて、眼科学や産業衛生学など様々な団体で研究が進められていました。

厚生労働省では1998年からVDT症候群についての調査が行われてきました。(「技術革新と労働に関する実態調査」)

VDT症候群とは、コンピュータ機器を使用する業務に従事する労働者にみられます。同じ姿勢で一画面を凝視する作業を日々続けるため、VDT作業を行う労働者の多くには目の疲れ、頭痛、肩こり、腕のしびれなど、様々な症状が現れるのです。

まずは、3,000人以上の従業員が勤務する企業に対するアンケート「技術革新と労働に関する実態調査」の結果をもとに、VDT作業の実態の変遷をみてみましょう。

コンピュータ機器を使用して作業している労働者を100とすると、1998年には1日6時間以上VDT作業をしている人の割合は約12%でした。ところが10年後の2008年に行われた調査では、1日6時間以上と回答している方が25%にまで増えています。このうち、78%の人が“何らかの症状がある”と訴えており、そのうち91.8%が「目の疲れ・痛みがある」と回答しています。

目の症状があると答えた人の割合は、首や肩のこりを訴える人よりも多く第1位を占めています。特徴としては、29歳以下の方から60歳以上の方まで全ての年齢層に属する人に満遍なくみられます。

この調査結果が出てから既に約8年が経過し、VDT作業を長時間行う人の割合は益々増えています。

急速に変わるICT(情報通信技術)環境-問題視される「デジタルデバイス漬け」の生活

近年になり変化したのは仕事でVDT作業を行う時間だけではありません。技術の革新に伴い“いつでもどこでも”情報にアクセスできる「ユビキタス環境」が日常生活にでも求められるようになり、SNSなどのスマートフォンを用いたコミュニケーションツールや、コントラストの強い電子書籍、より立体的でエンターテインメント性の高い3D立体映像を用いた映画などが生活に浸透するようになりました。現在では、更に奥行き感がある4K、8Kテレビの登場も待たれる時代となっています。加えてLED照明の普及に伴い、スマートフォンをはじめとするあらゆる機器の画面が高輝度のものになりました。

結果として多くの人が今、仕事を離れてもなおデジタルデバイスに目を向け続ける「デジタルデバイス漬け」の生活を送るようになったのです。さらに、画面が小型化したことによる近方視からくる「近視化」も問題となっています。

ICT環境の変化と問題点のまとめ

  1. 長時間のVGT作業就労
  2. 常時接続(ユビキタス環境)
  3. 3D立体映像をはじめとした強い視覚刺激
  4. 高輝度画面
  5. 画面の小型化による近見視